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朝日が昇る道標

その2人をみて、


「あの、私はそっちの気があるのでしょうか?」


と疑問詞で聞いている辺りで、もう自分が性がヘテロセクシャル(異性愛者)だと思わない方がいいのかもしれない。


でも、あんなにヒソヒソ話されないとダメなんだろうか、別にセクシャルマイノリティが異性愛者じゃなくても良くない?


「すまない、なんか嫌な思いをさせてしまったな」


「陰口のように憶測を話すのは良くなかったですよね。すみません」


疑問に対しての返答は無く、気を使うような言葉をかけられてしまう。


まぁいっか。

よく良く考えてみれば、自身のセクシャルマイノリティについて分かるのは自分だけだし、2人に聞いても意味なかった。


抱きつかれて恥ずかしいのも行動が恥ずかしい可能性もあるし、私も憶測で判断するのは止めておこう。


……てか今はそんなこと考えている場合じゃない!


屋根も無いのに大きい影がある事に気づき、ふと上を見上げてみた。すると、低めの石壁と洋風の城の隙間に挟まれている場所にいることが確認できる。


建築物の"アナタ、絶賛異世界なうですよ"というメッセージが聞こえてきたような気がした。


「お客様、あの……馬に頭を齧られますよ」


「ふぉあっ!!」


上を見上げる必要もなかった!すぐ横に馬小屋があった!!


横を見ると、馬小屋より手前にある簡易的な木の柵の区切りの先には、さっきまで馬車を引っ張っていた毛艶の良い馬と、その様子を柵外から見守る御者さんが微笑んでいた。


「今日はやけに野次がうるさかったもんだから、裏口からですまないね」


元気な方のメイドさんがそう言って、苦笑する。


「いや大丈夫だ。リコが悪い訳ではない。国民の皆さんはこの前のクロノクニの女王様との謁見内容、この国で竜人が飛んだ理由が気になってしょうがないんだろうさ」


「え?ラルド、クロノクニに行ってたのですか?よくネコに殺されませんでしたね」


「クロノクニ?ネコ?」


クロノクニって言うのは他の国名なのは予測できるけど、ネコが人を殺すの?ネコと名乗っている人が殺人鬼なのだろか?


毎回思ってたけど、皆んなの言ってることがきっかりさっぱり分からない部分が出てくるな。


異世界の現実や常識、ニュースとか知らないからこの手の話になると完全にアウェーだ。


「では!こちらからどーぞーさんめいさまぁー!」


リコさんが隅の方にひっそりある木の扉を豪快に開き一礼する姿は、メイドというよりテーマパークのスタッフで、


「カノン、先導たのむ」


「了解しました」


一方のカノンさんは礼儀正しくスカートの裾を少し上げて礼をし、無表情でプログラミングされた動作をする機械系。何かに陽と陰の対称的な人を例としてだされているみたいだ。


「今日のカノンさん、なんか嬉しそうですね」


彼女の様子を読み取ったユキは、耳をぴょこぴょこ動かしながらそう言う。


え?喜んでたんだ。

無表情に見えたのだけど。


「はい、門番さんからお客様が冒険者だとお聞きしまして」


え?いつの間に冒険者になってる。

冒険者ってナニ?

旅人と一緒の意味かな?


……それとも放浪者という意味だったりして。


「ああーなるほどー」


ユキは棒読みで返事をし、ラルドの方もあちゃーと感じで手を顔に置いた。


「では食堂までご案内させていただきますね」


「はっはい!」


話を切り替えるように、2人は元気よく敬礼して返事をし、カノンさんを先頭に1列になって、お城の中に入っていく。私もその列の4番目に入り、彼女について中に入っていった。


そして初めての城内へ!

少しワクワクと不安が入り交じる中、初対面の部屋は普通の倉庫のようだ。


中には木製の棚に工具箱と麻袋、意外と現代的な大きめのチェーンソー。


除草や剪定に使われているのであろうハサミと両刃がま、扉の端の方に掃除用の箒やちりとり、クワやバケツが置かれている。


これは、

こっこれは!


