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アウトドア系男子が、自宅警備員になる方法  作者: たいちょー
ep.15 君が紡いでくれた道
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私の行きたい場所

 その後。三十分に及ぶ演劇サークルの演劇が終わり、私は茜ちゃんと七泉の三人で体育館を出た。

 再び広場へと向かい、偶々空いていたベンチにみんなで座る。そこでしばらく私達は、演劇の感想を言い合っては談笑をしていた。


 それから大体、十五分後。今度こそ言葉の通り、早くも村木先輩からの連絡がきたことで、私はまた二人とは別行動をすることとなった。そのまま、彼との待ち合わせ場所である、演劇サークルの部室がある棟の入り口へと向かう。

 なんだか不思議と、胸の奥がムズムズするような……そんな感情を抱きながら、私は彼の到着を待っていた。


「いたいた、本城さん!」


 棟の自動ドアが開いて、中から村木先輩が出てくる。先程までのおじさん姿とは違い、普段着での登場だった。


「あ、村木先輩。お疲れ様です。片付けのほうは、大丈夫なんですか?」


「ありがとう。まぁ、片付けはまだ、終わってはないんだけど……」


 ふと、何かを言いづらそうに、村木先輩が言葉を詰まらせている。どうしたのだろうか。


「黒澤がさ。『適当に言っておくから、時間もないしあの子と遊んでこいよ』って言ってくれたんだよ。だからあいつに任せて、出てきちゃったってわけ」


「あぁ、なるほど……」


 それなら彼が、ここにいるのも納得だ。……とはいえ、そのような言い回しをされてしまうのも、こちらとしてはなんだか複雑である。


「で。……その、どうだった、かな? 俺の演技」


 少しだけ恥ずかしそうに、視線を逸らしながら村木先輩が問うた。


「良かったですよ。普段のへっぽこな村木先輩からは、想像もできないような演技でした」


「へっぽこって……まぁ褒められてるんだろうけど」


 渋い顔をしながら、村木先輩が告げた。


「……村木先輩って、演劇を始めたのは大学からなんですよね?」


「うん? あぁ、そうだけど」


「そんな風には、感じられませんでした。経験の浅い人がするような演技には、全然見えなかったです」


「そんなに?」


「えぇ、そんなにです」


「そっか……。本城さんがそう言ってくれると、なんか嬉しいな。ありがとう」


 そう言って、村木先輩は歯を見せて笑ってみせた。


「いえ……なら、よかったです」


 ――なんかいつになく笑ってる……。よっぽど褒められたのが嬉しかったのかな?


 そんな彼の笑顔を見て私は、思わず顔を逸らしてしまった。なんて酷い奴なのだろうと、自分を恨む。






「……さて。それじゃあ、無事に本番も終わったわけだし、どこか行ってみようか。時間もあと一時間ぐらいしか残ってないし」


 左腕の腕時計を確認しながら、村木先輩が告げる。

 確か文化祭の終了時刻は、四時までだったはずだ。場所によっては早めに切り上げてしまうだろうし、急いだほうがいいだろう。


「ですね。なら早めに動きましょうか」


「とはいっても……問題はどこに行くかなんだよね。俺、演劇のほうに関わってばかりだったから、何があるのか全然知らないんだよ。本城さん、どこか行きたいところとかあったりする?」


 後頭部に手を添えながら、彼が周りを見渡してみせる。


 ――そうだったんだ。……だったらちょっと、偶にはお願いしてみちゃおうかな?


