望む者
◇◆◆◇
【力が漲る。
俺は無敵だ。
塵芥共を壊し、砕き、刻み、犯す。
最高だっ!
塵芥共は俺の玩具だっ!
存在としての高尚さが違うんだよっ!】
「そうだね、殺された人達は人間だけど…君は化け物だもんね」
【あっ?
なんで言葉が聞こえる?
ここにはもう誰も居ねぇ筈だろ?】
「そうだね、ここにはもう【人間】は居ないね」
後ろを振り向くと、子供と初老の男が居た。
【あっ?人間なら俺とお前等が…】
「君も僕達も人間じゃ無いよ」
少年は相手の言葉を遮り更に続けた。
「特に君は」
【はっ?】
シグマは言う。
「だって君、化け物だよ?自分の姿に気付いて無いの?」
化け物と指摘され、自分の姿を確認してみた。
【あ…う…あぁあっ!?何だよっ何だよコレはぁっ!?】
そこには甲殻に覆われ、手が8本、足が無数の触手と言う人外が存在した。
「害虫は…駆除しなきゃね、アハハっ」
シグマは怪しく笑う。
周防は哀しそうに刀を抜いた。
◇◆◆◇
「…死んでるねーコレ」
開口一番ジュディは言った。
死んでると言うより、壊されていると言う表現が合いそうな成れの果てであった。
ティナは、流石に吐き気を堪え切れずに建物の陰に隠れて吐いていた。
「…暴走の果てに人間辞めたか…でも、覚醒者の…しかも暴走した奴を誰がここまで…」
「僕達ですよ、ジュディさん」
目の前の覚醒者の残骸の先、先程までは誰も居なかった筈の場所に二人の【人間】が立っていた。
「…誰よアンタ…」
素性の知れぬ相手にいきなり名前を呼ばれ、ジュディは警戒した。
「僕はシグマです、こっちは周防さんです」
そんな警戒を気にせずシグマは言った。
「アンタ等さぁ…全部が唐突過ぎて説明になってないでしょ、意味解んないんだけど…」
ジュディは相手に見えない角度から後ろ手に愛用の鞭を掴んだ。
「理解は必要ありません、ただ納得してくれれば良いんですよ、【覚醒者】のジュディさんに…ティナさん?」
いつの間にかシグマ達の後ろに回り込み、茶色から緋色の瞳へと色を変えたティナに向かいシグマが言った。
(コイツ…何だ?)
ジュディは今までに無い、真っ暗闇の底知れぬ恐怖に包まれた。
「理解はいらない…ですが、説明が欲しければしますよ、アハッ」
シグマは屈託無く笑った。