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緋色の瞳
緋色の力は渇望
緋色の願いは絶望
世の中に都合の良い展開など存在しない
只、確率が世界の全てである
緋色の混沌は確率に人の業を併せて良とする
それは、業深き者への希望か、あるいは絶望か
◇◆◆◇
「嫌だ…死にたくない…嫌だ…」
男は絶望的な状況で呟き続けた。
マフィアの用心棒をしていたこの男は、ギャンブルにより個人レベルでは到底返しきれない負債を抱えていた。
追い詰められた男は、つい手が出てしまった。
己が所属するマフィアの金に。勿論、待っていた末路は他の者達への見せしめとしての拷問による地獄、そして組織の力を示すための路上での拷問による死だった。
「あいつ等…殺してやるっ、死にたくない、死にたくないよぅ…」
「力が欲しいか?」
巨大な緋色の瞳が語りかける。
「死にたくない死にたくない死にたくない…」
男は気付かない。
「力が欲しいか?」
巨大な瞳は繰り返す
「死にたくない死にたくない死にたくない…死にたくない殺してやる必ず死にたくない死にたくない死にたくない…」
男の忌まわの言葉に別の言葉が入った。
「契約は成れり」