「あっ、あの……。それじゃあ一ヶ所だけ、その、行ってみたい場所が……あるんです、けど……」


 とはいえ、こんなお願いを彼にするなんて、やはり恥ずかしい。思わず顔を伏せてしまいながら、彼へと告げた。


「うん? いいよ、どこにあるの?」


「それが……」


 トートバッグからパンフレットを取り出すと、私が行ってみたい場所を地図で指差した。



 ◇ ◇ ◇



「えっ、凄い! そこにそのブロック置くんだ!?」


 恐らく部長か副部長であろう彼が、私のプレイを見ながら驚いている。そうもまじまじと見られると、やはりなかなか集中できない。


「待って……待って……あと一人、あと一人……。わっ、やった! 一位!!」


「うおぉぉぉっ! すげぇ、文化祭ラストになって一位取ったの、君が初めてだよ!」


 プレイ画面に一位と表示された瞬間、私と彼が思わず歓喜の声を上げてしまう。

 私自身、まさかこんな場所で久しぶりに一位を取れるとは思ってもいなかったので、柄にもなく立ち上がって喜んでしまった。


 私達がやって来たのは、この間の九月にできたばかりだという新しい同好会「ゲーム大好きっ子クラブ」が主催する場所だった。

 そのイベント内容はシンプルで、パズル対戦ゲーム『テト○ス99』を一本勝負でプレイし、十位以内を取った人には、限定オリジナルグッズをプレゼントされるというものだった。その中でも、見事一位になった人には、特別なアイテムが頂けるとか。

 これはゲーマーとして参加せざるを得ないと思い、恥ずかしながらも私は村木先輩にお願いして、ここへとやってきた次第だ。


「見てください、村木先輩! 一位! 一位取りましたよ!」


 そんな彼の一歩後ろで、私のプレイを見ていた村木先輩に、ディスプレイを指差しながら告げる。

 しかし、私達の熱量に対して村木先輩は、落ち着いた様子でこちらジッとを眺めていた。


「ほぉ……。なんか凄すぎてよく分かんないけど……本城さん、すげぇな……」


「凄いもなにも、このゲームで一位なんて、相当な猛者じゃなきゃ取れませんからね! 彼女、相当凄いプレイヤーですよ!?」


 そんな半信半疑な反応をする村木先輩に、彼は声を荒げてみせる。


「そうなんですか……。へぇ、本城さんにもこういう特技があったんだなぁ」


 彼の言葉に、しみじみと納得する村木先輩。そんな風に持ち上げられても、なんだか恥ずかしいじゃないか。






「……それよかお姉さん。その腕前を見るに、だいぶゲームがお好きなものと見受けられます」


「へっ?」


 ふと突然、彼は改まって私にそんなことを告げてみせた。


「じつはですね。ウチのサークル、この間できたばかりなもので、部員がまだ四人しかいないんですよ。……どうでしょう? よかったらウチのサークル、入ってみませんか? 掛け持ちでもウチは全然構いませんので!」


「えっ、えっ……。えーっと……」


 ――ど、どうしよう。まさかこんな展開になるとは思ってもいなかった……。


 あまりにも急な展開に戸惑ってしまう。いつの間にか、どうしてこんな流れになってしまったのだろうか。……私はただ、村木先輩の前で良いところを見せたかっただけだというのに。


「いいんじゃない? 本城さん、ゲームが大好きだって言ってたじゃない。入ったら仲間が増えるだろうし、良い機会だとは思うけど」


「む、村木先輩!?」


 ――ああもう! なんであなたがそんなこと言っちゃうの!? そんなこと言ったら……。


「そうですよ! ウチはみんなゲームが大好きですし、仲間が増えてくれるのは大歓迎です!」


 ――ほらああああああっ!


 今の一言は、火に油を注ぐようなものだ。せっかくまだ断れそうな雰囲気だったのに、このままでは押し切られてしまいそうだ。


 確かに私はゲームが好きだ。寝る間を惜しんで一日の大半はゲームに費やしてしまうほど、私の人生にはもはや欠かせないものになってしまっている。

 彼らが言う通り、この同好会に入れば、ゲーム仲間は増えるだろう。きっとそれはそれで、楽しい大学生活を送れるようになるかもしれない。……だが。


 ――なんか、凄く言い出しづらくなっちゃってるけど……。でも、言いたいことはちゃんと言わなきゃダメだよね。


 生唾をゴクリと飲み込む。意を決して空気を吸い込むと、私はその場で思いっきり頭を下げた。






「ご、ごめんなさい!」


「えっ……?」


 彼と村木先輩の二人が、同時に素っ頓狂な声を上げた。

 ゆっくりと顔を上げながら、申し訳ないと思いながらも言葉を続ける。


「確かに私、ゲームは大好きだし、常日頃から暇さえあればゲームをするくらい、私にとっては大切なものです。……でもそれと同じぐらい、私にとって大切なものがあるから……」


