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7時22分の電車で始まる恋  作者: ほしみん


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第26話 初めての反響

【2025-09-27】時系列に関する矛盾の解消のための微修正

 SNSアカウントを開設してから一週間が経った。


 月曜日の朝、いつものように電車で千尋と会うと、彼女がスマホを見ながら嬉しそうな表情をしていた。


「健太さん、見てください」


 千尋がスマホを見せてきた。Instagramの画面には、水野屋の和菓子の写真に7つの「いいね」が付いていた。


「おお、すごいじゃないですか!7つもついてる!」


「はい!先週教えてもらった撮影方法で撮った紅葉の上生菓子の写真です。『#wagashi』や『#japanesecake』のタグをつけたおかげで、海外の方が見つけてくれて」


 千尋の喜ぶ顔を見て、僕も嬉しくなった。


「あ、ほんとですね。7個中4個が海外の方ですね。日本文化好きなのかな」


「あ、コメントも1つついてます」


 画面をスクロールすると、コメントが1つあった。


『Beautiful! What shop is this?』(英語コメント)


「外国の方からのコメントですね。返事した方がいいですね」


 僕が言うと、千尋が驚いたような表情をした。


「海外の方がメッセージまで送ってくれるなんて」


「先週一緒に選んだハッシュタグ戦略が効果を発揮してますね。特に『#wagashi』や『#japanesecake』が海外の方の目に留まったんでしょう」


「本当に嬉しいです」




 その日の放課後、僕は水野屋に向かった。千尋がどんな様子か気になったのだ。


「こんにちは、健太君」


 おばあちゃんがちょうど和菓子の写真を撮影しているところだった。


「あら、お恥ずかしい。千尋がスマホで写真を撮ってるのを見て、私もSNSというものに興味が出てきたのよ。私でも和菓子を綺麗に撮れるんじゃないかって試行錯誤してたの」


「おお、素晴らしいです。恥ずかしくなんかないですよ。本当にすごいです」


 年配の方が新しいことに興味を持って、行動に移せるなんて、ハードルが高いはずなのに。


 おばあちゃんはカメラを机の上に置くと、僕を奥へと案内してくれた。千尋と二人で座敷に座り、今日のInstagramの反響について話した。


「7つのいいねと、1つのコメント」


 僕が振り返ると、千尋が嬉しそうに頷いた。


「数は少ないけれど、一つ一つが本当に嬉しいです」


「それが大切なんです。最初はみんなそうですから」


 千尋のお父さんも興味深そうに聞いていた。


「SNSってすごいもんだな。海外の人まで見てくれるなんて」


 その時、千尋のスマホに通知が来た。


「あ、またInstagramにコメントが」


 見ると、フォロワー数が8人になっていた。


「8人も!少しずつだけど増えてるんですね」


「#wagashi や #japanesecake のタグが効いてますね。それに千尋さんの写真と文章が素敵だから」


 千尋が照れたように笑った。


「健太さんが撮影のコツを教えてくれたおかげです」


「いえ、千尋さんのセンスが良いんですよ」


 二人で顔を見合わせて笑った。




「そういえば」


 おばあちゃんが思い出したように言った。


「昨日、『ホームページ見ました』というお客様が来店されたのよ」


「本当ですか!?」


 僕と千尋が同時に声を上げた。


「ええ。隣町の方で、Googleで『水野屋 和菓子』で検索したら、うちが出てきたそうよ」


「Googleマイビジネスの効果ですね」


「Googleマイビジネス?」


 千尋が首をかしげた。


「ああ、そういえば説明してませんでしたね」


 僕は少し前のめりになって説明した。


「Googleマイビジネスっていうのは、お店の情報をGoogleに登録するサービスなんです。住所や営業時間、電話番号などを登録しておくと、誰かが『和菓子屋』とか『手作り和菓子』でGoogle検索したときに、水野屋の情報が表示されるんです」


 千尋が目を丸くした。


「そんなことができるんですか?」


「はい。それで、先週ウェブサイトを作ったときに、一緒にGoogleマイビジネスにも登録しておいたんです。ほら見てください」


 Googleで水野屋、和菓子、で検索をかけると画面の右側にお店の場所や写真が映ってるのがわかる。


「あ、よくお店を検索すると右に情報がでてるなーって思ってたんですが、これがGoogleマイビジネスなんですね。お店がみんな自分で登録してたんですねー。知らなかった」


 感嘆する千尋の横でおばあちゃんも嬉しそうにノートパソコンの画面を覗き込んでいた。


「なるほど。だからその方は、うちを見つけてくださったのね」


「そういうことです。インターネットってすごいでしょう?有名かどうかに依らず、探している人に確実に見つけてもらえるんです」


 その後、僕たちは今後のSNS運営について話し合った。


「少しずつでも、続けることが大切ですね」


「健太さん、本当にありがとうございます」


 千尋が深々とお礼をした。


「まだ始まったばかりです。でも良いスタートが切れましたね」


 おばあちゃんの言葉に、千尋が顔を上げた。


「そうですね。健太さんと一緒に、少しずつ頑張ります」


 千尋が僕を見つめた。その瞳には、感謝と信頼が込められていた。


 帰り道、千尋が駅まで送ってくれた。


「健太さん、ちょっとお願いがあるんです」


「どうされました?」


「Instagramをやってみて、写真と一緒に文章を書くのがとても楽しいんです。

 でももっと長い文章や詳しい説明を載せたくなってきたんですが、Instagramだと限界があって。

 もっと本格的なブログを書きたいんです」


 千尋の成長の速さに感心した。一週間前は分からないことが多いと言っていたのに。


「ブログですか。いいですね。調べておきますよ」


「ありがとうございます。楽しみです!」


 千尋の笑顔を見送りながら、僕は思った。水野屋のデジタル化は、想像以上に順調に進んでいる。そして何より、千尋と一緒に新しいことに挑戦できることが楽しい。


 家に帰ってから、僕は今日のことを振り返った。


 7つのいいね、8人のフォロワー、1つのコメント、そしてウェブサイト経由での1人の来店客。


 数字は小さいけれど、確実に水野屋の魅力が伝わり始めている。


 千尋からLINEが来た。


「今日はありがとうございました

 少しずつだけど、反響があって嬉しいです。

 明日からも頑張ります!」


 千尋からの感謝の言葉に、僕の胸が温かくなった。これからも千尋と水野屋のために、できることを精一杯やっていこう。そう決意を新たにした。

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