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7時22分の電車で始まる恋  作者: ほしみん


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最終話 7時22分の電車で始まる恋

 あれから数年。


 和樹は大学を卒業して、サッカー専門誌の記者になった。


 中学時代からサッカーに打ち込み、高校でも続けていた。


 選手としてプロを目指すほどではなかったが、サッカーへの愛は人一倍強かった。


 健太が技術を仕事にしているのを見て、ふと思った。


「健太ばっかり好きなことを仕事にしてずるい。俺も、好きなことを仕事にしたい」


 そう思って選んだのが、サッカー記者という道だった。


 持ち前のフットワークの軽さ、コミュニケーション力などをフルに活かし活躍しているらしい。取材で全国を飛び回り、時々LINEで近況を報告してくれる。


「健太、この前Jリーグの試合取材したんだ。やっぱりサッカーは最高だよ」


 嬉しそうな和樹の声を聞いて僕も嬉しくなった。




 僕は大学卒業後、フリーランスのフルスタックエンジニアとして独立した。


 卓也の会社から業務委託を受け、水野屋のシステム開発も続けている。


 最近は、他の顧客からも直接仕事の依頼が来るようになった。


 順調だ。


 売上も順調に伸びている。


 個人事業主のままでは税金の負担が大きくなってきた。法人化を本気で考えている。


 なんて思っていたある日。


「健太、法人化するんだって?」


 卓也から連絡が来た。


「ええ、考えてます。税金対策もあるし、フリーランスより信用力も上がるから」


「いいね。で、CTOは俺でいいよね?」


 卓也が言う。


「え、本気ですか?」


「本気だよ。俺、フリーランスで技術一筋でやってきたけど、経営は健太のほうが向いてると思うんだ」


 卓也は今もフリーランスのエンジニアとして活躍している。


 複数の大手企業から引っ張りだこで、年収は僕より上だ。


「健太がCEOで、俺がCTO。技術と経営で役割分担。昔みたいにさ」


「昔……」


「健太、あの頃を思い出すよ。高校生の健太が必死にコード書いてた頃」


「卓也さんのおかげです。あの時教えてもらわなかったら、今の僕はいません」


「いや、健太の努力だよ。俺はちょっと背中を押しただけ」


 卓也の声が優しい。


「じゃあ、本当にCTOお願いしてもいいですか?」


「任せとけ。技術のことなら、いつでも相談してくれ。株も少しもらうけどな」


 僕たちは笑った。


 ◆


 一方、千尋は、水野屋の副社長として活躍している。


 大学で学んだ経営学を存分に活かして、水野屋を成長させている。


 高校時代、僕が作ったInstagramアカウントから始まった水野屋のSNS展開。


 それが今では、Instagram、Twitter、YouTubeと多岐にわたり、フォロワーは合計で50万人を超えた。


 オンラインショップの売上は、実店舗を上回るまでになった。


 国内には東京、大阪、福岡に支店を構え、従業員も30人を超えた。


 そして最近では、海外からの注文も増えてきた。


 特にニューヨークとパリからの引き合いが多い。


「ニューヨークとパリに出店を考えてるの」


 千尋の目が輝いている。


 あの頃と同じ、夢を語る千尋の顔。


「現地に拠点を作って、海外での和菓子文化を広めたいの。健太さんが作ってくれたシステムがあれば、海外でも運営できるわ」


「いいね。僕がシステム面でサポートするよ。多言語対応も、決済システムも、全部任せて」


「ありがとう、健太さん」


 技術と経営。


 最強のビジネスパートナー。


 そして、最高の夫婦。


 ◆


 ある夜、娘が寝た後。


 リビングで二人、お茶を飲みながら話す。


「健太さん、覚えてる? 高校生の時、二人で初めてInstagram始めた日」


 ちーちゃんが懐かしそうに言う。


「もちろん。ちーちゃんが和菓子の写真を撮って、僕が投稿の文章考えて」


「まさか、あれがここまで大きくなるなんて思わなかったよね」


 僕たちは顔を見合わせて笑った。


「あの時は大変だったね」