 チラッと横目で、村木先輩の表情を覗き見る。彼は私の言っている意味があまり分かっていない様子で、眉をグッとひそめていた。


「私はまだ、どこのサークルや同好会にも入ってないですけど……でも、もし入るとするなら、ここよりも先に入りたいと思うサークルがあるので」


「っ……本城さん、それって……」


 ようやく理解出来た様子の村木先輩が、ハッとした様子で告げる。私は彼に向けて軽い笑みを浮かべると、再び彼と向き合い頭を下げた。


「だから……ここにはまだ入れません。ごめんなさい」


「そうですか……。ちょっと残念ですけど、仕方ないですね。でも、もし気が向いたときはまた、遊びに来てください。自分達はこの部室で活動していますので」


「はい、そうさせてもらいますね」


 彼は少しだけ寂しそうな表情を浮かべたが、すぐに諦めがついたのかニッと笑顔を見せた。どうやら、私の気持ちを分かってくれたようでホッとする。






「それじゃあ……ちょっと待っててくださいね。今、一位を取った記念のアイテムをお持ちします!」


「あ、はい……?」


 そういうと彼は、何やらニヤリと不気味な笑みを浮かべながら、一度部屋を出ていってしまった。

 一体何が起こるのだろうとヒヤヒヤしながら待っていると、彼は後ろに数人の男女を引き連れながら戻ってきた。恐らく、この同好会の部員だろう。

 そして、そんな彼が手に持ってきたものはというと――。


「えっ、トロフィー!?」


 それを見た途端、村木先輩が驚愕の声を上げる。

 彼の手元では、クリスタルで作られた板状のトロフィーが、神々しく輝いていたのだ。


「はい! 今回のために一個だけ、僕の自腹で作っていただきました!」


「えぇ……自腹で作ったんですか?」


「そうです。まさかこの二日間で、一位を取る人が現れるとは思ってもいなかったので、僕もビックリしましたけどね」


 ケラケラと肩を震わせて笑いながら、彼が私に歩み寄る。


「お姉さん、あなたのお名前は?」


「え? えっと、本城綾乃、です……」


「なるほど。では、本城綾乃さん。あなたはこの二日間、多くの挑戦者がいた中で唯一、見事に一発一位を取ることができました。その功績を称え、ここに称します。おめでとうございます!」


「あ、あ、ありがとう、ございます……」


 突然始まった授与式に緊張してしまい、震える手で彼からそのトロフィーを貰う。すると周りのみんなから、私に向けて拍手が送られてきた。


 ――うぅ……恥ずかしい……。早くこの部屋出たい……。


 あまりの恥ずかしさに顔を伏せながら、私は早く時間が過ぎ去ることを、心の底から懇願していた。



 ◇ ◇ ◇



「すみません、私一人だけ楽しんじゃって」


 建物を出るなり私は、隣を歩く彼へ謝った。 


「いいよいいよ、本城さんが来たかったんだし。俺は本城さんが楽しそうにしてただけで、満足だよ」


「そうですか……」


 ここに来たところで、きっとこうなってしまうのは目に見えていた。だから本当は、やめたほうがいいのではないかと思ってはいたのだが……。まぁ、彼がそう言ってくれているのだから、今回は良しとしておこう。


「いやぁしかし、本城さんがあんなにゲームが上手だったとはなぁ」


「別に偶々ですよ……。普段はあんまり、一位なんて取れないですし」


「でもそれにしたって、あの人も凄く褒めてたじゃん。相当練習とかしたんじゃない?」


「……まぁ」


「もしかして、大会に出るために特訓してたとか? ゲームにも大会って、あったりするよね?」


「うっ……」


 ――もうっ! なんでこういうときだけ、この人は勘が鋭いの!?


