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アウトドア系男子が、自宅警備員になる方法  作者: たいちょー
ep.2 撫子日和になりました
17/123

雨には負けず、風邪には負ける(3)

「できましたよ、先輩」


「お、ありがとう」


 しばらくして。本城さんが鍋敷きを持って、こちらにやってきた。


「俺が鍋持ってこうか?」


「いいんですか?」


「構わないよ。鍋つかみってある?」


「あ、はい。ちょっと待ってくださいね……」


 鍋敷きをテーブルに置いて、彼女は食器棚の中を漁り始めた。

 少しして「あった」と呟くと、彼女から無地のグレー色の鍋つかみを受け取る。相変わらず、どこもかしこもグレーばかりだ。


「んじゃ、持ってくよ」


 鍋つかみを手にはめて、アツアツの鍋を手に取った。足元に気を付けながら、ソファーの前のテーブルへと持っていく。特に事故も起こらずに無事到着して、ホッと一息を吐いた。


「すみません、わざわざ」


「ん、構わないよ。それじゃあ、食べようか」


 そんな彼女から、今度はお椀と割り箸を受け取った。


 しばらく寝ていたこともあって、お腹は既にペコペコだ。これでようやく食にありつける……そう思った矢先に、ふと俺は疑問に思った。


 ――あれ? このままだともしかして、本城さんと二人でソファーに座ることになるのか?


 テーブルの周りには、特にクッションがあるワケでもなく、ソファーが一つ置かれているだけだ。このままだと、彼女と仲良しこよしで座ることになってしまう。


「……あの、本城さん」


「なんですか?」


 なんの疑問を抱く様子もなく、自然に彼女はソファーへと座った。どうやらまだ、その事態に気付いていないらしい。


 ――聞きづらいな……。


「……ううん、やっぱりなんでもない。よいしょっと」


 特に指摘されるわけでもなく、自ら床へと座ってやった。わざわざ隣に座って、彼女に四の五の言われるよりは断然マシだ。


「あら、そっちに座るんですか?」


 と、思っていたのに。それに気付いた様子の彼女が告げる。


「あ、いや。そのほうがいいでしょ?」


「……そうですね。先輩には、床がお似合いです」


 そう言って、彼女が笑う。マスク越しでも。ニヤリとしているのが分かった。


「いや、言いたいことはそういうわけでは……」


「いいじゃないですか、事実なんだし。それより、早く食べましょう?」


「事実って……はぁ。うん……そうだね」


 結局、彼女に言いたい放題にされてしまったが、仕方がない。ここは適当に流しておくのが無難だろう。

 まず彼女が、自分の分のうどんを鍋から取った。続けて俺も、自分の食べる分を取る。数時間放置してしまっていたおかげで、予め入れていたうどんは汁を吸って、だいぶ箸では掴みにくくなってしまっていた。


「はぁー、暑い。正直、ずっとマスクしてるの嫌いなんですよね。一年中マスク付けてる女子の気が知れない」


 そう言って、今日一日ずっと付けっぱなしだったマスクを本城さんが外した。今日初めて、本城さんの口元とご対面する。……特に深い意味もないが、やっぱり本城さんだなぁとしみじみ感じてしまった。






「それじゃあ、いただきます」


「……いただきます」


 彼女につられて、普段は言わない「いただきます」を口にしてから、うどんを啜った。うむ、我ながら良い味をしていると思う。


 果たして、本城さんはこの味を気に入ってくれるだろうか? ドキドキしながら、彼女の言葉を待った。


「……ふぅん」


 もぐもぐしながら、彼女が唸る。尻上がりな声を聞くに、ゲロマズうどんではないらしい。


「どう?」


「……先輩にしては、なかなか美味しいじゃないですか」


「ほ、ホント!?」


「えぇ。少し見直しました」


 そう言って、彼女が二口目を口にする。どうやら、気に入ってくれたようだ。


「よかったぁ。本城さんってば、なんか味にうるさそうだから、心配してたんだよ」


「私に対して、どんなイメージ持ってるんですか。酷い人ですね」


「でも、否定はしないんでしょ?」


「……まぁ」


「ほらやっぱり」


 図星を指されて、本城さんが「むぅ」と唸った。けれど、それ以上は何も言わずに、次の一口を運んでいた。続けて、二口、三口と黙々と食べ続けている。そんなに良い食べっぷりをされると、作った甲斐があったというものだ。


