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彼女は思った以上に…

イケる口だったってことです!


ようやく、蒲生和弘視点に戻ります。

‥‥ぐう

‥‥

‥‥

‥ぐがっ


‥‥はっ!(゜ロ゜;


ここは…。


そしてオレは…寝てた…のか?


うぅ、アタマが痛くて起き上がれない。


記憶を辿る…


二海由樹を食事に誘い、彼女ははじめて酒を飲んだ。


彼女は、止めとけといったのに、すいすい酒を飲み‥


ビールから日本酒、焼酎、ウィスキー、カクテル、チューハイに手をだして……泡盛までも、止めとけっていったのに。


…止めとけと言ってたオレも、ついつい一緒にのんでたら…あれ?


オレ潰されてんじゃん!(←自業自得)


店を出るまでは覚えてる。

そこからの記憶が…あらら?!!


10月も後半。ここは屋外だよね?秋の風が冷たい。小さく、遠くで虫の音が聞こえる。

でも体は何かに包まれてる。

枕元も暖かい。

「へっぷひ!」

かわいらしく、変なくしゃみ…お、オレの思考を繋いだ…!


がばっ!


「あ、起こしちゃいましたか?」


彼女は自分のカーディガンをオレにかけて、膝枕をしてくれていた。

ここは、中央公園だ。寝ているのはベンチだ!


ア、イタタタ…アタマが痛い。

「大丈夫ですか?」

心配そうにのぞく顔が相変わらず近い。中年男子をドキドキさせるのは酒かはたまた彼女か…。


いやいや、そんなこと考えとる場合ちゃうやろ!


「もももももも、も、申し訳ないぃ!!」

今までどんな顧客にも上司にも、ましてや恋人にもしたことがないような、すさまじい土下座をかました。

アタマが痛いなんて、言ってられない!


「蒲生さん、頭をあげてください」

いやいや、膝枕やぞ!膝枕!

どんなシチュエーションやねん!

今まで付き合った彼女にもしてもらったことないよ!

オカンぐらいじゃ!


「せっかくの君の誕生日なのに!こんなくだらん中年男の飲みに付き合わせてましてや介抱をさせるなんて親御さんに顔向けできないかくなるうえは腹を切って詫びるしかいやいいやこんな大罪をおかしといて切腹など許されるはずがない斬首だざんし「頭をあげてください!」へ?」


「頭をあげてください。さ、座ってください」

あまりの罪の意識に苛まれ、句読点をつける余裕すらも無くしていたオレを、二海由樹は一言で引き戻した。


「私、嫌じゃなかったですよ」

へ?

「蒲生さんと話をしてて、とても楽しかったし、ほら、ロボット?のアニメの話なんて私はじめて聞いて!」

しまったー!!

そんな話までしてしまったのか!オレのバカバカ!「三十後半で独身でましてやアニオタかよマジキメー」なんて思われてるよゼッタイ!


「蒲生さん、ここのところずっと気をはりつめていらっしゃったようなので、すごく楽しそうで、わたしもとても楽しくてつい飲みすぎてしまいました…。お店を出たあと…公園でお話してたら蒲生さん、うつらうつらされて…蒲生さんの眠った顔があまりにも幸せそうでつい…」

つい…で膝枕するのか!?今どきの若い娘は?!


「…ほんとにごめんな、…ていうか今さっきから…その、蒲生さんて。」


「あ、ごめんなさい。役職だと何か遠い気がして、仕事でもないのに、仕事の話をしちゃいそうで。さっき仰ったじゃないですきか。『今日は仕事じゃないプライベートだ。部長じゃない、ただのおじさんだ!』って」


ほんとに何いってんだ。数時間前のオレ。

飲んだくれてヘラヘラしてる数時間前のオレをぶん殴りたいわ。


ん?数時間?今何時だ?オレは腕時計を見る。短針は1、長針は3を指している。


あー!!


終電逃した…(T-T)


なんてこった…orz


「あ、ごめんなさい!終電過ぎちゃってますね…、すみません私が近くだからつい…」

いやいや、彼女が謝る理由は1ミリもないし。


悪いのはオレだ。知ってるよ。


「君は悪くないよ。今日はタクシーで帰るよ。遅くまで付き合わせてゴメンね」


「もう少し話しませんか?」


「へ?」


「もう少し話ができたら嬉しいなあ…なんて、やっぱダメですよね」

「いやいや、そのダメというか、もう開いてる店も少ないし、夜も遅いし」

「私の家…とかどうでしょう?」


「…へ?」


「ほら、部長もちょっと前までお住まいになられてた訳ですし、よくご存じでしょ?」


「‥いやいや!ダメでしょう!」





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