04-イヴはとってもビューティフォー。
画伯(笑)登場です。
私が号泣した日以降、イヴとの距離がさらに縮まったように思う。出会う以前の時間を埋めるように、私たちは一緒に過ごしたくさん語り合った。心の距離が縮まれば物理的距離も縮まるようで、弟は文字通り私にべったりだ。かくいう私もイヴをベッタベタに甘やかしている。
「ねぇ姉さんの目は綺麗な色だね。」
「え?そうかな。イヴの目の方が綺麗だよ。」
私は彼の頭をよしよしと撫でた。イヴの澄んだ青い目に比べられてしまえば、私の茶褐色の目などくすんで見える。弟の綺麗な瞳を覗き込んだとき、そこに自分の姿が映るのを見るのが私は好きだった。
「僕の周りの人には、姉さんのような色の目をした人はいなかったよ。僕は好きだな。」
髪も瞳も私は茶色だ。完全に父親譲りである。お母さんの髪の毛も茶色といえたが、エレガントなブルネットなのだ。私ときたら、そこらへんの枯れた草のようだ。でも一応サラサラしてるはずだから許して欲しい。
「あ!そういえばさぁ、これこれ。」
私は子ども部屋の棚にしまってあった紙の束から、お目当てのものを探し出す。弟に見せようとベッドに広げれば、2人とも腹這いになって顔を突き合わせる。
「これなに?」
「見てわかるでしょ?イヴ描いたの!」
「えっ…僕?」
「うん!けっこう上手く描けたんだぁ~。」
私がにっこり笑うと、イヴは笑みをひきつらせた。お気に召さなかったのだろうか?
「どこらへんが僕なの?羊にしか見えないんだけど…。」
「どこらへんが羊なのー!イヴじゃん!どっからどう見てもイヴだよ!」
「本気…?」
失敬な!ひとがせっかく描いたのに。そりゃ…ちょっと…変になっちゃったとことかあるけど。
「見て。ほら、金色の髪の毛!イヴじゃん。」
「確かに色は金だけど、長さおかしいよ…僕こんな長くないし。」
「む。イヴの髪の長さは耳くらいってわかってたさ!でも…耳がどこだかわからなくて。でもほら、ちゃんと目は青く塗った!」
「そうだね。目は青いし、ちゃんと2つあって安心したよ。鼻も眉毛もないけど。」
「むむ!いいじゃん絵なんだからぁ細かいことは気にしないのっ!」
「これは何?」
指さされたところを見る。それは、
「服!初めてうちに来てくれた時に着てた服!キラキラしてかっこよかったから。」
「服かぁ、よかったちゃんと着てて。裸じゃなかった。」
「ったり前でしょ!もう。」
「ははっ。姉さんああいう服が好きなの?」
「今思えばすごく貴族っぽかったよね!装飾がいっぱいついててさ!」
「でもあれ結構重いんだよね。着てて疲れちゃうよ。」
「え、そうなんだ!」
「姉さんが好きならまた着ようかな、タンスにしまってあるんだ。」
「いや、重いならいいよ~。それにイヴはどんな服も似合っちゃうからね。そうだ、今度一緒に買い物いこっ。選んであげる!」
イヴで着せ替え人形してやるぜぃと内心ほくそ笑んだ私。だがそんな私の誘いでも純粋に嬉しかったのか、弟は声高に同意した。ただの良い子ちゃんである。
「それでさぁ姉さん、気になってたんだけど。」
「うん?」
「この絵の僕、青いモコモコで囲ってあるのなんで?」
「これはねぇ~、イヴの光!」
「僕の光?」
「そうっ。イヴね、私初めて見た時から光って見えたの!なんていうんだろう、オーラみたいなものかな?私にはそれが見えるのっ!」
「うそー!」
「ほんとだよ!私イヴには嘘つかないもん。」
自分には嘘をつかないという言葉が効いたのか、しぶしぶといった様子でその絵を見つめるイヴ。それでも腑に落ちていないのが明らかだった。
「人が光ってるなんて話、僕聞いたことないよ。」
「私だってすごく驚いたんだから!初めてだったんだもん。お父さんもお母さんも普通に見えるのにイヴだけ光ってる。今まで誰かにこういうこと言われたりした?」
「うーん。ないかなぁ。うん、ない。姉さんに初めて言われた。」
「そっかぁ~。」
「ちなみにそれは今も見えてるの?僕青い?」
「うん、真っ青じゃないけど、うす~くボヤーっと!」
こんな感じ~と言ってイヴの周りの空気を撫でるように手を動かした。
「へんなのー!」
「へんだよねー!私病気かなぁ?それとも、私にとってイヴが特別だから光って見えるのかな?」
「僕が姉さんの特別?」
私はコクコクと頷いた。するとイヴは照れる。笑った頬に赤みが差した。同じくして彼の纏う光は淡い青からだんだん暖色に変化していく。より流動的で、広範囲へと広がるようになった。
「わっ!オレンジ!」
「っ!?」
突然大きな声を出されたことに驚いたのか、ビクッとイヴは身体を震わせ、その光はスーッと引いていってしまった。
「あー!戻っちゃったよ。」
「一体なんのはなし?」
「今ね、イヴの光が青からオレンジになってたんだよ!」
「そうなんだ?」
「うん!ねね、もう一回オレンジにしてみて!」
「無理だよそんなの、わかんないもんっ。」
「え~!じゃあなんかほら、笑ってみて、さっきみたいに!」
「いきなり言われても…。」
弟が作り笑いをしても色に変化はなかった。
「ちゃんと笑ってみてよ~!」
「面白くないのに笑えないよー!姉さんが笑わしてよ!」
「えー!…んんんんと、ふとんが、ふっとんだっ!」
沈黙が私たちを包む。
「ええいこうなったら強行突破~覚悟ォォォ!」
「わっ!ちょっ!姉さんやめて!あっ!」
「こちょこちょこちょこちょこちょ…!」
「ははははっ、はっ、姉さん、ちょっとっ、あはははっ!」
じたばた笑い転げる弟に乗っかって、脇腹や首をくすぐった。意外にも彼の纏う光に変化が見られ、黄色っぽくなっていく。私はくすぐりに夢中になりながら、イヴが笑えば光も明るくなるのだと頭の片隅で考えた。イヴの色。どんな色も似合うけど、どうせなら明るい色がいい。笑わせてあげたい。
「ひどいよ姉さん、いきなりなにするのさ!」
涙目で息を乱しながらイヴが抗議してくる。ふとんがふっとんだで笑っておけばよかったものを。
「姉さんだって覚悟できてるんでしょう?」
「へ?」
途端に目をギラつかせながらイヴは馬乗りになって私をくすぐり始めた。
「ちょっ!ぎゃっ!あああああああははははははっ!死ぬぅぅぅぅぅ!ギブっ、ギブギブギブ!」
抵抗虚しく体力尽きるまでくすぐられた私は、もううかつに弟にイタズラをしかけないと誓ったのだった。弟にやり負けてしまうなんて、全くふがいない姉だ、と少し落ち込む。まぁでも私をくすぐってるイヴは楽しそうにしてたし、結果オーライかな。
読んで下さってありがとうございます。