「風邪引いてるのに、よく食べるなぁ。俺の分無くなっちゃわない?」


「いいじゃないですか、元は私が食べるために作ってくれたんだし」


 箸を持った右手の甲で口元を拭きながら、彼女が告げる。


「それはそうだけどさぁ」


「それに、風邪を引いているからこそ、たくさん食べて栄養つけなきゃですよ。そうじゃないと、元気になれませんからね」


「こういうときじゃなくても、君はよく食べてそうだけどね」


「そっ……それは、言わないでください」


「あれ、もしかして図星?」


「……知りません」


 彼女がそっぽを向いた。


「ふぅん」


「……なんですか、その目は」


「いやぁ? 食いしん坊な女の子もまた、良きだなぁと思いまして」


「……気持ち悪い」


 そう言い放つと、再び鍋からうどんを取った。もう少しで、鍋の具も無くなってしまいそうだ。


「素直じゃないなぁ」


「うるさいですね、早く先輩も食べてくださいよ。食いしん坊のせいで、無くなりますよ」


「はいはい」


 段々と、彼女の扱い方も分かってきたような気がする。促されるままに、俺もうどんを啜った。






「……ふぅ。ごちそうさまぁ」


 早いことに、ものの十五分程で、鍋の中身はすっかり汁だけになった。自分が作った料理が完食されるというのは、これ以上なく嬉しいものだ。


「汁、残っちゃったけど、どうする?」


「そうですね……明日の朝、雑炊にでもして食べますよ」


「そっか。じゃあ、台所に鍋持ってっとくよ」


「あっ……すみません」


 立ち上がって、俺は鍋を台所へと持っていった。先程と違って冷めているから、今度は余裕だ。


「いやぁ、すっかり夜中になっちゃったなぁ」


 テーブルの前に戻りながらぼやく。いつの間にか、本城さんの顔は再びマスク顔になっていた。


「誰かさんがソファーに座って、夢の中に行っちゃったからでしょ」


「それはそうだけどさ……」


 仰る通りで、俺が寝過ごしてしまったのが原因である。それ以上は特に言い返す言葉が浮かばなかったので、そのまま床に座り直した。






「あっ、そうだ!」


 ふと、一つの名前が頭の中に蘇った。今度ここに来たときは、ぜひ見たいと思っていたものだ。


「この間さ、撫子の花の話したじゃん? 花、見てみたいなって思ってたんだ。ダメかな?」


「あぁ、それですか。いいですよ、こっちです」


 そう言って彼女は立ち上がると、寝室へと入っていった。彼女に続いて、中に入る。


「こっちのベランダですね」


 カラカラとガラス扉を開いて、ベランダへと出る。どうやらいつの間にか、降っていた雨は止んだようだ。雨のせいで辺りは濡れていたが、降っていなければ問題ない。


「おー、これかぁ」


 発泡スチロールの上に置かれた、十五センチぐらいの植木鉢の前にしゃがみ込んで、じっくり観察してみる。

 内側が綺麗なピンク色で、花びらの先が白色に染まっている。掌にすっぽりと収まってしまうような、小さな花だった。確かにこれは、実際に間近で見ると可愛らしくて、思わず撫でてやりたくなるような花だ。


「この花って確か、中学生の頃から育ててるんだよね?」


「そうですね。ずっと育ててます。……そうなると、もうこの子達も五代目ですね」


「五代目ってことは……毎年種植えしてるの?」


「いえ? 多年草って知ってますか?」


「たねんそう……? 聞いたことはあるかも」


 すると、本城さんも俺の隣にしゃがみ込んだ。右手を伸ばして、優しく花を触っている。


「多年草はですね、一度種を植えれば、同じところから何度も花が咲く品種のことを言うんです。もちろん育て方を間違えちゃうと、すぐ枯れちゃうので注意が必要なんですが。だからこの花も、五年前に日和から貰った種から育った花なんですよ」