 ちーちゃんが静かに言った。


「高校生で妊娠して、周りからは色々言われて」


「うん。でも、あの決断があったから、今があるんだよ」


 僕はちーちゃんの手を握った。


「筑波大学、一年遅れたけど、二人で通えて良かった」


「娘を抱っこしながら勉強したこと、今でも思い出すよ」


「大変だったけど、充実してたね」


 ちーちゃんが微笑む。


「健太さん、ありがとう。あの時、『一緒に頑張ろう』って言ってくれて」


「こちらこそ。ちーちゃんがいてくれたから、僕も頑張れた」


 二人で築いてきた人生。


 困難もあったけど、二人なら乗り越えられた。


 そして、これからも。


 ◆


 娘は健やかに育っている。


 明るくて、優しい子だ。


 ちーちゃんに似て、笑顔が可愛い。


 僕に似て、物事を論理的に考える癖がある。


「パパ、これどうやって作るの?」


 娘がよく聞いてくる。


 プログラミングにも興味を持ち始めている。


「ママ、お菓子作り教えて」


 ちーちゃんと一緒に和菓子を作ることもある。


 技術と経営、両方に興味を持つ娘。


 僕たちの子だな、と思う。


 そして──さらに時間がたった。


 ◆


 春の朝。


 私は7時22分発の電車に乗る。


 高校1年生になって、電車通学が始まった。


 窓の外を見ると、桜が満開だ。


 綺麗だな。


 電車は混んでいる。


 私は吊り革を掴んで立っている。


 突然、急ブレーキ。


 体が前に傾く。


 隣の人にぶつかりそうになる。


 咄嗟に吊り革をしっかり掴む。


 でも、バランスを崩して──


「あっ」


 隣の男の子にぶつかってしまった。


「ごめんなさい、大丈夫ですか?」


 私は慌てて謝る。


「あ、はい。大丈夫です」


 男の子が答える。背が高くて、優しそうな顔。


「桜ヶ丘の生徒さんですよね?」


 男の子が聞く。こころなしか頬が赤い。


「はい」


 私は答えた。


「俺も1年生です。田町高校」


 なんだか、ドキドキする。


 顔が熱い。


 ぶつかったのをきっかけに一言二言言葉を交わす。


 少しして、電車が駅に着く。


「また、この電車で会えますか?」


 男の子が言った。


「はい、また」


 私は頷いた。


 降りる駅は違うけど、同じ電車。


 また、会えるかもしれない。


 春の風が、温かい。


 桜の花びらが、舞っている。


 これが、私の物語の始まり。


# 『7時22分の電車で始まる恋』開発後記・あとがき

## 完結の御礼


『7時22分の電車で始まる恋』を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。なろうに初めて投稿した作品ですが、こうして無事最後まで書き切ることができて正直ホッとしております。


高校2年生の春、7時22分の電車で出会った健太と千尋の物語は、ここで一つの区切りを迎えました。二人の出会いから、友情、恋愛、そして新しい家族の誕生まで――ゆっくりと、でも確実に歩んできた二人の日々を、最後まで見守っていただけたこと、心から感謝しています。


本作は微熱系小説を描きたいという衝動から勢いで執筆を開始し、勢いで走りきった作品です。なろうでは処女作となります。(連載中に『音光学園女子校文化祭大作戦』の連載も同時に開始してしまい同時二連載となってしまいました。)


健太が千尋の実家「水野屋」のSNSマーケティングやWebサイト構築を手伝う場面では、実際の技術を可能な限りリアルに描写することを心がけました。


- GoogleサイトでのWebページ作成

- Instagramを使ったSNSマーケティング

- Googleフォームでの注文受付システム

- HTML/CSS/JavaScriptの基礎学習

- フロントエンド・バックエンドの概念


これらは実在する技術であり、高校生でも学べるものばかりです。物語を通じて、技術の楽しさや、それを使って誰かを助けることの喜びを感じてもらえたら嬉しいです。

なお、私自身最低限のウェブアプリは組めますがウェブアプリエンジニアの専門家ではございませんので、ご了承ください。(間違いがあったらこっそり教えていただけると嬉しいです。)


