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かけてる彼女とズレてる私  作者: ふなり


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2/2

第2話 彼女の名前を呼んでみたい。

私はそれをBGMにしながら、本を読むのが入学してからの日課になりつつある。でも今日は、本の内容が頭に入ってこない。

 朝の教室。

 静けさの中から徐々に人が増えていき騒がしくなる。

 私はそれをBGMにしながら、本を読むのが入学してからの日課になりつつある。でも今日は、本の内容が頭に入ってこない。

 右の席をチラっと見る。かけるさんはまだ来てないみたい。

 残念のような。残念ではないような。複雑な気持ちだ。こんな気持ちをそわそわすると言うのだろうか。

 もう一度、本に目を戻す。やっぱり本の内容は頭に入ってこない。

 原因はたぶんあれ。昨日のあだ名の話で、翔さんがかけるって呼んでみない?って言ったことだ。

 私はそれを聞いて少し驚いたと同時に嬉しく思った。

「オッケー! うん! バッチコーイ!」

「う、うん」

 それからすぐチャイムがなり授業が始まった。そうなってくると次第に冷静になって、1つの疑問が浮ぶ。

 あれ? 私が呼ぶ? 翔さんを翔って? そう思うとすごく緊張して来た。

 いや、今は授業中なんだから、集中集中! ええっと、この式は…。

 しばらく経つと、授業終わりのチャイムが鳴る。

「ねえ、栞。ここの問題なんけど…」

「どの問題? 《《翔さん》》」

 こうして、私は授業中に考えていたことをすっかり忘れ、昨日1日、「翔さん」と呼んでいた。そして今日。学校に着いてからやっと思い出した。

 時間的にもうすぐ翔さんが来る時間だ。どうしよう、どうしよう!

 そうだ! 「握手とあだ名の本」に番外編で、友達にあだ名ではなく名前で呼んでほしい時のマニュアルというページがあった気がする。あの時はまだ必要ないと思ったけど、今は必要だ。

 私は今出している本をしまい、鞄の中から「握手とあだ名」の本を出して机に置いた。

 ページは確か後ろの方だったような…、あった!

 えーっとどれどれ。「まずは目をつむり、名前で呼びたい人を思い浮かべましょう。そして、心の中で何度も何度も名前で呼ぶ! 以上!」と書かれていた。

 これで本当にできるかのか?と半信半疑してしまうが、今はこれに頼るしかないので、やってみることにした。

 私は目を瞑り、翔さんを思い浮かべる。

 翔さんはいつもどんな表情をしていただろうか。

 いや考えるまでもなく、彼女が私に見せてくれるのは、笑顔だ。それとちょっと、困惑した顔…。でも、どんな顔も最後は笑っている。

 よし次は!

 私は彼女にそっと心の中で名前を呼ぶ。

 か、翔!

 言えた。

 も一度繰り返す。

 翔。翔。

 心の中で何度も呼ぶ。そのたび、翔が変わっていく。いろんな翔が出てくる。

 翔。かけ…

「おっはよ!」

「るーー!!」

 びっくりした私は椅子から立ち上がり教室中に響く大きな声を上げた。


 【翔の視点】

「昨日は失敗だったかな…」

 学校の昇降口で靴を履き替えながら小さく呟いた。

 栞があだ名を考えると言って一週間。彼女なりに私に合うあだ名を考えくれているが、あだ名が決まるまでは、翔さんと呼ばれる。

 別に翔さんと呼ばれるのが嫌なわけじゃない。けど、どうせなら…と思う。

 そう思って「翔って呼んでみない?」と聞いてみた。

 栞は、任せて!と言わんばかりだったのに、授業後に話しかけたら、「翔さん」呼びだった。まるでさっきのことを忘れているみたいに。

 しばらく歩いて教室の前まで行くと栞が見えた。

 栞の顔を見ると目を瞑り難しい顔をしていた。私には気づいていないようだ。

 栞の席の右隣りである自分の席に向かう。席に座って左隣りにいる栞を見る。すると、さっきまで難しい顔をしていたのに、今は…笑顔? というか、なんだか顔が溶けたバターのように、とろけていた。

 その顔を見た私はなんだか面白くて、さっきまで悩んでいたことを忘れて、元気になった。だから私はいつも通り挨拶をすることにした。

 そしたら…。


 【栞の視点】

 教室中の視線が私に集まる。は、恥ずかしい。なんとかしなければ。

「る、ルーマニアに…。こ、今度行ってみようかなー…」

 席にゆっくり座る。クラスの子は特に気にした様子はなく、また教室中にざわざわが広がる。

「ルーマニアに行きたいの?」

 翔さんの声がする。

 私は恥ずかしくて、目を合わせることが出来ず、左下を見る。目の右上はしに翔さんの脚が見える。

「う、うん」

「ルーマニアって何が有名なの?」

「ええっと、お城、とか?」

 そこから少し沈黙があった。それでも私は恥ずかしさで目を合わせることができない。

「ブフー!」

 彼女が突然吹き出した。

「ごめんごめん。驚かせちゃったかなぁ? あはは!」

 彼女のいつもの笑い声が沈黙を破る。

 その声につられて彼女を見ると、さっき頭に思い浮かべた顔と同じ笑顔だった。

「もう! 笑いすぎ!」

 その笑顔を見るとついつい私まで笑顔になってしまう、そんな笑顔だった。

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