「へぇ、そんな種類があるんだ」


「ただまぁ、一つ難点がありましてね。放っておくと、どんどん数が増えていくんですよ。だから、毎年株分けと言って、花が増えすぎないように管理をする必要があります」


「そうなんだ。やっぱりやることは多いんだね」


「そうですね。でもそれも、ガーデニングの醍醐味だったりします」


「……そっか」


 ――あんまり分かんないけど、ガーデニングって相当大変だよな。それを五年間も欠かさずに、本城さんはやってるんだよね。……やっぱり本城さんってホントは、そういう優しいところもあるんだな。


 表には全く出さないが、そういうところが彼女の魅力の一つだ。だからこそ俺は彼女に飽きることなく、寧ろもっと知りたいと思ってしまうのだろう。






「……あのさ、本城さん」


 彼女の名前を呼んだ。


「なんですか?」


「その……。今日さ、ここに来る前に、とある場所に行ってきたんだ」


「なんですかそれ。もったいぶらないで、さっさと本題に入ってくださいよ、面倒くさい」


 こちらをチラッと見るなり、呆れたようにため息だ。そんなことで呆れられても、こちらとしては困る。


「わ、分かったよ。……本城さんってさ。いつもの学食で、前にずっと座ってた席があったでしょ? あそこの席から外を見たとき、あの場所からしか見えない建物があったんだ」


「……演劇館、行ったんですか?」


 彼女が呟く。どうやら、俺の予想は当たっていたらしい。


「うん、行ったよ。けど、もう廃館になったんだってね。近くのラーメン屋のおじさんに聞いたんだ」


「あ、それってもしかして、向かいにあるラーメン屋さんですか?」


「へ。う、うん」


「そこなら、私も何度か昔行ったことがあります」


「え、そうなの?」


 それはまた、驚きの事実だ。


「えぇ。もう中学以来、ずっと行っていませんがね。()()()()()、元気にしてましたか?」


「おじさんは元気そうだったけど……。今日は一人だけだったなぁ」


「……そうですか」


 そう告げると、彼女は一つ、不安そうな表情を浮かべた。なんだかあまり、嬉しくはなさそうだ。


「もしかして、昔は夫婦で働いてたとか?」


「……えぇ。でも、奥さんは当時から病気がちで、ちょくちょく休んでいるって聞いていたんです。だから、もしかしたらって思って……」


「そうだったんだ……」


 その事実を聞いて、なんだかこちらも悲しくなってしまった。いま彼は奥さんの分も含めて、一人でずっと頑張って働いているのかもしれない。


「あ、じゃあさ。今度二人で、行ってみようよ。今日は結局、ラーメンは食べずに話だけで終わっちゃったんだよね。今度友達連れてくるって、おじさんにも言っちゃったし」


「……だからって、なんでわざわざ先輩と、二人きりで行かなきゃならないんですか」


 出たでた、いつもの本城さんの文句だ。俺と一緒にいるのが、そんなにこの子は嫌なのか。


「いいでしょうよ、別に。ラーメン食べに行くぐらい。久しぶりに本城さんの顔を見たら、きっとおじさんも喜ぶよ」


「……まぁ。気が向いたら、付き合います」


「気が向いたら、ね。それでもいいよ」


「何それ、いいんですか?」


 その途端、彼女が聞き返してくる。


 ――いや、自分で言ったくせに、何を言ってるんだこの子は。


「え? うん、別に構わないけど」


「……やっぱり、変な人だ」


 俺から顔を逸らして、ボソッと彼女が呟いた。


 ――いやいや、君もなかなかに大概だぞ?


