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7時22分の電車で始まる恋  作者: ほしみん


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第01話 春の終わりの電車で

 はじめまして。

この作品は高校生の淡い初恋を描いた青春恋愛小説です。


主人公・健太は毎朝7時22分の電車で通学していますが、

ある日、和菓子屋の娘・千尋と出会います。


電車での小さな出会いから始まる、

等身大の高校生の恋愛模様をお楽しみください。


※この作品は一人称視点(主人公目線)で書かれています。

※不定期更新予定です。

「健太、はやく起きなさい!もう起きないと、電車間に合わないわよ!」


 母の声で目が覚めた。時計を見ると6時40分。慌てて飛び起きる。


「やべ、寝坊だ」


 僕は急いで制服に着替えると、階段を駆け下りた。


「おはよう」


「おはよう。朝ごはん、急いで食べてちょうだい」


 母が味噌汁とおにぎりを用意してくれている。僕の通う県立田町高校へは電車で三十分。毎朝7時22分の電車に乗らないと遅刻してしまう。


「ごちそうさま。いってきます」


「いってらっしゃい」


 家を出ると、三月の朝の空気が頬に冷たかった。でも桜のつぼみが膨らんできているのを見て、もうすぐ春だと分かる。


 駅までの道のりを小走りで向かう。商店街のパン屋から、いい匂いがしていた。


「おはよう、健太くん」


 近所のおばさんに声をかけられて、慌てて返事をする。


「おはようございます」


 改札を通り、ホームに向かう。なんとか滑り込みセーフだ。


 7時22分発の電車は、相変わらず混んでいた。


 僕は二両編成の古い車両の端に立ち、窓の外を流れる桜並木を眺めた。高校一年生の終わりが近づいて、なんとなく心が浮き立つような、でも少し寂しいような複雑な気持ちだった。


 車内には通勤するサラリーマン、制服姿の高校生、買い物袋を持った主婦たち。みんな朝の時間に慣れた様子で電車に揺られている。


 県立田町高校は男子校だ。中学からずっと男子校だから、僕にとって電車で見かける女子高生は別世界の人のように感じられる。


(みんな朝から可愛いなぁ…でも話しかけるとか無理だよな)


 同じクラスの山田は僕と違い、女子と気兼ねなく話せる。


 羨ましい限りだ。


「お前もおどおどせずに女子と話せばいいのに」なんてよく言われる。


 正論ではあるのだけど、具体的にどうすればいいのか、さっぱりわからない。


 電車が「ガタン、ゴトン」と音を立てて進んでいく。窓の外の景色がゆっくりと流れていく。


「次は桜ヶ丘駅、桜ヶ丘駅です」


 車内アナウンスが流れて、僕は何気なく視線を巡らせた。そして、直ぐ側に立っている一人の少女に目が留まる。


 窓際に立って文庫本を読んでいる女の子。私立桜ヶ丘女子高の紺色の制服を着ている。ポニーテールにした髪が、電車の揺れに合わせて微かに揺れていた。


 僕は見とれていた。別に特別美人というわけではない。でも、朝の光の中で本を読む横顔が、なんとなく絵になっているような気がした。


 集中して活字を追っている表情。時々ページをめくる手つき。


(何読んでるんだろう。小説かな?参考書とかじゃなさそうだし…)


 僕は気になった。男子校にいると、女子高生がどんな本を好むのかは全然想像がつかない。


 その時、電車が大きく揺れた。


「うわっ」


 僕はバランスを崩し、彼女の近くによろめいた。その瞬間、ふわっと香りが漂った。シャンプーのようないい匂いがした。


「あ、すみません」


 僕は顔を赤くして謝った。こんな時、どんな顔をすればいいのかわからない。


 彼女は文庫本から顔を上げて、僕を見上げた。そして小さく首を振った。


「大丈夫です」


 短い返事だった。でも、なんだか透明感のあるきれいな声だった。僕は一瞬、どう返事をしていいか分からなくなった。


「あの…えーっと…」


 僕が何か言おうとした時、車内アナウンスが響いた。


「桜ヶ丘駅、桜ヶ丘駅です。ドアが開きます」


「あ」


 彼女は慌てたように文庫本を閉じて、電車を降りていった。僕は思わずその後ろ姿を見送った。


 ドアが閉まる直前、彼女がちらっと振り返った。僕と目が合った瞬間、小さく微笑んだ。


「ガタン」という音とともに、ドアが閉まった。


 電車が動き出してから、僕は自分の胸の音に気づいた。ドクドクと鳴っている。手のひらにも汗をかいていた。


(なんか…変な感じだ)


 あの匂いがまだ鼻に残っていた。そして、あの微笑みが忘れられない。


 別に何かすごいことが起きたわけではない。ただぶつかって謝っただけ。でも、なぜか心がざわついている。


 僕は窓ガラスに映る自分の顔を見た。少し赤くなっている。


 理由は分からない。説明もできない。でも、胸の奥が少しざわついていた。


「次は県立田町高校前、県立田町高校前です」


 電車を降りて高校に向かう。少し歩くと、県立田町高校の校門が見えてきた。いつもの通学路、いつもの朝。でも今日は何かが違った。


 僕はふと思った。


 明日の朝も、あの子は同じ電車に乗るのだろうか。


 そして、今度はもう少しちゃんと話せるだろうか。


(いや、でも何を話すんだよ…)


 自分でも何を期待しているのかわからなかった。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。


この物語は、誰もが経験するような小さな出会いから始まる

青春恋愛を描いていきたいと思っています。


健太と千尋の関係がこれからどう発展していくのか、

温かく見守っていただければ嬉しいです。


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