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7時22分の電車で始まる恋  作者: ほしみん


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第24話 Googleサイトでの第一歩

【2025-09-27】時系列に関する矛盾の解消のための微修正

 家に帰ると、早速ホームページ制作について調べ始めた。


 最初は「ホームページ 作り方」で検索してみた。HTMLやCSS、JavaScriptといった専門用語が並んでいて、正直なところ圧倒されてしまった。


 タグの説明から始まって、CSSでのスタイリング、javascriptによる動的処理まで……さらに、サーバーというものをクラウド?オンプレミス?みたいなところに作って、さらにWebサーバーというものをたてる?つくる?らしい。情報過多で、もはやなにからどうしていいかさっぱり、という状態だ。


 ざっくりいうとWebページを作るためのいろいろなことをしないといけないらしく、これだけのことをやれるようになるのはかなり難易度が高そうだということがわかった。


「うーん、これは思ってたよりやばいな」


 僕は画面を見ながら思わず頭を抱える。千尋の前で思わず見栄を張ってしまったがこれは早まったかもしれない。


 うんうん唸っているところで、ふと動きを止める。


 待てよ?世の中にウェブサイトはたくさんあるのに、みんながみんなこんなに複雑なことをやってるはずがない。もっと楽な方法があるのではないか?


 簡単に始める方法を探ると、HTMLやCSSを書いたり、サーバーを立てる作業を自分でやらなくても、ブログを簡単にできるサービスや、ウェブサイトをブラウザ上で手軽に作れるサービスがあるらしい。


 今回の用途では後者のほうがよさそうだ。


 更に調べるとGoogleサイトというのが手軽にできそうだ。


 まずはそれからやってみよう。


「Googleサイト」


 クリックしてみると、Googleが提供する無料のホームページ作成サービスだった。HTMLやCSSの知識がなくても、テンプレートを選んでドラッグ&ドロップで直感的に編集できるらしい。


「これなら千尋さんと一緒に作れそうだ」


 早速Youtubeを漁ってるとGoogleサイトのチュートリアル動画を見つけることができた。

 テンプレートがたくさんあって、本当にドラッグ&ドロップで簡単に作れそうだった。何より、水野屋にぴったりの和風テンプレートもある。


 水野屋で聞いた色々な情報と、ダミーの画像でそれっぽい雰囲気のページを作ってみる。やればやるほどそれっぽいウェブサイトに仕上がっていき、気がついたら深夜まで作業をしていた。


 次の夜はSNSについて調べてみた。


 最初は「お店のSNS活用方法」で検索してみると、今度はInstagram、Twitter、Facebook、TikTok……またもや情報の山だった。


 でも今度は慌てない。昨日のウェブサイトの件で学んだのは、まずは簡単に始められるものから選ぶことだ。


 SNSの比較記事をいくつか読んでみると、それぞれにターゲットユーザーが違うことがわかった。


 TikTokは10代から20代前半の若者が中心で、短い動画コンテンツが主流。確かにダンスとかエンタメ系が多い印象だ。


 Facebookは30代以上のユーザーが多く、文章でのやりとりがメイン。少し固い感じで、お店の情報発信には向いているけど、若い人へのリーチは期待できなさそう。


 Twitterは幅広い年齢層が使っていて、リアルタイムな情報発信に向いている。お店の営業情報や新商品の告知には良さそうだ。


 Instagramは20代から40代の女性ユーザーが多く、写真がメイン。和菓子の美しさを伝えるには最適だし、和菓子に興味を持ちそうな層とも合致している。


 水野屋のターゲットを考えると、やはりInstagramが一番合いそうだ。それとTwitterも情報発信用に併用するのが良いかもしれない。


 まずはInstagramから始めよう。


「Instagram ビジネスアカウント 作り方」で検索すると、個人アカウントとは別にビジネス用のアカウントが作れるらしい。お店の情報や営業時間、連絡先なども登録できて、より本格的だ。


 次に投稿のコツを調べてみる。ハッシュタグの使い方、投稿のタイミング、写真の撮り方……これもまた奥が深そうだが、基本的なポイントは掴めそうだった。


 特に「和菓子 写真 撮り方」で検索したときの記事が参考になった。自然光での撮影、背景の選び方、角度の工夫……水野屋の美しい和菓子を魅力的に撮るための具体的なテクニックがたくさん載っていた。