「もし私の気が向かなかったら、どうするんですか?」


「そんなの、気が向くまで待ち続けるよ。急かすつもりはないし、わざわざ強引に連れて行くつもりもないよ」


「どこまで変な人なんですか、あなたは」


「さぁね。とことん変な人なのかも」


「……あっそ」


 そう呟くと、本城さんは立ち上がった。続けざまに、くしゅん、とらしくない可愛らしいクシャミをする。


「うぅ……。そろそろ寒いので、中に入りましょう。先輩のせいで風邪が酷くなりそうなのに、ここにいたらもっと酷くなりそうです」


「酷い風評被害だな……」


 相変わらず、その減らず口はどうにかならないのか。先程褒めてやったばかりなのに、全部なかったことにするぞ?






 部屋の中へと入ると、真っ先に本城さんはベッドの上へとダイブした。言葉では俺のことを散々言っていたくせに、そんな気楽な様子で大丈夫なのだろうか。なんだか、見てるこっちが心配になる。


「それで? 結局、あの演劇館の話だけど。きっと本城さんも、あそこに入ったことあるんだよね?」


 彼女がベッドを独占してしまっているおかげで、行き場もなく俺はそのまま床へと座った。話を戻して、改めてこちらに背を向ける彼女に問う。


「ありますね。子供の頃は、何度も行ってました」


「やっぱり。あそこは本城さんにとって、思い出の場所なんだね」


「まぁそうですね。……良い意味でも、悪い意味でも」


「え?」


 ボソボソと呟く彼女に、思わず聞き返してしまった。彼女はこちらを向かずに、ずっと背を向けたままだ。


「先輩には、関係のない話ですよ」


「それは、そうかもしれないけど……」


「……聞きたいんですか?」


 彼女が問うた。


「え? いや、無理にとは言わないけど……」


「……はぁ。まったく、世話が焼けますね」


 ――どっちがだ。


「仕方がないので、話してあげますよ。先輩には特別に」


「え。いいの?」


「だって、そこまでして私のことをストーカーしたいんでしょう? そんな先輩にとって、これ以上無いほどの有力な情報だと思いますが」


「いつまで経っても、俺は君の中でストーカーなんだな……」


「当たり前じゃないですか」


「当たり前言うな、当たり前と」


「細かいですね。話しませんよ?」


「分かったって……」


 ベッドの上で彼女が起き上がると、座ったまま体をこちらへと向けた。どうやら、本当に話してくれるらしい。一体どんな話をされるのかと、うずうずして彼女の言葉を待った。






「実はですね――」


「うわっ! ビックリした!」


 彼女が口を開いたとほぼ同時に、ポケットに入っていた俺のスマホが鳴り響いた。どうやら、誰からか電話が入ったらしい。

 仕方なくポケットから取り出して、スマホの画面を覗いてみる。電話を掛けてきた相手は、あの日和ちゃんからだった。


「日和ちゃんからだ」


「え。日和から?」


「うん。……もしもし?」


 スマホを耳に当てて、一言告げた。


「あー! ミノルン先輩の声だぁー!」


 開口一番、相変わらず元気いっぱいの声がスピーカーから聞こえてきた。あまりの声量に、耳がキーンとして痛くなる。


「あ、あぁ……。そりゃあ、俺に電話掛けてるんだからね」


「それもそっかぁ。って、それよりそれよりー! 先輩、綾乃のとこ行きましたー?」


「あぁ、うん。っていうか、まだ本城さんの家にいるよ。スピーカーにしよっか?」


「えぇー! ホントですか!?」


「うん。ちょっと待ってね……」


 耳から離して、スピーカー通話にしようとする。……ふと、本城さんを見てみると、その顔はどこか嫌だと言いたげな表情だった。


「おーい! あーやのー!」


「あぁ、うん……日和」


「わー! ホントに綾乃だー! もしかしてもしかしてぇ、二人って今、ずっと二人きりを楽しんでたのー?」


「んなわけないでしょ!? このストーカー男がいつまで経っても帰らないから、ずっと寝られないの!」


「いや君、さっきは『泊まったらどうですかー』って聞いてきたくせに、なに言ってるの?」


「あくまでもしもの話です! 私は一言も、泊まってくださいなんて言っていません!」