 そういった知識は疎いくせに、どうしてこういうときだけピタリと当ててくるんだ。この人は。


「その……。ソーチューブでゲーム配信をしてる人達が集まった『テト○ス99』の大会に、お呼ばれされたことがあって。そこでその、じつは私……優勝、といいますか。一位を取っちゃったことがあって……」


「えぇ!? 優勝したの? 本城さんが!?」


「も、もう! 恥ずかしいんだから、そんな大声出さないでくださいよ!」


 バカみたいに大声で驚いてみせる村木先輩に、思わず叫んでしまった。咄嗟に彼は縮こまるように、小さく「ご、ごめん……」と言ってみせる。


「しかしまぁ、本城さんが優勝かぁ……。そりゃあ、トロフィーも貰っちゃうよなぁ」


「ですから、何度も言いますけど、今日のは偶々ですからね。ゲーム自体久々にやりましたし、対戦相手にあんまり猛者がいなかっただけですって」


「つったって、一位を取ったのには変わりないだろ? それも、この二日間で一人だけだって言ってたじゃない。それだけでも十分凄いことなんだから、もっと誇っていいと思うよ」


「……そう、なんですかね?」


「そうそう。いくら良い成績残したって、『もっと上に、もっと上に』って常に頑張ってたら疲れちゃうじゃん。偶には自分のことを褒めてあげることも、大事なことだと思うよ」


 そう言って、彼がニッと笑う。その笑顔を見た途端、またも胸がギュッと締め付けられるように痛くなった。


 ――また、この……。


「……ホント、やめてよ……」


「うん? 本城さん、いま何か言った?」


 小声で告げた私に、村木先輩が問う。


「別に……気にしないでください。何でもありませんから」


 咄嗟に恥ずかしくなった私は、首を振りながら突っぱねてしまった。


「そ、そう? ならまぁ、いいんだけど……」


 納得のいかない様子ではあったが、これ以上の追及は無駄だと思ったのか、彼はそれ以上なにも言ってこなかった。






「……そうだ。それから一つ、聞きたいんだけどさ」


 ふと、何かを思い出した様子の彼が、再び私に問うた。


「はい?」


「その、さ。……さっき言ってた『先に入りたいサークル』っていうのは……?」


「っ……」


 そんな彼の一言に、思わず足取りを止めてしまった。立ち止まった私を見て、彼も数歩先で私を見ながら立ち止まる。


「まさかとは思うけど……もしかしてそれって、ウチだったりするの?」


「っ……!」


 ――……やっぱりこの人は、何も分かってない。


 思わずムッとした私は、彼の元へと歩み寄った。そのまま彼と面と向き合う形となる。


「……わざわざ言わせないでよ。もう少し察してください、バカ」


「えっ? ちょ……」


 私は彼の胸板に向かって、人差し指を突き差してやった。再び数歩だけ歩いて、彼に背中を向ける。


「……私はただ、ずっと自分に自信がなかっただけで、演劇が嫌いになったわけじゃありませんから。それに……先輩のあんな演技を見せられちゃったら、負けたくないじゃないですか……」


「っ、それって、つまり……」


 彼が何かを言おうとしたが、それを遮って私は言葉を続ける。


「でも、その、まだやっぱり、サークルに入るには時間がかかりそうなので……。もう少しだけ、待っていてください。ホントに入るかどうかは、まだ約束はできませんけど……もう一度チャレンジしたいとは、今日改めて思いましたから」


