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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

セイレーンと王子様しりーず

セイレーンと王子様。中章

作者: 瓦屋

それからセイレーンに教えることを増やすために逃げていた勉強も頑張るようになった。教師は驚いていたな。お陰で次の王に、という声も上がっている訳だが。ま、俺…私は第三王子だから継承権を破棄できるわけだ。継ぐ気などさらさらない。だから破棄する予定だ。っと、ついたな。

「ルナ、来たぞ。」

水面を叩く。トントントトン…トントントトン…と。ルナというのは、おれ…私が勝手に呼んでいるだけだ。面と向かって言ったことはないが。名前を教えてくれないのだ。髪の色が、月の光を編んだようだからだ。にしても、この合図でよくわかるな。聞いてみるか。

パシャン

来たみたいだ。

「んんっ。」

ザパッ。と海の中から出てくる。相変わらず、綺麗だ。ルナは嫌っているみたいだが。

「おはよう!今日はどんなお話をしてくれるの?」

キラキラとした純粋な目に思わず目を細めてしまう。こんな目は城では見られない。だが、

「…。だから、せめて俺と合うときは服にしてくれと何度言えば良いんだ?」

そう、問題はそれだ。リボンはお気に入りらしく、ずっと首に巻いている。だが、下は尾だから良いが上半身がいけない。胸に昆布を巻いただけだ。まともに見られない。その、上から見ているから見えるのだ。

「あ、そうだった。」

「はぁ。そっちにいくからまってろよ。」

まあ、近づけるから良いんだが。

「はーい。」

いつもは港の端っこで話しているが、こんな日は入江の砂浜のところでしゃべる。

「そうだ、聞きたいんだが。」

「ん?なあに?」

「よくこの合図でわかるよな。なんでだ?」

「ああ、それ?魔力をおってるの。あと、そのリズムで魔力が切れたり、漂ってきたりするからわかるんだ。」

凄いな。そんな微弱な魔力を追えるなんて。それを当たり前のようにしているなんて。

「そんな事より、はやく!」

「あ、ああ。そうだな――――」

そうして、隣の国の事や、この国のこと、お伽噺などをおしえていった。

「いいな、私もニンゲンになりたかった。」

「そうか?良いことだけじゃないぞ。醜いところもある。」

「それでも、だよ。私がこのいろでもニンゲンは虐めないでしょ。」

そう言って髪を指に絡ませはじめた。そして、はっとしたような顔をした。

「あ!えっと、あの…」

「その色がどうかしたのか?とても綺麗で良いと思うが。」

そう言うと、なにかを決心したような顔になった。とても、哀しそうな顔に。

「んーん。この色は、この髪の色と目の色はいけない色。銀の髪に緑の目、藍色の尾は」

そこで言葉を切りこちらをチラリとみて、顔を伏せてこういった

「――――災いをもたらす者の印。ごめんね。ずっと黙ってて。イヤ、だよね。災いをもたらすだなんて、ごめん。いままで言わなくて。」

泣きそうな声でそういった。そうか、だからか。今まで色のことを聞いてきたり、してきたのは。だが、その程度だと思われていたのか?セイレーンで忌み嫌われている色だからなんだというんだ?

「なぜ、ごめんね。というんだ?」

「え、だって。黙ってたんだよ?」

「だから、なんだ?セイレーンで忌み嫌われているからなんだ?俺はそんな事どうでも良い。災いをもたらす?はっ。そんなわけないだろう。こんなに、綺麗で、無欲で、いや、無欲ではないか。いろんな事を知りたがって、どんな話もたのしそうに聞く君が。もしかしたらその色のセイレーンがたまたまそんなやつだったのかもしれない。だが、君ではない。なら、色がたまたま同じだっただけだ。それで災いがもし仮に起こったとしても君のせいではない。」

そう言ったら何故か泣き出した。

「え、は、え?ど、どどどどうしたんだい!?な、なにかだめだった?こ、怖かった?」

ルナはしゃくりあげながら目を擦っている。ああ、そんな擦ってはいけない!にしても、どうしたんだ。いきなり泣き出して。なにか、いけなかったか!?

「ほ、ほら、そんな擦ったら駄目だろう?」

これしか言えず、何がダメだったかわからない自分を殴りたい!兄様たちなら分かっただろうに!

「ち、ちがうの、嬉しいの…!そんなこと、ヒック、はじめて、ヒック、いわれたからぁ!」

そう言って彼女は俺に倒れかかって泣き出した。それを、その震える背中を抱くことしかできなかった。

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