またいつか
俺は今日、元親友と会うことになった。
『退院するんだ。だからお前に会いたい。よく遊んでいたあの丘で待っている。 』
と、勝は俺にメールを送ってきた。午前10時の出来事。
『今から向かうよ 』
いきなりの事だったから、何も準備していなかった。仕方なく手ぶらで丘へ駆け足で行った。
「結構早かったな。」
「お前、いきなりどうしたんだよ?」
「特に理由は無いんだけどな。」
元親友は困ったように笑う。
俺には、こいつを親友と呼ぶ資格は無い。だって、見殺しにしたのだから。
「おいおい、泣いてるよこいつ。気持ち悪ー」
殴られた腹を抱え、涙が頬を伝う。
俺は苛められっ子だった。誰にも言うことが出来ず、毎日毎日不安な日々を送っていた。そんなある日の事だった。
「やめろよ。」
勝は俺を救ってくれた。勝とは幼馴染みで親友だった。
「ふーん。じゃあお前、こいつの身代りしてくれるんだ?」
俺を救ったせいで、勝がターゲットとなってしまった。普通で有れば助けなければならなかったのだろう。だか俺は、恐怖で助ける事が出来なかった。逃げたのだ。
勝はどんどんやつれていき、学校へ来なくなった。後に入院したことを告げられる。その頃にはもう、ターゲットは変わっていた。
大事な友を見捨てた俺に、親友と呼べる資格はないのだ。
「健」
不意に名を呼ばれ、俺は勝の方に身体を向けた。
「何だよ?」
「もう、自分を責めるのやめろよ。俺が好きで健を庇ったんだ。俺がこうなったのは、俺のメンタルが弱かっただけ。だから健は気にしなくてもいい。」
俺の心を全部見透かした様に勝が言う。
「でも俺は、親友である勝を助けなかった。最低じゃないか。」
「いいや、誰でもそうなると思うよ。健は最低じゃない。だから気にするな。俺等、親友だろ?」
ほっとして、俺は笑った。嬉しかったのだ。
「おう!」
「またいつか、会えたらいいな。」
「え?」
プルルルル……
俺の携帯が鳴る。母からだ。
「もしもし?」
「健?」
「そうだけど……」
何故か、母の声は涙声だ。
「勝君が、亡くなったって……」
は?なわけねーだろ。だって勝はここに……
いない。勝がいない!
「過労死だって。」
「違う!俺は今日勝に会った!今まで話してたんだよ。それで、やっと仲直り出来たんだ!……」
まさか、勝はその為に? 最期に俺と、仲直りをする為に?
「うっ……」
涙が止まらない。
ちゃんと言えば良かった。ごめんって。ありがとうって。どうして俺は……
「またいつか、会えるといいな。」
勝の声が残っている。誰もいない丘で、俺は一人叫んだ。
「会えるといいじゃなくて、絶対会うんだよー!
ごめん!ありがとう!大好きだー!」
勝がいなくなった今でも、変わらずに苛めは続いている。
机に置いてあったペットボトルを持ち、俺は苛めっ子のリーダーに水をかける。
「いい加減やめろよ。」
睨まれる。だがちっとも怖くなかった。俺には親友がいるから。もう、絶対に負けない!