「あははっ! 二人とも、仲良いねー!」


「仲良くない!」


 日和ちゃんの言葉に、本城さんがバッサリと言い切った。


「嘘々ー。だって綾乃ってばぁ、『先輩に酷いこと言っちゃったけど、大丈夫かなぁ』って散々言ってたじゃーん!」


「……え?」


 突然の衝撃的な発言に、思わず声が出てしまった。一方の本城さんは、まるで青ざめたような顔で呆然としている。


「あれぇ、ミノルン先輩、知らなかったのー? 綾乃ってば、こないだミノルン先輩に酷いこと言っちゃったなぁって、凄く落ち込んでたんですよー?」


「……そうだったの?」


「うん! 綾乃って、普段は口が物凄く悪いけど、根はすっごく優しいんですよー? だから先輩もぉ、本気で受け取らないで、許してあげてくださいねー?」


「あ、あぁ……。そうなんだ……。えっと……」


 見える。本城さんの陰に、メラメラと燃える赤い炎が。

 俺は察した。このまま、この場にいるとマズい。きっと、本気で殺されかねないだろう。

 ゆっくりそーっと立ち上がると、ジリジリと寝室のドアを目指した。


「えーっと、ごめん日和ちゃん。どうやら俺はもう、帰らなくちゃいけないみたいなんだ」


「えー? どうしたのーせんぱーい?」


 何も知らない日和ちゃんが、甘ったるい声で告げる。


「り、理由は後で説明する! と、とにかく! 一旦通話切るね! ごめん!」


 強引に言い捨てると、俺は彼女との通話を切った。そのままそれをポケットに仕舞うと、改めて恐る恐る彼女と向き合う。


「あぁ……えっと……。うん、分かるよ、分かる。帰れってことだよね? ……ね?」


 怒りを覚えながら、ずっと静かに俯いている。これはこのままここにいたら、それこそ本当に、今後一切口を利いてもらえなくなるに違いない。


「……分かるなら、早くそうしてください」


 聞こえるか聞こえないかの声で、ポツリと呟いた。


「は、はい……。えっと、その……お大事に、ね? また今度、大学で……」


 返事が返ってこない。ヤバい、これはマジだ。大マジだ。早く帰らなければ。


「そ、それじゃあ帰るね! お、お邪魔しました!」


 一目散に玄関へと駆けると、急いで靴を履いて外へ出た。ひんやりとした外の空気が、滲んだ汗を冷たく包む。


 ――はぁ……。そりゃあダメだよ、日和ちゃんってば……。またどうせ、一週間くらい口利いてくれないんだろうなぁ……。あ、それ以前にまだ、連絡先消されたままだ。……まぁ、いつかは学食に来てくれるだろうし、いっか。


 大きな大きなため息を吐いて、階段を降りる。今から帰るとなると、きっと着くのは十二時前後になるだろう。着いたらお風呂に入りたいところだが、もしかしたら入らずに寝落ちしてしまうかもしれない。


 駐輪場に停めてあった自転車に跨って、ペダルを漕ぎ始める。雨が止んだばかりの六月の夜は、想像以上に俺の体を冷やしてくれた。






 その後――。本城さんが学食へと現れたのは、六月の最終週だった。

 どうやら、日和ちゃんの説得のおかげで、再び顔を出してくれたらしい。まだ俺に対しては不機嫌極まりなかったが、きっとまた徐々に慣れてくれることだろう。連絡先も改めて交換できたことだし、一件落着である。


 しかし結局、事の発端から解決まで、全てが日和ちゃん絡みだと考えると――物事というのは、実に皮肉なものだなぁと思ってしまった、村木先輩であった。

これにて、本章は終わりです。ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


次回と次々回は、ちょっとした息抜き回です。村木先輩と、本城さんの裏の顔が分かるかも?

お楽しみに!


もしよろしければ、ブックマーク・感想・評価もしていただければ幸いです。執筆のモチベーションになります!


【筆者のTwitterはこちら→@sho168ssdd】

詳しいお知らせやご質問などは、Twitterへどうぞ。小説家になろうのマイページにも、Twitterへのリンクを貼ってあります。

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