「よく事件で死体が発見される農業倉庫場所ですね!……あっ……もしかして……この世界……物語のジャンル……はサスペンスでしょうか?」


少し震え声で自分の想像で自滅した私に対し、ラルドとユキは立ち止まりちょっと小刻みに震え出す。先頭と後方にいる別の対称コンビは、話についていけず首を傾げた。


「えっ」


マジカ。

先行き不安になってきた。


サスペンス主人公って半分死神みたいなもので、行く先々に人が死ぬと表しているような。


そして……私が主人公と言ってたような。


というと、私が動く度に誰かがお亡くなりになられる世界に来てしまったのか?


「ワタシ、ヒキコモッテタホウガ、イイカモシレナイ」


「たっ多分、大丈夫じゃないですかね?ラルド」


少し焦っているユキに対し、急にラルドは深刻そうな顔をする。そして、一呼吸置いてから口を開いた。


「……結局はモノガタリを進めないと分からないことだしな」


また急に彼は不気味な表情をし、カノンさんが開けた扉の向こう側へ歩んでいき、さっと扉を開けた状態にする係を変わった。


この様子を見たユキは、少し悲しそうにふわふわな耳を垂らし、


「本当はこのまま進めていいか悩んでるくせに」


とポソッと皮肉るように言った。

更に機嫌を悪くしたのかラルドの横を素通りし、カノンさんに"先に食堂に行ってます''と一言置いてから、先に歩いていってしまった。


「あっあの?」


気まずい雰囲気にかける言葉を探していると、


「まっまあまあ!いつもの事ですし、ユキさんも朝食を食べたら落ち着くでしょうし、きっと大丈夫ですよぅー!ささっレッツラゴー!」


「ええ!?」


リコさんが半場強引に私の肩を抱き寄せて、そのまま一緒に部屋から歩きだした。


今の雰囲気とは対称的に廊下には、大きな教会にありそうな形をした大きな窓にステンドグラスが使われていて、陽の光が白色の道を様々な色に照らしださせれていた。


灰色の髪のラルドさんも道と同じように歩く度に、アオ、アカ、ムラサキとカラフルに変化していた。


……ころころと雰囲気が変わっていく廊下道。

なんか雰囲気がころころ変化するラルドさんの姿そのものを表したみたいだ。


ユキが言ったことと彼の様子を見るに物語を進めたいのか、進めたくないのか迷っているのだろうか?


"「でも八重が来てくれて良かった!これでやっと物語が進んでくれる!そして元の世界に帰れる!」"


この言葉は嘘には聞こえなかったけど、少し自分を押さえつける為に言っているような気がする。


物語が進めば元の世界へ戻るのが嫌なのか、進める段階で何か不安な事があるのか。


2人の様子を見るに、この世界のジャンルが何かすら分かってないなら前者の方だろう。


それなら何故銀の鍵事件の真相や、私が何かしたことについては"真実を知るにはまだはやい"と分かるのだろうか?


あっ


「そこで人知を超えた何かの存在か」


この存在が説明したラルドとユキにそうゆうルールだと説明したのかもしれない。


そしたらますます生物の正体は、神様と崇められるモノが実在したとか、未確認生物やUMA的なモノなのか。


そして、銀の鍵事件自体も半分ファンタジーな世界観を踏まえて考えていいかも。


あっ……そういや現在進行形で幻想的な別世界に居ましたね。先輩だったら状況把握も魔法についての把握も速いんだろうなぁ。


「お客さん、いやぁーお目が高いですねぇ!そう、この窓に描かれているのは"シロクロノバケモノ"なんですよぅー!」


私の勝手に口から漏れている"人知を超えた何か"という単語に反応したリコさんが、体を1つの大きな窓へ向けてニコッと微笑む。


「シロクロノバケモノ?」


リコさんに示しだされた窓の方へ顔を上げてみた。


青と紫を主に散らばっているステンドグラスに、少しなめの黄色い星。


上の方には黒色に囲われた小さな橙色の丸の中に、サカナの骨の形をしたものが腹部から黒い管をのばしている。


シロクロノバケモノというモノが知らない私には、何だか産まれる前の赤子、胎児と似た形をしている気がした。


この方が人知を超えた何かの姿?

こんな形をしていて話せるの?


何かしらの雑誌や神話など載っているUMAでもカミサマの形もしていない胎児のようなもの。


「うーん?」


「あれぇー?もしかして、宗教が違いましたか!?」


訳が分からないがゆえの微妙な反応に対し、リコさんにそう聞かれてしまった。


え?


宗教?


宗教ということはシロクロノバケモノはカミサマなのかな?


