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かけてる彼女とズレてる私  作者: ふなり


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第1話 あだ名

高校の入学式から一週間。私はあることを考えていた。

「おはよう! メガネちゃん!」

 朝の教室。クラスの子もまだ多くないとはいえ、少し騒がしい教室の中。

 私は席に座り本を読んでいた。すると右隣りの席から、私を「メガネちゃん」と呼ぶ挨拶が聞こえた。

 私は聞きなれた声の方を向き、挨拶を返した。

「おはよう。(かける)さん。でも、メガネちゃんはやめてって、いつも言ってるでしょ?」

「ごめんごめん、(しおり)

 そう言う彼女は、心底楽しそうだ。

 彼女の名前は翔さん。この高校に入学してから友達になった数少ない友達の一人だ。

 この教室の席は入学してから席替えを行っておらず、今日も私の隣の席は翔さんだ。

 翔さんを初めて見たときの第一印象は、物静かな人というイメージを持った。

 肩までしかない私よりも長い綺麗なストレートの髪。そしてメガネをかけている。そんな彼女を私は美しいと思った。

 でも、今は少し違う。

 彼女が美しいというのは変わらないが、元気な人という印象の方が大きくなった。

 よくしゃべり、よく笑う。

 まあ、入学式のときに先に話しかけたのは私だけど。

 ちなみに私はメガネをかけていない。かけているのは彼女の方だ。それなのに彼女は私をメガネちゃんと呼ぶ。それには二つの理由がある。

 理由一つ目。彼女が言うには、私は、時々ズレているらしい。そのことが、彼女がかけているメガネが下にズレることと似ていることから、メガネちゃんと呼ぶことにしたということ。私はそれを聞いて、うまいこと言うな。と、感心した。私はズレてないけど。

 そして二つ目。それは、

「それで決まったの? 私のあだ名。高校に入学してもう一週間だよ?」

 そう。あだ名をつけあうという話をしていたためだ。

 彼女は出会ってからすぐにメガネちゃんというあだ名を私に付けてくれたのに、私はまだ、彼女に会うあだ名を見つけられずにいた。メガネちゃんは、気に入ってないけど。

「もうちょっと待ってね。きっと素敵なあだ名を考えるから! 私、頑張るから!」

「う、うん…」


 (かける)の視点

 入学式の日。新しい出会い始まりに少しのわくわくと緊張をしていた私は、教室で他のクラスメイトが話始める間、この場をどう過ごすべきか考えていた。

 周りを見渡すと、前も後ろの子たちも隣の席の人と話していた。

 でも左の席の子だけは目を閉じ胸に手を当てながら、何かをブツブツ言っていた。その子は私よりも髪が短く、肩ぐらいまでで、第一印象はおとなしめで可愛い感じだと思った。

 私は、彼女がブツブツ何を言っているのだろうと気になり、視線を彼女の方に再度向ける。すると突然、彼女は目を見開き、座ったままこちらに体を向けてきた。

 そして、

「わ、私! ど、どうぞよろしくー!」

 そう言って、手を差し出してきた。

 私はそれに驚きつつ、思ったことを彼女に聞いた。

「ええっと、握手しようってことであってるかな?」

「そ、そうです! 握手です!」

 私は芸能人かどこかのアイドルだろうか?

 よくわからないが私は握手をした。

「よ、よろしく?」

 私が握手をすると彼女はもう片方の手でそれを包んだ。

 握手をしながら無言で向かい合う。

 体感で十秒ぐらいたった時、私は耐え切れず、

「も、もうそろそろいいんじゃない?」

 と言ってしまった。

「そ、そうですね」

 そう言って彼女は私の手を離した。

「じゃあ次は、あだ名ですね!」

 うん?

 こうして私は、この少しズレている彼女と出会った。


「栞しおりさんや、別にそんなにあだ名にこだわらなくてもいいんじゃないですか? 私たちもう友達でしょ?」

「エヘ、エへへ。そ、そうかな~?」

 お!栞、嬉しそう。

「おっほん。でも、この本には、あだ名を付けあえばさらに仲良くなれるって書いてあるんだよ?」

「その本のタイトルなんだっけ?」

「えっとね!「高校入学完全入門! これであなたも友達100人! 握手とあだ名で心をつかむ!編」だよ~」

「なるほど。何度聞いても、どうしてそれを買おうと思ったのかわからん」

「そうかな? 良さそうだと思ったんだけどな~」

 今時、高校生で握手するなんてスポーツ漫画ぐらいだろう。

 やはり、彼女は時々、少しズレている。私のメガネが時々ズレるみたいに。

 それでも私は、その握手で彼女と友達になれた。

 私はかけているメガネのズレを直した後、彼女に一つ提案をしてみることにした。

「翔さんじゃなくて、(かける)って呼ぶのはどう?」

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