悪魔との出会い5
昨今はどこぞの世界でもサービス産業が大いに発展している。
どうやら、ザガンの世界ではサービス産業が主力産業のようだ。
話を聞いていて、「ほー、」と言う言葉しか出てこない。
「おい、俺の話をちゃんと聞いているのか!」
「あ、聞いていますよ、しかし色々な職業があるものですね。」
「うむうむ、どうやら判ってくれているようだな。」
ザガンは満足そうに笑っている。
「えーと、質問はよろしいですか?」
「おう、良いぞ、どんどん聞いてくれ。」
「個人的欲望を満足させる業もあると言っていましたが?」
「ああ、その職業な、なかなか良い質問だな。」
「どんな欲望にも応じるのですか?」
「それがな、昨今は自主規制が多くてな、全ての欲望に応えるわけにはいかんのだよ、
悪魔の世界も堅苦しくなったものだ。」
「応えられない欲望って、どんなものですか?」
「たとえばな、公共良俗に反する行為だな。」
「具体的には?」
「たとえば、あのアイドルのパンツの色は何色か知りたいとかはだめだし、
このゴミを役所が引き取ってくれないので、どこぞに捨ててくれとかもだめだ、
嘆かわしい世界が多くなってきて、悪魔のサービス業もやりにくい。
昔は世界征服をしたいとか、世界中の黄金が欲しいとかいう正しい欲望があった。」
ザガンはしきりに昔のほうが良かった、などと嘆いている。
「ところでザガンさんの職業は何ですか?」
「よく聞いてくれたな、俺は正統派の悪魔でな、個人的欲望を満足させる業をやっていた。」
「やっていたとは、今はやっていないという意味ですか。」
「それがな、俺が得意先にしていた世界はだんだん世知辛いものになってきたんだよ、
俺のような大悪魔がサービスするような正しい欲望を見かけなくなったんで休業中だ。」
「ほう、それは残念ですね。」
「おお、あんた判ってくれるかい、うれしいねぇ。」
ザガンは私の手を握り締め、目をうるうるとさせていた。
「いやぁー、俺の気持ちをわかってくれるとは、」
突然、ザガンは立ち上がり、手を上げると、空間に黒い穴が浮かび上がる。
「やい、くそばばあ、見ろここに俺の気持ちを判ってくれる奴がいるぞ!
貴様とは大違いだ、少しは見習え!」
黒い穴に向かって叫んでいた。
ガーン、突然、黒い穴から四角い物体が飛び出し、ザガンにぶち当たった。
バタリ、とザガンが倒れてしまう。
何だこれは?
四角い物体を見ると、焚き火の灯りで黄金色に輝いていた。
「そこの人、うちのだめ亭主を追放するので暫らく面倒見てやって頂戴、
その黄金はあなたへの報酬よ、よろしくね。
だめ亭主が目覚めたら、言っておいて頂戴ね、帰って来れないように呪いをかけたからと。」
「ほほほほほほ、あたしに逆らうなんて千年早いわ!」
不気味な笑いと共に黒い穴がふさがった、後には気絶したザガンと私とリリーだけだった。