 本当は一眼レフのような、高価なカメラで撮るほうが映える写真が取れるのだろうが、最初から欲張ると身動きが取れなくなる。スマホで撮るところから始めよう。


 スマホにメモアプリを開いて、来週までにやることリストを作った。


 ・Googleサイトを使ってウェブサイトのモックアップを作る

 ・和菓子屋のサンプルサイトを見て研究

 ・SNS投稿のベストプラクティスを調べる

 ・写真撮影のコツを学ぶ


 千尋と水野屋のために、僕にできることを精一杯やろう。そう決意しながら、僕は勉強を続けた。


 ◆


 ある日、僕は約束通り水野屋を訪れた。


 リュックには理科の本と、そしてノートパソコンが入っている。一週間かけてGoogleサイトの使い方を習得し、先週教えてもらった情報や撮影させてもらった写真など、水野屋の情報を使って簡単なモックアップサイトを作るところまで進めることができた。


「健太さん、いらっしゃい」


 千尋が店の奥から出てきて、嬉しそうに迎えてくれた。


「こんにちは。約束の本、持ってきました」


 僕が理科の本を差し出すと、千尋の目が輝いた。


「ありがとうございます。とても楽しみです」


「それと……」


 僕がリュックからノートパソコンを取り出す。千尋は自分の座布団を僕の横において、ちょこんと座る。千尋の香りがふわっと香り、頭が真っ白になりかける。

 あわてて頭を振って冷静になると、僕はごほん、と咳払いをした。


「えっと今日は実際にホームページを作ってみようと思います。実は簡単なモックアップも作ってきたんですよ」


 千尋の笑顔がぱっと明るくなる。


「モックアップ?」


 千尋の後ろで、おばあちゃんが首を傾げる。


「ああ、失礼。モックアップというのはテスト制作、という意味ですね」


 その表情を見ていると、僕も嬉しくなる。


「え、ほんとですか?うわー楽しみです!」


 ハイテンションな千尋の様子がとても可愛くて、僕は思わず微笑んだ。


 パソコンを開いて、準備してきたモックアップサイトを表示した。


「こちらが一週間頑張った僕の成果です」


 画面に水野屋の名前と、先週撮った写真で構成された和風のデザインのホームページが表示された。


「まあ、これが水野屋のホームページになるの?」


 祖母が驚いて画面を見つめている。千尋も目を見開いて、食い入るように画面を見ていた。


「はい。これがGoogleサイトで作ったサンプルです。写真は仮ですので、本番用に撮影した写真に差し替えて、文章を千尋さんに書いて、おばあちゃんに内容の承認をいただければ、あとは公開するだけです」