「本城さん……」


 私の後ろで、女々しい声を彼が上げる。そんな風に喜ばれると、なんだかこちらも恥ずかしくなるじゃないか。


「も、もう! なんでそんな気持ち悪い感じ出すんですか!? 先輩なんだから、もっと男らしくしてくださいよ、みっともない!」


 そう言って後ろを振り返った途端――私は思わずハッとした。


「だって……本城さんがそう言ってくれて、ホントに嬉しかったからさ」


 そう言いながら、彼は目元をゴシゴシと擦っている。――泣いていたのだ。彼は目に涙を浮かべながら、私のことを見ていた。


「……なんで、泣くんですか。私なんかに」


「なんでって……。そりゃあ今まで、本城さんのことを必死で勧誘してたから。それがようやく一歩進んだんだと思ったら、嬉しくて……。ごめんね、先輩のくせに情けなくて」


「いや……でも……」


 ――嘘だ。この人はそんなにも、私に本気だったっていうの? そこまでして私のことを、サークルに勧誘したいと思ってたの? ……私なんかのために?


 あり得ない。そう思いたいが、目の前の彼がそれを全力で否定する。

 確かに村木先輩は優しい人だ。誰よりも友達想いであり、家族想いでもある、ある意味そんな才能の持ち主だ。

 だがそうはいったって、ここまで誰かに本気になれる人はそうそういない。私はゲームでも、アニメでも、ドラマや映画や小説や漫画でも、現実(リアル)でも、こんな人間は見たことがない。

 本当に心の底から、私なんかのために喜んでいるのだとしたら……彼は根っからの、史上最高なバカ野郎だ。


 ――まったく……この人ったら……。


「ふっ……ふふっ……あははっ」


「本城さん……?」


 なんだか、そんな彼を見ていたら、今までの全てがバカバカしく思えてきた。思わず笑いがこみ上げてきて、我慢できずに声に出してしまう。


「あはっ……。あーもう……ホント、あなたって人は大バカですね」


「えっ……」


 そんな驚いている彼の元へ再び近づく。そのまま私は、今度は彼の鼻に向かって人差し指を突き出した。


「いいですか。あなたが本気でそう思うのなら、絶対に私のことを演劇サークルへ勧誘してください。もちろん私も抵抗しますが、村木先輩はそれに負けないぐらいの本気を、きっと見せてくれますよね?」


「え、え……?」


「私、待ってます。そして期待してますから。――絶対にあなたが私のことを、演劇サークルへ入りたいと思わせてくれるとね」


 そう言って私は、彼へ向かって笑ってみせた。恐らく彼と一緒にいた中で、一番素の私らしい笑い方をしているかもしれない。

 これはきっと、“以前の私”でもなければ、何かに取り繕ったわけでもない私。――もしかするとこれが、“本当の私”を見つけるためのヒントなのかもしれない。


「……ははっ、そういうことか。分かった! ならその挑戦、受けて立つよ」


 彼の鼻を突き差している私の腕を掴みながら、彼が意気揚々に告げてみせる。どうやら彼も、ようやくその気になってくれたらしい。それこそがまさに、村木実という人間らしい反応だ。


「待ってろよ。絶対に本城さんのことを、演劇サークルに入れてやるからな」


「えぇ、ぜひぜひそうしてください。期待していますよ」


「あぁ!」


 彼は今日一番の声で返事をすると、クシャっと全力で笑ってみせた。そんな笑顔にまた、私の胸はギュッと高鳴る。

 この笑顔に私は、一体何度救われればいいのだろうか。本当に、罪深い笑顔だと思う。





 ――まぁホントは、ようやくさっきの先輩の一言で決心できたんだけどね。ちょっとズルい女かもしれないけど……もう少しだけ、先輩とはこうしていたいから。……いいよね、お母さん?


 私達のことを、天国のお母さんは一体どんな顔で見ているのだろう。夕暮れ時も近づき、徐々に暗くなってきた空を見上げながら、私はそんなことを空へ問いかけていた。

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