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腹へり、ペコペコ

コツコツ、コッコ。


静かな道を靴音を鳴らしながら歩いていると、なんだか放課後の校内を連想させる。


でも学校とは違い、なんだか寂しさを感じるのはやっぱり元気な先輩が居ないからなんだろう。


「着いたぞ」


ラルドさんの声で焦げ茶色の重そうな扉の前を立ち止まると、足音すら泣き止んで辺りは静寂に包まれる。


ギギィイーン。


リコさんとカノンさんが左右の取っ手を持ち、ゆっくりと扉を開ける。噛み付きが悪いのか、川魚のギギのような鳴き声が廊下に響き渡った。


「八重、お先にどうぞ」


「はっはい!失礼します!」


私は彼の好意に甘えて部屋に足を踏み入れる。

すると、沢山の豪華そうな宝石で作られている装飾品が出迎えてきた。


「えっ?」


テレビでしか見たことない部屋があるんだけど!


めっちゃテーブルめっちゃ大きい!

奥になんか暖炉もある!


なんか壁もさっきの廊下にあった以上に豪華なステンドグラス!


昨日宿とは全然違う!

安心感というよりなんか緊張する!


「うあ……」


部屋の豪華さに恐縮して硬直した体。これをラルドさんは力強く押しだし、私の座る場所まで運びこんだ。


「はい、席座る」


そして固まった体に体重を乗せ、椅子に座った状態へ変化させた。右隣には不機嫌そうに肘をついているユキさんが、コイツら何やってるんだろうとばかりの不審な目で見てきた。


「まぁ八重がそうなるだろうと思って、料理は先に作らせて貰ってあるから安心して食べろよ」


ラルドさんはこう言うと、左隣の椅子に座る。さらに、扉の前に居る2人にアイコンタクトをすると、メイドさんは一礼し、部屋から去っていく。


「もしも先に来てなかったらどうなるんですか?」


「メイド達に囲まれながらのフルコースな食事がでてくるぞ」


よっよかったぁ。

そんな状況だったら緊張どころじゃない、もう心臓発作起こして病院だ。


「俺も苦手だしな。テーブルマナーとかめんどくさいし、人目が気になるし」


「ああ……案外普通の人なんですね」


国の王だからなんかもっと威厳があって堅苦しい人かなと思ってしまっていたのかもしれない。


「お腹すいているだろうし食べな」


私はそう言われてテーブルの上に置かれた料理を見る。


銀の平皿にメインのエッグベネディクト、端にはポテトとソーセージが添えられていて、緊張が解れて食欲が湧いてきた。


「……いただきます」


フォークとナイフで真っ二つにすると、半熟玉子とチーズが蕩けてパンを浸す。そして、1口大にして口の中にほうばった。


「んまぁ」


シャキシャキのレタスとトマトに、ふわふわのマフィン。その上にトロトロしたタマゴの黄身と、酸味の効いたオランデーソースが野菜の甘みを引き立てている。


何これ美味しい。

フォークが震える。


「美味しいならなにより」


ラルドさんは腰に手を置き、ふふんと自慢げに鼻を鳴らした。


「で、ウル……蕾の件について話を聞きたいんじゃなかったのですか?」


……蕾って……夜空蕾のことだよね。


ウガァアア。


確か彼女は人間とは言えない声をだし……体が膨らんでいくのと同時に、皮膚がボコボコとお湯が沸騰したように大きくなって!


「ゔっ」


私は変貌していく様子を思い出し、手の震えの余りフォークを床に落とす。地面に衝突した反動でシャリンという心の悲鳴をあげると、力尽きたのか横に倒れた。


「やっやえ?大丈夫か?」


「あっああ……はい!大丈夫です!ふぉっフォーク落としてしまってすみません!」


ラルドさんの声掛けで我に返ると、慌てて震えた手つきで亡骸を拾う。


「大丈夫ならなにより。はい、新しいフォーク」


「ありがとうございます!」


その亡骸を新しいフォークと交換して貰ったけど、彼女の情景を思い浮かんで、さっきまであった食力がもうないかも。


私は昨日の件を忘れよう考え、置かれているコーヒーを砂糖や牛乳を苦さを消してから両手でカップを持つ。


「ところでユキ、ウルはいつから、何故あんな場所に居たんだ?

