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華麗なる転倒

作者: 瀬川 秀子

 まだわたしがうら若き20才のときのこと。

その日のファッションは白のふわっとしたレースのついたカットソーに、セミミニのパウダーブルーのタックスカート。

ヒールの高い靴は嫌いなので、トップと合わせた、お気に入りの象牙色に小さな花柄のビーズ刺繍がしてあったローヒールパンプス。


 横浜の、当時ダイヤモンド地下街と呼ばれていたエリアは、デバ地下のように様々な洋菓子店や和菓子屋さんなど様々な食品を扱う店舗やスーパーが入っていた。

 そこで家に帰る前に頼まれた買い物をし、右手に母に頼まれた卵の10個パックの入った袋、左手に父の好物のイチゴジャムのビンの入った袋を持っていた。

もちろん他の買った品々も。


 夕刻とあってにぎわう惣菜売り場。コロッケを揚げながら売っているコーナーの前に差し掛かった。

こんな場所は見えないけれど、床に油がはねていることがある…。

そしておしゃれな売り場は、床がつるつるのタイルとか模造石張りが多い。


そう、もうお分かりだろう。

私はここで思い切り滑ったのである。


危機的状況にある脳は、時が静止したかのように一瞬で異常な思考スピードで走る。

滑った瞬間ひらめいたのは、


『まずい転ぶ! 割れ物を守らねば!』


ということだけだった。


気がつくと、私は床に腹ばいになっており、両手を高々と上げて上に向かって反らし、袋は床についてさえいなかった。

…多分脚もバランス上、上に反っていただろう。

そう、かのスーパーマンの飛翔ポーズそのもの。


…だがしかし、ショッピングモールの床の上では非常にマヌケな格好である。


夕刻、総菜売り場、横浜駅から近くとあれば人がいっぱい。周囲のざわめきが聞こえた。


「大丈夫ですか?」


揚げ物売り場の店員さんの心配そうな声が、頭上から降ってくる。


このときひそかに私のアタマに浮かんでいたのは、(転倒スコア10.0)。


…卵もジャムビンも、買ったものすべては無事。

本体にもむろんケガも痛みも。あざひとつさえもなし、ええ。


しかしながら、転倒しつついかにしてそのポーズに至ったのかは、いまだに謎のまま。

それは、当時の目撃者だけが知っているのだろう…

80年代の横浜です。近年駅だけ通りましたが東横線が当時高架だったのが地下2Fになっていて驚きました。

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― 新着の感想 ―
うんうん。 お疲れ様でした(笑 買った物も、傷もなく、ご無事で良かったです。 コロンは駅の階段を正座したまま上から滑り落ち、すねやひざを紫にした経験がありますよ(´・ω・`) 瀬川サマに傷がなくて…
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