これからもずっと、という意味
「和弘さん?」
「ん?」
「好きです。」
「ど、どうしたの、きゅ、急に」
なななねななんだよ!急に!
そんな瞳で見つめられるとドキッとするよ!
「言いたくなりました」
「そ、そうか。」
そうか、じゃねーよ!もっと気の効いた言葉は出てこねーのかよ!
「…和弘さんは私のことは好きですか?」
ドキドキドキ…心臓がうねりをあげている。
彼女の潤んだ瞳がすぐそばにある。
この季節夜風は冷たいはずだけど、そんなもの、感じない。
「…好きだ…」
「オレにとって、二海さんのことはかけがえのない人だと思ってる」
もう先伸ばしにはできないし、年齢差を理由に断ることもできない。彼女はオレにとってかけがえのない人だ。
彼女は、苦しいとき、辛いとき、ただ見守ってくれるだけではなくて、ずっと側にいて助けてくれていた。
「ずっと側にいてほしい」
…
…
…あれ?
…
おーい、
…
顔を真っ赤にして放心状態?になってる?
…
「おい!」
「は、すみません!すみません!」
「大丈夫か?」
「あまりの予想を右斜め遥かに上を行く展開だったもので!すみませんすみませんすみません!」
意味わからない表現でまくしたてる。
「そっちから聞いといて、そりゃないよ二海さん!」
「そんな!もう一度お願いいたします!」
「むりむり!」
17年間日照り続きの大干魃オトコのオレの勇気ポイントは残ってねーよ!
そんなー。お願いします!と、手をあわせる彼女が限りなく愛しく思える、そんなオレはおかしいのだろうか。
「ま、いいや。寒くなってきたし、中に入ろうよ」
「はい。」
「しかし、二海さん。」
「はい?」
「こんなオッサンでいいの?」
“よくない”と言われても今さら困るのだけど。
「オッサンではありません!和弘さんがいいんです!」
「オレは17年間も女性とお付き合いしたことがないんだぜ。経験なんて無いに等しいんだ。いわばポンコツの中古ソフトだ。これから付き合っていくのは大変だよ?」
「え?付き合っていただけるのですか!?」
ずこっ!お銚子を倒しそうになったじゃねーか。突っ込むトコそこかよ!
「さっき言ったじゃん!ずっと一緒にいてほしい。オレは君と長い人生を歩きたい」
「やもう一度、やっと聞けました。嬉しいです」
うっすらと目尻に溜めた涙を拭って、彼女は微笑む。
みごとに嵌められた。やはり彼女は頭がいい。
それから、オレたちはいろんな話をした。
オレの両親のこと。弟妹のこと。彼女のお母さんのこと、妹たちのこと。亡き父親のこと。
ようやく会話が途切れ、
「あ、そろそろ終電ですかね?帰らなきゃ」
時計の針はもう2時を回っている。
「…とっくに終電は過ぎてるよ…」
電車で帰るつもりだったのかよ!
「え?!そうなんですか?…じゃあタクシーとかは…」
「この時間に来るタクシーなんてこんな田舎街にはないよ…」
「ええー!こんな時間に出歩くことがないので…どうしよう…」
「しかたないよ、泊まっていきな」
「いいんですか!?嬉しい!」
いいもなにも仕方ない。そう仕方ない。そう、不可抗力なんだ。
‥ってあれ?誰に言い聞かせてるんだ?オレ。
「ふ、風呂いれてくるから!」
いかん、いかん、何で急に緊張してるんだよ!
しかし、付き合ってる男と女が同じ部屋で寝るんだ。
そりゃ、いろんなことがあるのは想像に難くない。
そう、そうなんだよ!
…
「おまたせ」
とリビングに戻ると、ソファーで船をこぐ彼女がいるのであった。
「お~い」
…起きない。
仕方ない。オレは彼女を横にして、上に毛布を二枚重ねでかける。
そう、仕方ないんだよ(泣)
いろんな意味で火照った体を冷まそうとベランダに出ると、煌めく星空に一筋の小さな流れ星が見えた気がした。
ずっと平行線のように思えた二人がようやく重なった流星群?の夜。
これからももうしばらく続きます。
いつもお読みくださりありがとうございます。




