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7時22分の電車で始まる恋  作者: ほしみん


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第14話 夏休み前の約束

これまで毎朝6:00の投稿をしていましたが、この話から諸般の事情で21:00投稿に切り替えました。

引き続き毎日投稿をキープしていきたいと思います。よろしくお願いします。

 七月に入り、期末テストが近づいてきた。


「健太、勉強してるか?」


 朝、山田が声をかけてきた。


「一応……でも古文が心配で」


「俺も英語が全然だめだ。夏休み前だからって気が緩むよな」


 確かに、夏休みのことを考えると勉強に集中できない。でも僕にとっては、夏休みは楽しみでもあり、同時に少し寂しいものでもあった。


 電車の中で、千尋が今日は『坊っちゃん』を読んでいた。期末テストが近いせいか、最近は文学作品を読むことが多い。


「もうすぐ夏休みですね」


 千尋が本から顔を上げて、少し寂しそうに言った。僕も同じ気持ちだった。この三ヶ月間、毎朝会うのが当たり前になっていたのに、それが一ヶ月以上もなくなるなんて。


「千尋さんがいないと、朝の電車がつまらなくなります」


 僕が正直に言うと、千尋の表情が少し明るくなった。


「私も同じです。健太さんと話すのが、毎朝の楽しみになっていたので」


 お互い、素直にそう言えるようになっていた。四ヶ月前、初めて会った時には想像もできなかった関係だった。あの時は千尋が読んでいる本を遠くから眺めているだけだったのに。


「軽井沢はいつから?」


「八月の第一週です。二週間ぐらい」


 千尋が答えながら、少し申し訳なさそうな表情をした。


「そうですか……長いですね」


 僕は少し考えてから、思い切って言った。実は昨日の夜から、ずっと考えていたことがあった。でも、こんなことを言っていいのか分からなくて迷っていた。

 でも勇気を振り絞っていおう。


「あの……もしよろしければ、連絡先を教えていただけませんか?」


 僕の声が少し震えていた。千尋が驚いたような顔をした。僕は慌てて付け加えた。


「本のことで、何か質問があるかもしれませんし……その……もし、軽井沢で星がきれいに見えたりしたら、写真を送っていただけたら……あ、でも迷惑でしたら……」


 僕がしどろもどろになっていると、千尋がクスッと笑った。


「はい」


 千尋が微笑んだ。その笑顔は、いつもより少し特別に見えた。


「私も、お聞きしようかと思っていました。でも、なんて切り出せばいいか分からなくて」


 お互い、スマホを取り出した。僕の手が少し震えていた。電車が揺れるせいだと思いたかったが、明らかに緊張のせいだった。


 千尋とLINEで連絡先を交換している間、心臓がドキドキしていた。千尋も少し頬を赤らめながら、僕の連絡先を登録していた。


 連絡先を交換する。それだけのことなのに、僕には特別な意味があるように感じられた。これで、夏休み中も千尋と繋がっていられる。電車で会えない日々も、完全に切れてしまうわけではない。


「夏休み中、メッセージ送っても大丈夫ですか?」


 僕が恐る恐る聞くと、千尋が首を振った。


「はい。むしろ、してください。私から送ってもいいですか?」


「もちろんです!」


 僕の返事が少し大きくなってしまい、周りの乗客が振り返った。僕は慌てて声を小さくした。


 千尋が笑った。いつもより少し、大人っぽい笑い方だった。


「桜ヶ丘駅、桜ヶ丘駅です」


 アナウンスが流れた。いつもより早く感じられた。


「それでは……」


「はい。あ、そうだ」


 僕が慌てて言った。


「今度、テスト勉強で分からないことがあったら、聞いてもいいですか?古文とか……」


「もちろんです。私も数学や物理で困ったら、健太さんに聞くかもしれません」


 その言葉に、僕の顔が真っ赤になった。


 ◆


 学校に着くと、僕の様子がおかしいことに山田がすぐ気づいた。


「健太、なんか今日は機嫌がすこぶるいいな。宝くじでも当たったか?」


「そんなわけないだろう」


 僕は苦笑いしたが、確かに気分は最高だった。スマホの中に千尋の連絡先が入っている。それだけで、なんだか世界が変わったような気がした。


 授業中も、僕は千尋に最初に送るメッセージの内容を考えていた。あまり軽すぎてもいけないし、堅すぎてもつまらない。どんな内容がいいだろうか。


 放課後、家に帰る途中で、僕のスマホが鳴った。Lineの着信音だった。


 心臓がドキッとした。まさか、もう千尋からメッセージが……?


 と思ったが山田だった。


 期待させるなよ。もう。

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