「みんなに水野屋のページをみてもらえるのね」


「こんなに本格的なものが……健太さん流石です」


「ありがとうございます。プロには叶いませんが、精一杯頑張りました。


 ページの更新の仕方を教えますね。ここをクリックして、テキストを入力して……」


 僕が操作を見せると、千尋は真剣にメモを取りながら見ていた。


「健太さんタイピング早いですね」


 千尋がふと言った。僕の手元を見つめている千尋の横顔が美しくて、説明を忘れそうになった。


「あ、えーっと……オンラインゲームや友達とチャットしてると、自然とタイピングもはやくなるんですよ──」


 それで、画像の配置は、置きたいところにドラッグ&ドロップで簡単に配置できるんです」


 千尋やおばあちゃんの修正希望を反映していくうちに、みるみるうちに水野屋のホームページが完成に近い形になっていく。


「すごいです……本当に、魔法みたい」


 千尋が感動したように言った。


「あ、私の作った和菓子の写真も載ってる」


 千尋が声を上げる。


「素敵だったので思わず載せちゃいました」


「おばあちゃん、私の作った和菓子の写真なんて、水野屋のページに載せちゃってもいいの?」


「あら、素敵な和菓子じゃない。問題ないわよ」


「私の作った和菓子が……ちょっと恥ずかしいけど、本当にインターネットで見られるようになるんですね」


「あなたの、努力の成果よ。自信持ちなさい」


 おばあちゃんは千尋の頭を撫でる。僕の前で撫でられるのが恥ずかしいのか、固まる千尋。


 僕は見なかったフリをして千尋の和菓子を賞賛する。


「とても美しいですよ。きっとこれからたくさんの人に見てもらえますし褒めてもらえますよ」


「健太さんがそう言ってくださると、自信が持てます」


 千尋が僕を見つめた。その瞳の中に、感謝と何か特別な想いが込められているような気がした。




「あら、お茶が冷めちゃってるわね。ちょっといれなおしてくるわね」


 おばあちゃんは、よっこらしょ、と立ち上がり台所へ向かう。僕と千尋の二人が茶の間に残される。


「今度は千尋さんがやってみてください」


 僕がパソコンを千尋の前に向けた。千尋の手がマウスに触れて、僕が教えた通りに操作を始める。


「こうでしょうか?」


 千尋の手が少し震えている。緊張しているのか、それとも僕が近くにいるからなのか。


「そうです、上手ですね」


 僕が千尋の手に軽く触れて、マウスの動かし方を教えた。千尋の手は小さくて温かかった。


「あ……」


 千尋が小さく息を呑んだ。二人の距離がとても近くなっている。


「健太さん……」


「はい?」


 千尋が僕を見上げた。その時、祖母が声をかけた。


「二人とも、お茶をいれたわよ」


 僕たちは慌てて距離を取った。千尋の頬が赤くなっているのを見て、僕も顔が熱くなった。


 お茶を飲みながら、千尋が恥ずかしそうに言った。


「私でも本当にできるでしょうか?」


「もちろんです。千尋さんは文章も上手だし、センスもいい。きっと素敵なサイトが作れますよ」


「健太さんがそう言ってくれると……」


 千尋が嬉しそうに微笑んだ。その笑顔を見ていると、僕の心がとても温かくなった。


 午後は、一緒にサイトの文章を考えた。


「お店の紹介文を書いてみてください」


 千尋が考えながらゆっくりと文字を打っていく。


「『明治から続く伝統の味を、心を込めてお作りしています』……どうでしょう?」


「千尋さんらしい、温かい文章ですね。とてもいいと思います」


「本当ですか?」


 千尋が嬉しそうに目を輝かせた。


「はい。読んでいて、水野屋の温かさが伝わってきます」


 作業を進めながら、僕は千尋との時間がとても心地良いことに気づいた。一緒に何かを作り上げていく喜び、千尋の成長を見守る嬉しさ、そして何より千尋と過ごす時間の特別さ。


 夕方になって、ついに水野屋のホームページが完成した。おばあちゃんの公開許可のお墨付きだ。


「できました!」


 千尋が感動して声を上げた。


「千尋さんが頑張ったからですよ」


「いえ、健太さんのおかげです」


 二人で画面を見つめていると、また距離が近くなった。今度は僕たちは離れなかった。


「じゃあ公開しますね」


「ど、ドキドキします」


 ノートパソコンの画面に千尋の顔が近づく。


 微笑ましく千尋を見守ると、僕は『公開』のボタンを押した。


「はい、公開できました」


「え、もうできたんですか?全世界から見えるんです?うわー!うわー!」


 興奮する千尋。


「このURLをスマホのブラウザに入力してみてください。見れるはずですから」


 千尋は、URLを打ち込む。まだドメインを取ってないので、mizunoya.comのようなURLにはなっておらず、GoogleサイトのURLのままだが、焦らない。


 かのザッカーバーグも言っていたではないか。

『Done is better than perfect』。

 完璧を目指すより、まずは終わらせろ。


 GoogleサイトのURLのままでも「まずは完成させて公開することが大事」なのだ。


 千尋のスマホにさっきまでノートパソコンで作っていたウェブサイトが確かに映っている。


「おばあちゃん!私達のウェブサイトがスマホでも見えたよ!ほら!」


 千尋はおばあちゃんに興奮しながらスマホをみせる。


「あらまあ、ほんとだ。すごいわねぇ」


 おばあちゃんも嬉しそうにスマホに移る水野屋のウェブサイトを見ていた。




 帰り際、千尋が見送りに出てきてくれた。


「健太さん、今日は本当にありがとうございました」


「こちらこそ。千尋さんと一緒だと、楽しくて時間があっという間でした」


「私も……とても楽しかったです」


 千尋が恥ずかしそうに微笑んだ。


「来週も来てくれますか?」


「もちろんです。次はSNSの対応をしましょう。調べてきたInstagramの使い方もお教えします」


 千尋の笑顔を見て、僕は思った。技術を教えることが目的だったはずなのに、いつの間にか千尋と過ごす時間そのものが大切になっている。


 千尋のことが好きだと気づいてから、こんな気持ちになることが増えた。


 家に帰る道すがら、僕の心は千尋のことでいっぱいだった。

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