表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

小箱の街

フューゾルと言う街は、元々は大陸の西に位置する小さな国であった。


大陸のやや東寄りに位置するロード=グレイ帝国の大陸統一戦争の激化により、大陸の中央、つまり三分の一を支配下に置く現状により、東部の小国家は皆連合を結び帝国に抗っていた。


フューゾルの位置する西側の国々は、中央南を覆うエルフ族の支配する大樹海と、中央北に連なるドワーフ族が支配するカトラーン山脈郡が壁となり、本格的な戦争には突入していなかった。


帝国が海軍を本格的に組織するまでは。


海軍の進行により、西側最大の宗教国家アルシーナ神聖国は周囲の国々との結束を計った。


帝国に刃向かう力など持たない小国家は強国アルシーナに庇護を求め、アルシーナは事実上西側の殆どの国々を吸収した。


無論、フューゾルもその一つてある。


こうしてフューゾルは一国家から一都市へと姿を変えた。


     ◇◆◆◇


ジュディはティナを連れてフューゾルに戻ってきた。


元々、今回の依頼はあの町の生き残りの保護だ。

あの町の現状から、あれ以上捜索する意味も無いだろうと早々に切り上げての事だった。


「…凄い…こんなに大きな街、初めて見ました…」

ティナは圧倒されていた。


曲がりなりにも統一前は国であったのだから巨大で当然なのだが、小さな町が世界の全てであったティナには、まるでお話の中の世界に見えるのだろう。


「アハハっ、フューゾルなんてアルシーナに比べれば小さい方だよティナちゃん」

いつの間にかティナをちゃん付けで呼ぶ様になったジュディが答えた。


「でも、私はジュディさんと違ってあの町から出た事なかったので、やっぱりビックリですよ」

こちらはジュディをさん付けにする様になり、落ち着きなくキョロキョロと辺りを見渡している。


そんなティナに、ジュディは苦笑するしかなかった。


     ◇◆◆◇


「それで、生き残りはその子だけなの、ジュディ?」


フューゾル市庁、市長室の席に座る艶やかな黒髪を伸ばしたモデル並の身長と顔の現市長、マリー=ゴールドは暇そうにペンを廻しながらジュディに聞いた。


「んっ…ああ、他には死体すら無かったよ」


何故か出された青汁を美味しそうに飲んでいたジュディがさして興味もなさそうに答えた。


「あっそ…ねぇ、ティナちゃん?」

興味が全く無かったのか、話題がいきなりティナへと振られた。


「うっ、あっ、えと、はいっ何ですかっ!?」

初めて飲んだ青汁の余りのマズさにどうすれば良いか悩んでいたティナは、いきなりの事に混乱した。


「ティナちゃんに聞きたい事があるの」

マリーは何故か目を蕩けさせて聞いてきた。


ティナは、生涯で初めての悪寒に襲われた。

「あー、マリーさ、用事があったんだったよ、仕事代は何時もの口座なっ」

ジュディがそう早口にまくし立て、ティナの腕を掴んで足早に部屋を出た。


「チッ…」

誰も居なくなった部屋にマリーの舌打ちが響いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