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踊り

 ある日突然悪魔は人々の前に現れた。

「どうして悪魔が?」

「あっちへ行って」

「助けて!」

「悪魔め、出てけ!」

 国の人々は混乱し悪魔を追い払おうとしたが、罵倒しても、石を投げつけても悪魔はずっと同じ位置にいて微動だにしなかった。

 人々もどうすれば悪魔が追い出せるかわからず火をつけたり気の棒で叩いてみたり水をかけてみたりしたが何をしても悪魔は変わらず微動だにしなかった。

 しばらくの間、悪魔は何をされても反撃せず、ただじっと人々を観察していたので最初は悪魔を怖がって追い出そうとしていた人々も悪魔のことは気にしなくなった。

 この国では悪魔がそこにいるのが普通になっていった。


 ある時、これまた突然悪魔は踊り出した。不思議な音楽に合わせて、優雅に踊る姿はとても奇妙であった。

「なに?」

「どうして踊るの?」

 人々は再び混乱したが、ただ悪魔が踊るのを見つめることしかできなかった。

 悪魔はまるで魔法をかけるように人々を魅了していった。悪魔の踊りに魅了されて自ら踊り出す者もいたという。

 そして、いつのまにか悪魔の踊りが国のあちこちで踊られるようになっていた。

 やがて、悪魔は踊りで国を掌握していった。

 人々は不安と恐怖に怯える日々を送ることになった。

 悪魔は逆らう者は容赦なく次々に処刑した。人々は怖くて滅多に外に出なくなった。

 いつか悪魔が暴れ出したらこの国はなくなってしまうに違いない。でも国のみんなで戦っても悪魔に勝てそうにもなかった。

 悪魔がいつ暴れだすかわからない、そんな不安と恐怖を抱えたまま人々は過ごしていた。

「いつまで悪魔はいるんだろう……」

「この国はどうなってしまうんだろう」

「でも、踊ると楽しいんだよな」

「音楽が鳴ると体が動き出しちゃう」

 こうしてだんだんと悪魔の国は完成していった。

 しかし、人々の不安とは裏腹に悪魔が完全に国を支配した頃には国には平和が訪れたのであった。

 悪魔の国の人々は安心して暮らせるようになった。

 悪魔の踊り踊ってさえいれば、悪魔は人間を襲わないことがわかったのだ。

 そして、人々は気づいていなかったが悪魔が処刑していたのは悪魔に逆らっていた者ではなく悪人ばかりだったので、国から悪人がすっかり消えたのだった。

 悪魔の国の人々は悪魔の踊りに魅了されながら平和に毎日を過ごしていた。

 そして、いつしか悪魔の国では誰もが踊ることが当たり前になっていた。


 今日も悪魔の国の人々は不思議な音楽に合わせて悪魔のように優雅に楽しく踊るのであった。



2025

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― 新着の感想 ―
神のやって来た国は逆を辿るのかな。
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