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二海由樹と蒲生和弘の恋は走りだした!

走りだした!!


…って今さらかよ!!(゜ロ゜;

フォーラムの翌日は毎年会社は休み。そして夜は社をあげての“打ち上げ”が恒例となっている。…そうだ。


安原課長は、というと打ち上げにも姿を見せることはなかった。

「体調不良のためしばらく休職し、その後定年退職される予定」ということだけ発表された。


なにやら嗣原社長のところまで、仕事上の大失敗(先日の事件であると思われる)が耳に入り、逆鱗に触れたとか、風の噂で聞いた。



一次会は100人はゆうに入れる大宴会場。

嗣原総三郎社長、その息子の嗣原勘九郎常務取締役、丹羽取締役総務管理部長、柴田取締役事業部長、そして明智東京営業所長、木下上海営業所長、我らが蒲生経営支援部長が並ぶ。

遠方に居る社員以外殆どの社員が出席し、そうそうたる顔ぶれだ。


「わが社は、社員一同のおかげで今年も無事にフォーラムを終えました。ありがとうございました。

私たちの仕事はこの街をつくる仕事です。不景気だ、デフレだ、と厳しい経営環境を言い訳にはできません。


この街が、そしてこの国がどう変わっていくかは、私たち、そしてあなたたち次第です」

と社長からの訓辞。


そして毎年、最も優秀だった社員が表彰され乾杯の挨拶をする。

今年は近堂さんだった。最年少での表彰記録らしい。


「か、かかかんぱぱい!!」

と、さすがの近堂さんも緊張ぎみのよう。背中も顔も汗びっしょり


乾杯からお酌は禁止が原則になっている。ネクスト総合経営はここでも変わった会社なんだと聞く。

(普通の会社は若手が上司から順にお酌して回るもんなんだって、先輩が言っていた)


なんでも社長がホントにビール好きで、「生ビールで乾杯したいから。瓶ビールでお酌禁止」となったらしい。

蒲生部長も「自分のペースで飲むのがイチバン」とよく言ってる。

目の前に並ぶのは食べたことがないようなご馳走ばかり。

うーん!幸せ~(*´∀`*)という顔をしていたら、近堂さんが

ほっとした顔で「君の幸せそうな顔を見たら、ようやく緊張がほぐれたよ」

と言う。う~ん、役に立ったのか?


経営陣や幹部がほとんど乱れないため、その部下たちもハメをはずすことがなく、粛々とすすむ。そんな宴会も珍しいって先輩が言っていた(私は他を知らないので確かめようがない)。


余興での、木下上海営業所長以下上海帰国組のマイケル・ジャクソンのMoon Walkやスリラーのダンスのキレには驚かされたけど!

でもどんなに楽しい余興でも、部長は幹部なので遥か遠くの席に座っている。この間ずっと一緒だっただけに、少しさみしい。…少し…ていうのは過小表現かも。



-----

二次会は“若手”だけでのカラオケ。

若手から人気の根強い、蒲生部長と北木課長には瀬尾さんがなんとか頼み込んで来てもらったそうだ。


「オーら○ぅドが開かれたぁっ!‥‥

‥‥アタック!アタック!アタッ~ク!!俺はせん~しぃ!!!」


ほどよく酔っぱらって部長もご機嫌の様子。

‥なに歌ってるのか、音程にあってるのかよくわからないけど、一部の30代男性陣らは「マジ、ネ申!」と意味不明なニックネームで呼び、熱狂していた。


あ、部長、ふらふらしながら外に出ていった。

も~大丈夫かな…?


私もドリンクバーを取るフリをして外に出る。すると、トイレから部長が出てきた。


顔のしずくもおおざっぱにペーパーで拭いて、屑籠に入れる。そのしぐさがおじさんっぽい。


ドリンクバーに手をかけようとする部長に私は話しかけた。


「部長、大丈夫ですか?」


部長は半分閉じたような眼で私を見つめる。少し恥ずかしい。


「あ?ああ、二海さんか。おつかれさん。あー、いかん、ちょっと飲みすぎたよ…だからね、もうノンアルコールにするよ。明日も仕事、明後日も仕事~っと」


とすぐ眼をそらして、ドリンクバーに手をかける。


「あのー、部長…」

 

「あ、?なに?あれ?服に染みでもついてる?顔にポテトのケチャップまだ残ってる?」


残ってます。なぜか眉のへんにケチャップが。


「蒲生部長…好きです」


…言ってしまった!



-----

「…へ?」

「…えーと?…罰ゲームかなにか「違います!」?」


罰ゲームなんかじゃありません。部長の顔を見ていたら自然と告白をしてしまっただけです!恥ずかしすぎて顔から火がでそうだ!


「仕事にひたむきに取り組む部長の姿見ててカッコいいな、と思ってました。そして、こんな感じに酔ってる部長も、その…かわいいな…と。」

私、今顔が真っ赤だ。たぶん。熱い。

しかし、意に反しスラスラ言葉を出してしまった。


「うわっちちっ!!」


きょとんとしていた部長の右手はホットコーヒーのボタンを押し続けたままだった。盛大に溢れさせて、手がホットコーヒーまみれだ。


「ああ!大丈夫ですか?部長!」

私はハンカチを上着のポケットから取り出して、私の手を押さえた。

お気に入りの秋桜のハンカチだけど、そんなことはどうだっていい。

「いかんいかん、ハンカチがコーヒーの染みだらけになっちゃうよ「ダメです。じっとしとかないと、火傷になっちゃう」」


私はドリンクバーから氷を取り出して、ハンカチに包んで当ててみた。

私のせいで、部長は大ケガをしてしまった。大変だ。どうしよう。


「二海さん、もう大丈夫だよ。ご、ごめんな。ありがとう」

謝るのは私のほうです!

「病院とかいかなくてもいいんでしょうか?」


「大したことないよ、さ、戻ろうよ。ほらもう、何ともない」

私は手をヒラヒラと振ってみせる。ゼッタイ痛そう。


しかし、部長は私に部屋に入るよう促し、

307号とかかれた扉を開け、自分も中に入る。

「あなただけ~に~アイラブユー♪」

瀬尾さんの熱唱が聞こえるが、どうでもいい。邪魔なだけだ。


浦野係長が「どうしたの?何かあった?」と聞いてくれる。

私はさすがに告白したとは言えなかったが、私が話しかけたせいで部長が火傷してしまった、と伝えた。

「えー、でもほら部長大丈夫そうだよ」

私は部長を見る。

人差し指をてて、「シー」というジェスチャーをする。


告白したことは誰にも言うなってことだろうか。言えるわけないじゃないですか。


「なんか、あの顔面白いね。昨日までの顔とは全然違うよね」

係長が言う。

ほんと。そのギャップにやられてしまう。思わず笑ってしまった。

北木課長と何やらじゃれあっている。大の大人が、だ。

ほほえましい。


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