宗教入って無いというか……この世界線の神話なんて来たばっかりで分からない。


かと言って知ったかぶりをしても、後々怖いことになるかもしれない。


どんな風に返信すればいいんだろう?


何を話せばいいのやらと迷っていると、


「ああそうじゃなくてだな……彼女は長い間冒険家をしていたから無神教者だとユキが言ってたぞ」


「冒険家」


ラルドさんは冒険家という設定を駆使してイカサマを発動させる。それを聞いたリコさんは、少しの間口をグッと閉じた。


「リコさん?」


「いやぁー冒険家って職業を長い間続けるほど楽しいものですかねぇ」


彼女はさっきまでとは違う低めのトーンの声でこう言う。


そして、シロクロノバケモノのステンドグラスを目を細めで見て、


「最初はどの生物も大体こんな形をしているのに、何でこんなにも個々で変わってしまうのでしょうねぇ」


世界自体を皮肉るようにボヤいた。


私はシロクロノバケモノがどんなカミサマなのかは分からないけど、生き物に個体差を邪険にする気持ちは少し分かる。


他人がもっている個性は、嫌悪を抱くものもあるけど、自分から視たら魅力的でステンドグラスみたいに色んな色をしてキラキラ光っている部分もあって。


個性の中のキラキラしているモノは、自分だけでは中々気づけない。


そしてキラキラしたものを見つけられない人は、相手の光っている部分を憎悪の対象へ変化してしまう。


憎悪に変わると人を攻撃してしまったり、傷つけてしまう。


傷つける相手はキラキラしてるものを持っている人か、自分より優越が低いと感じた人で、それらを傷つけたり、協力した人々が一番愚かになんだろう。


そして、攻撃を受けた人も憎悪の感情を得てしまい、復讐という形で虐めた奴らに攻撃する。


まぁこんな風に個性があると、最悪なシュチュエーションになる場合もあるだろう。


案外そうゆう人達は、私みたいにガラッと雰囲気や生活も変わる状況があれば、幸せな暮らしができて、元の世界に帰りたがらないかもしれないね。


かと言って、皆んなが個性がないロボットになって生活が何もかも決められていたら、恋愛映画を見て感動したり、新しいアート作品に触れることもない。


そして、なにより!


「個性が無かったら、先輩の良さを私が分かることは無かったと思う!」


私は感情が奮起したあまり、ひっそりと考えていたことが口から漏れてしまった。


「おっおう」


それを聞いたラルドは困惑し、返答に困っている様子。カノンさんも顔にはでてないが、首をフクロウのように傾げている。


「あっ……いやその……つい心の声が……」


恥ずっ!!

おもいいっきり、ドヤ顔で中二病みたいな発言しちゃったわ!!


「しかも先輩という言葉も叫んでたし……まるで私が私が先輩バカみたいじゃないか!」


はい!

ここで2回目の思考漏えい!


「うっあっあ……」


「あっはははは!お客さんにとって先輩は大切な人みたいですねぇー!いやぁーなんか元気でてきましたよーありがとうございます!」


よく意味が分からないけどそう言ったリコさんは、高笑いをした時とは違う落ち着いたような笑みを浮かべる。


「シロクロノバケモノの教えでも"この世界の種の形は元を辿れば同種から出来ている。だから多種の多様性を認めなさい。"というありがたーい言葉があるんですよー」


「それ……シロクロノニだと難しくないか?」


宗教の教えに対し、現実を突きつけるラルドさん。


"この国は、獣人と人しか住んでませんよ"


そういえばユキさんがこんなことを言ってたな。

他の種族との差別とか、門番の様子を見るに戦争をしたことがあるとかかも。


てか陛下とか人に呼ばれるぐらいのお方が、そんなこと言っちゃダメなんじゃっ。


「まぁーラルドさんが頑張ればいつかはそんな世の中になるんじゃないっすかねぇー」


リコさんはそう言うと、私の肩から腕を優しく離す。そして、ラルドさんに"ほらほら頑張ってくださいね。"と肘を当てて茶化す。


「さっさあ……はやく食堂に行くぞ」


茶化された方は難しそうな顔をし、逃げるように早足歩き始めた。

お読みいただき、ありがとうございます!


続きが気になる!また読みたい!と感じていただけましたら、ブックマークや評価をしてくれたら嬉しいですペコリ((・ω・)_ _))

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