αでありΩ
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「始まりは退屈から、終わりは退屈から」
年の頃なら13~4歳の、艶やかな金色の髪を風に靡かせた少年は、崖の上から眼下に広がる光景を眺めながら呟いた。
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「ワシは…何をしたんじゃ…何をっ!何をしたんじゃっ!」
崖の下では、三体の死体と一人の銀色掛かった白髪を頭の後頭部上方で束ねた、和服の老人が居た。
老人は緋色に輝く瞳を大きく開きながら絶望していた。
「何故娘をっ義息子をっ子供を殺したのじゃっ!」
涙を流しながら狂った様に叫び続ける老人の足元には、四肢を失い顔面を陥没させて横たわる娘夫婦の死体がもの言わず転がるだけであった。
「ワシは…ワシは…」
老人が己が所業に打ちひしがれている時、背後から声がした。
「始まりは退屈から、終わりは退屈から」
声に反応する気力は残っていたのか、老人は力なく振り返る。
「初めまして周防さん、僕はαでありΩです」
少年の言葉に老人は、何故自分の名前を知っているかよりも、その後の言葉の意味を把握出来ずにいた。
「今はαでもΩでもありません、なのでシグマと呼んで下さいね」
風が止んだ。
そして再び風が吹きはじめた時、何かの歯車が確かに動き出した。
穏やかに、それでいて何者にも止める術のない絶望への歯車が。