## キャラクターへの想い


### 佐藤健太

内気で不器用だけど、誠実で優しい少年。千尋との出会いをきっかけに、どんどん成長していく姿を描けたことが、作者として一番嬉しかったです。


書いてる本人としても奥手な二人、すごくじれったかったぞ!


### 水野千尋

和菓子屋の娘として、伝統を守りながらも新しいことに挑戦する姿勢を持つ彼女。健太の支えを受けながら、自分でも技術を学び、最終的には二人で協力して水野屋を支えるまでに成長しました。


第62話「恥ずかしい買い物(千尋視点)」での彼女の勇気ある決断(健太のチキンっぷりに対してのあの堂々とした様)は、印象的なシーンの一つです。


## 読者の皆様へ


ブックマーク、感想、評価をいただいた皆様、本当にありがとうございました。


「なろう」という素晴らしいプラットフォームで、多くの方に作品を読んでいただけたことは、作者にとってかけがえのない経験でした。毎日のアクセス数やブックマーク数を見るたびに、「次の話も楽しみにしてくれている人がいる」と思うと、執筆の励みになりました。


## そして、次の物語へ


『7時22分の電車で始まる恋』では、技術を通じて二人が繋がる物語を描きました。


次の作品では、「創作」という別の形で繋がる二人の物語を描きたいと思っています。


### 次回作予告:『ライバル優等生とエロ漫画描いたら恋に落ちた』


「このエロシーン、リアリティないと思うの」

「……お前、何が言いたい」

「実際にやってみないと、わからないでしょ?」

「は!?」


成績トップの黒澤蓮×いつも2位の白石遥。

ライバル優等生の二人には、誰にも言えない秘密があった。


蓮=なろう作家(PV一桁、読まれるのはエロ短編のみ)

遥=Pixiv絵師(伸びるのは二次創作エロ絵だけ)


互いの秘密を知った二人は、「最強のエロ漫画」共同制作を開始する。


「このポーズ、実際にやってみて」

「資料のため、でしょ!?」


ポーズ確認で密着ドキドキ。

キス角度検討で顔が近すぎ。

ベッドシーン研究で……


「資料のため」という建前が、やがて本当の実験に――


優等生が真面目にエロを研究する、

承認欲求×創作×恋愛のドキドキラブコメディ!


創作を通じて成長し、認め合い、恋に落ちる二人の物語。


※本編R15、直接的な性描写なし


『7時22分の電車で始まる恋』が「技術×恋愛」だったとすれば、次作は「創作×恋愛」。


健太と千尋が技術を学びながら絆を深めたように、蓮と遥は創作活動を通じて互いを知り、認め合い、そして恋に落ちていきます。


「承認欲求」という、創作者なら誰もが抱える欲望。

「PV一桁」という、誰もが通る苦しい道。

「読まれたい」という、切実な願い。


それでも描き続ける二人の、笑いあり、ドキドキあり、そして真剣な創作論もある――そんな物語を目指しています。


もしご興味がありましたら、次作もお付き合いいただけると嬉しいです。


本作は11/22、21:00から連載予定です。

初回は7話同時公開予定!乞うご期待!!!


## 最後に


『7時22分の電車で始まる恋』は、その名の通り、7時22分の電車から始まった、小さな恋の物語でした。


健太と千尋の未来が、温かく幸せなものであることを願いながら、この物語の幕を閉じたいと思います。


本当に、ありがとうございました。


---


2025年11月 ほしみ


P.S. もし『7時22分の電車で始まる恋』を楽しんでいただけたなら、ブックマークや感想、レビューをいただけると、とても嬉しいです。次回作執筆の励みになります!

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