「おかえり」と迎えてもらえるよろこび
夜中にこそっと投稿です。
嗣原社長のイメージは、某“釣りバカ”の社長さんのイメージでつくっています。
「何、ニヤニヤしてるの?」
目の前にひげ面のじいさんが聞いてくる。
無駄に威厳のある髭をしごきながら、ニヤニヤしている。
普段、他の社員の前では見せられない嫌らしい顔だなと思う。
お前がニヤニヤしてるだろ!っていいたいけど、相手は社長だし。
「ガモーチャンも隅におけないねえ、若いカノジョつかまえちゃって☆❤️」
「社長!!なんで知ってるんですか!?」
「水くさいなあ、ガモーチャンのことはなんでもお見通しさ☆」
「いや、そんな冗談とかいらないですし、嬉しくないですよ、全くもって」
オレが冷めた目で見つめると社長は不貞腐れたようにくちびるを尖らせる。いや、じいさんのそんな仕草いらねえし。かわいくねえし。
「で、なんで知ってるんですか?」
「とある情報筋から…ね?やっぱそうなのかあー!」
「気になりますけど、ま、いいや」
どうせうちの部か北木あたりの誰かが言いふらしてるのを嗅ぎ付けたんだろよ
「で、で、なれそめとかー聞かせてよー!?」
なんだか女子高生ばりに人の恋愛に瞳を輝かせながら迫ってくる。鬱陶しいが、社長「聞くまで離れない!」「言いふらすよ!」と脅してくるし。
…
「…そうかあ!ラブラブじゃないか!ガモーチャン!!!青春だねえ。。いいなあ、いいなあ」
いつの間にかコーヒーの入ったマグカップ片手に、オレのデスクの正面に腰掛けすっかり寛いでいる。
あ、由樹が夕飯つくってくれてるんだった。
「じゃ、オレ帰ります!」
「ちょっとまってよー!ねー!飲みに行こうよー!オネーチャンのいる店にさあ」
「間に合ってますんで!彼女が夕飯作って待っててくれてますんで!」
いいなあこの響き。思わず顔が綻ぶのだ。
「ガモーチャンさ、今自分で言った言葉を自分で反芻してニヤニヤしてるぞ。端から見ると気持ち悪いよ」
アンタに言われたくねえよ!
「余計なお世話です!帰ります!お疲れさまでした!」
「あ、ガモーチャン!」
「なんですか?」
まだ引っ張るんかい。
「由樹ちゃ…じゃなかった二海くんの家族にはあったのかい?」
なぜか真面目な顔をしてる。
「…まだです。…彼女のお父さんは彼女が幼い頃亡くなったと聞いています…お母さんと妹さんたちには会わなきゃと思ってはいます」
「そうか…」
なぜか寂しそうに呟く。
忘れていたわけではないが、真面目な交際をしているオレ達だが、こんなオッサンを彼女の家族は受け入れてもらえるのだろうか。という不安は大いにあるのだ。お父さんがいないのがせめてもの救いか。…いたらほぼ間違いなくぶっとばされるぜ。
考えれば考えるほどドキドキしてきた。
社長のことなんて眼中に入らなくなり、オレは一人フラフラと家路を急ぐ。
…
「お帰りなさい!和弘さん」
マンションのドアを開けると美味しそうなクリームシチュー匂いとともに彼女の明るい声が出迎えてくれた。
「ただいま」
彼女が玄関まで出てきて嬉そうにオレの胸に抱きついてくる。
壁掛け時計の短針は9に間もなくさしかかろうとしている。
「ありがとう。お待たせ」
由樹はオレの胸に顔を埋めながら「はい。」と優しく頷く。
幸せだなあ。とまたしみじみと感じてくるのだ。言っておくが(←誰に)これはノロケだ。誰に憚ろうか、これはノロケなのだ!
…
「こりゃウマイ!!」
オレはシチューを頬張りながら言う。
えっへん!と胸を張る由樹も可愛い。
クリームシチュー、海藻とツナのサラダ、きんぴらごぼう…
二人の傍らにはダイコクビールの500ml缶が2つ。
ビールは会社のちかくの雑貨屋で彼女が見つけて来てくれた、備前焼のビアマグに注ぐ。なんとも泡立ちが良く、ビールが最高に美味しく飲めるのだ。
ささやかな幸せを感じながら、オレたちは今日あったこと、楽
しかったことなどを語り合う。由樹はオレの話を楽しそうに聞き、オレも彼女の話を聞くのが楽しい。
缶ビールが一本空いた頃
「そうだ、あのさ…」
オレは、社長に言われてからずっと気になっていたことを彼女に伝えた。
「あのさ、お母さんやご家族に挨拶にいかせてもらいたいんだ」
…カランカラン…!彼女はスプーンを落とす。
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