我々は一般竜人のシロノクニの住宅街への侵入を認めてないし、 カフェ経営をしていただなんて非常事態だ。

よっぽどの理由がないと彼女がこんなことするはずがないだろ?」


さっきまで少年のような明るさがあったラルドさんが、また急に肉食獣の鋭い目付きで喉を唸らせているような声のトーンに変わった。


色々話を聞いて分かってきたけど、多分ここはシロノクニという国名。獣人と人間以外の種族以外には厳しいところなんだろう。


「1週間前から僕のカフェに定住してました……きた理由は僕も知りません。

蕾は後ろ冷たいことがあれば本心を隠すような癖がありますからね。

もしかしたら主要人物として、重要な役割を果たすためだったのかも知れませんし、詮索するのは良くないと思いました」


「なるほどな……主人公が目の前に登場した途端、魔力による自我の暴走か。

もしかしてストーリーが始まるきっかけに必要なキャラが蕾だったのかもしれない」


魔力って暴走するとあんな風になってしまうんだ。


"自分があの2人に話しかけたから、あの子が変化してしまったのかもしれない"


昨日の件の暴走原因が自分のせいだったらどうしよう。


まずは魔法について知らなきゃ。


「あのっラルドさん。この世界の魔法って何なんでしょうか?」


「お前、まさか魔法について説明してなかったのか!」


狼の目付きだった彼、ユキさんに対して普通の男子高校生みたいな幼げのある驚きの表情をする。それを向けられた本人は、冷や汗を掻きながら耳をたらんと垂らす。


「八重さんがヤケに敵対してくるわ……魔法がある世界に連れてかれたこととか信じてませんでしたし……今朝は僕が使った転移魔法の後遺症でネガティブになってたり……落ち着くタイミングが……ね?」


「いきなり刺殺してきた人に対して警戒しないほうが無理難題ですよ!今朝の情緒不安定になった原因それか!」


私は心にとどめておくことができなかった、ユキさんへの怒りをぶつける。すると、また兎獣人はシュンとして、背を丸めはじめ白いアルマジロ獣人になっていた。


「じゃあ、ユキの代わりに説明するよ。八重も昨日のウルの件についても気になってそうだしね」


「はい!ありがとうございます」


私はラルドさんにお礼を言って、少し心を落ち着かせるためにカフェオレを眺めた。


混ざりきっていない白いミルクをみると、何だか先輩のことを思い出す。


もしも別世界に送られてきたのが先輩だったら、

例えば〇ーラ!とかベホ〇ミとか色々呪文を唱えてみたり、


"「ふっふっふーなら、その人類以上のチカラを持っている奴等を倒せばみにゃぁーあ!」"


とか言ってこの状況を楽しんで魔法を難なく駆使しそう。


それとこの世界にきてから感じる皆さんとの距離感や疎外感に、馴れ馴れしい先輩は気づかないどころかいつの間にか葬り去れる気がする。


更に先導されてる私とは違って、旅の友とか言ってリーダーになって先導するだろう。


「あれ?良く考えると先輩の方が主人公向きな上にカッコイイ!先輩だけのヒロインになりたい!」


私の何かが解放されて、こう叫んだ。


「あっえ……と」


……って違う、違う違う!

決して先輩のことが好きな訳ではなく!


そう!リスペクト、尊敬してるだけ!

……あっでもなんだろうこのモヤモヤする気持ちは。


考えれば考えるほど恥ずかしさの渦巻きが渦巻いてくる。


……かっカフェオレでも飲んで落ち着こう。


そんな状態になっている私とは対極で、2人は至って冷静な様子で、


「ん?八重が主人公だぞ」


「この世界にヒロインポジって居るんですかね?」


「さあ?」


と仲違いしていた2人とは思えないほど、この世界のポジションついて話していた。

お読みいただき、ありがとうございます!


続きが気になる!また読みたい!と感じていただけましたら、ブックマークや評価をしてくれたら嬉しいですペコリ((・ω・)_ _))

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