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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

赤子殺し

作者: 白藤結

※不快になるかと思いますので、閲覧は自己責任でお願いします。

※運営から警告が来たらすぐに取り下げます。

9月18日

 レイプされた。そういう小説を読んでいたから、なんとなく気持ちいいとか、そういうものだと思っていたんだけど、違う。そんな生易しいものじゃない。ただの道具みたいな扱いで、ひたすら痛くて、苦しくて、死にたかった。助けを求めようにも口は塞がれてて、何も言えなくて……もう思い出したくもない。中に出されたのが気持ち悪い。ねぇ、助けて。死にたい。殺して。



10月20日

 うそうそうそうそ。いや、やだ、ねぇどうして! こんなの望んでない。神様は私をどうしたいの! ここずっとそういうことなんてしてないから、絶対あのときのだ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ! あんな、わたしをレイプした男の子供なんて欲しくない! 誰か助けて! こんなの誰にも言えない。レイプされたなんて、誰に言えばいいのよ!



10月23日

 だめ。気持ち悪い。匂いがダメで、ご飯のときも全く食欲が湧かなくて、気持ち悪い。父さんと母さんも違和感を覚え始めている。このままじゃバレる。だけど、レイプされたなんて言えない……もう、どうすればいいの? 中絶しようにもお金がかかるし、親の同意書も必要。ねぇ、誰か助けて。



11月20日

 病院に行く? って言われて、もうダメだと悟った。このままじゃ妊娠していることがバレちゃう。レイプされたことも。……家を出なきゃ。両親とは特別親しいっていう感じじゃなかったから、あんまり寂しくはない。ただ、今までバイトもやったことないから、これから生きていけるか分からない。だけど……そうしなきゃ。ただの家出に見せかけれるように、書き置きも残して、お小遣い全部持って、出る。それしかもう選択肢はない。



11月25日

 あれから何日か繁華街をさまよっていた。違法なものでもいいから、なんとか働かせてもらえる場所を探して。だけど見つからなくて、お金も尽きかけようとしていたとき、優しいおばあさんがわたしのことを拾ってくれた。家に帰れない、と言えば、じゃあうちに来ればいいって言ってくれて、理由も聞かず、拾ってくれた。良かった。これで生きていける。わたしは死なずに済む。



1月1日

 年が明けた。もう3ヶ月以上学校に行ってないけど、どうなっているんだろう。退学になってるかな。みんな、どう思っているんだろう。気になるけど、今のわたしを見られたくない。知られたくない。

 あれからおばあさんと一緒に暮らしている。おばあさんは何も言わなくて、明らかに妊娠をしていても、そのことには触れない。それがとても心地いい。おばあさんになら、レイプされて、それで妊娠したことを打ち明けてもいいかもしれない。つわりも治まったし、いい感じ。



1月13日

 お腹が大きく膨らみ始めた。それと同時に、わたしは子供を産むんだっていう実感が出てくる。だけど……本当にこのまま産むの? 産んで、どうするの? 分からない。ただレイプされたことを知られたくなくて家を出てきたから、何も考えてなかった。どうしよう……施設に預けるしかないのかな。そもそも、わたしが家に戻ったとして、どうなるんだろ……。家出している間のことを聞かれて、警察にでも調べられたらレイプされたこともバレちゃう。どうすればいいの……?



2月15日

 少し前から、赤ちゃんがお腹を蹴ったりしてくるようになった。生きてる。わたしは子供を育んでいる。そう思って、なんだか泣きたくなってきた。たとえよく知らないレイプ魔の子供でも、同時にわたしの子供だ。たぶん、愛せる。育てられる。というより、わたしが育てたい。

 だから、決めた。家には戻らない。ここでおばあさんの手を借りながら暮らしていく。戸籍がないのは困るだろうけど、きっとおばあさんやこの子と一緒なら、なんとかやっていける。



3月23日

 すごくお腹が大きい。ずっと蹴ったりしていた赤ちゃんも今では落ち着いて、そういうこともなくなった。たぶん、順調。それがとても嬉しい。だけど、まだおばあさんにレイプされたことを話せていない。やっぱり、勇気がなくて……ううん、だけど言わなくちゃ。それが、わたしと赤ちゃんのためだもの。



3月25日

 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。おばあさんを殺した。殺してしまった。だって、レイプされたことを話したら、警察に電話しようとして……そんなのダメ。知られたくない。妊娠したことだって、両親にも友達にも絶対に言えない! だからごめんなさい、おばあさんごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……(以後数ページにわたり、同じ言葉がずっと殴り書きされている)



4月30日

 おばあさんの貯金を勝手に使って、なんとか生活している。良かった、おばあさんが現金で貯金する人で。おかげでなんとか生きていけれる。

 おばあさんがいなくなって、これからどうするか、よく考えた。わたしは家に帰る。帰って、何事もなかったかのように普通に暮らす。そう決めた。だから、そう、この子は殺さなきゃ……大丈夫、もうおばあさんを殺したんだもの。きっと大丈夫……。



6月10日

 朝、陣痛が始まって、夜遅くにやっと産まれた。ちっちゃくて、しわくちゃで、わーわー泣いていて……だけどわたしはその子の口を押さえて、首を締めた。お腹もいたくて、疲れていたけど、何よりも殺さなきゃって思って、必死に首を絞めた。そうじゃなきゃ、わたしは普通に戻れない。レイプされたことも、出産してしまったこともみんなにバレるなんて、そんなの耐えられない。絶対みんな嘲笑う。それなら死ぬほうがいい。

 しばらくして、赤ちゃんが死んだ。ほんのりと熱があったけど、それもすぐに消えて、苦しげな表情で固まっていた。まだへその緒が繋がっていたのに、わたしが殺した。殺してしまった。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。わたしなんかが産んでしまってごめんなさい。殺してしまってごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……(以後数ページにわたり同じ文字が殴り書きされている)









 七月某日、××市に住む十八歳の少女が殺人と死体遺棄、窃盗の容疑で逮捕された。少女は十七歳の高校二年生のときに家出をしており、つい先日戻ってきたばかりだった。警察の調べによると、少女は昨年九月に強姦をされ、その後妊娠し、家族や友人に知られるのが嫌で家出をしたとのことだ。そして○○市に住む女性、鈴木(すずき)玲子(れいこ)さん(六十五)の元に身を寄せたものの、三月二十五日、警察に通報されそうになったことで殺害した。六月十日、玲子さんの家のトイレで男児を出産し、その場で殺害。体調が回復してから二人分の死体を玲子さん家の庭に埋め、自宅に戻って来たという。少女は容疑を認め、また二件の殺人については「殺すしかなかった」と語っているそうだ。

(7月27日朝刊より一部抜粋)

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[良い点] 最後の新聞記事から推測すると、この事件、 死体発見→捜査容疑者逮捕 という流れではなくて、 『犯人』出頭(もしくは『犯人』の言動から第三者が通報)→『被害者』宅捜査・死体発見 とい…
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