表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/68

無感情の女王さまは攻略不可能!?3

「なぁ、サラ。確認したいことがあるんだけど」


サラは無表情のまま、じっと俺を見た。


「“私のそばを離れないこと”って、さっき言ってたよな?」


「言った」


「……それってさ、毎日ここに顔を出すってことでいいのか?」


俺がそう尋ねると、サラはほんのわずかに首をかしげた。


「全ての時間をだ。決まっているだろ」


「は?」


サラは、まるで当然だろうという顔で、淡々と続けた。


「常に、私のそばにいろ」


「……ちょ、まって常に!?」


思わず声が裏返る。


「寝る時も、メシの時も、着替えの時も!?」


「そうだ。常に、だ」


サラは変わらぬ無表情で、きっぱりと言い切った。


「お、おいおい、いくらなんでも距離感バグってねぇか!?」


後ろでリオが口元を押さえて笑いを堪え、レイは小さく頭を抱えた。


「アル……アルくん……完全に詰んでる……」


「規則には従え、アル」


レイの声が妙に真面目で、余計に焦る。


「ちょ、ちょっと待て、サラ。……例えばさ、俺が一人になりたい時とか、あるかもしれないじゃん?」


「なぜだ?」


サラが小さく瞬きをした。


「理由が理解できない。お前の行動を観察する。それが目的だ」


「そうだ。観察、開始」


「うわぁっ!!お、お前いつから!?」


空気のように、ミリがすぐそばに立っていた。


なんでこいつ、毎回気配ゼロで出てくんだよっ!!


「俺は実験体じゃねぇんだぞ……」


俺が震えた声で言うと、ミリはこくりと頷いた。


「認識している。だが、観察対象に変わりはない」


サラも何事もなかったかのように続けた。


「行動データの蓄積は必要だ」


こいつら絶対まともに俺を扱う気ねぇだろ!!


俺は頭を抱えたまま、必死で食い下がった。


「さ、さすがに俺にもプライバシーってもんが……!」


「その言葉の意味は理解している。しかし、無意味だ」


バッサリだった。


「うわぁ……終わっちゃったアルくん……」


リオが小声で呟き、レイが肩をすくめる。


でも――


サラはそんな俺たちを見ながら、ほんの少しだけ、口元を動かした気がした。


「……無理なら、今ここで拒否してもいい」


「え?」


「お前の意志に任せる。強制はしない」


サラの声は変わらず冷たいままだったけど――


その奥には、ほんのわずかな期待のようなものがあった。


もしかして……これ、試されてんのか?


心臓がドキドキとうるさく鳴る。


俺はゆっくりと息を吐いて、サラを真正面から見た。


「……拒否なんか、するわけねぇだろ」


「…………」


サラは無言で俺を見つめたあと、静かに一言だけつぶやいた。


「お前はやはり変な個体だな……」


それは、少しだけ、今までより――あたたかかった。


……ん?待てよ?


俺はふと気になることが頭をよぎった。


俺はサラの前からそそくさと離れると、こそこそとレイとリオのところに向かった。


顔を寄せて、小声で尋ねる。


「なぁなぁ、お前らも落とし役の時は女王に常に監視されてたってことか?」


レイは腕を組んだまま、面倒くさそうに答えた。


「そりゃ規則だからな」


「はぁぁぁ……マジかよ……」


目の前がちょっと暗くなる。


リオはふわっと自分の前髪を整えながら、にやりと笑った。


「懐かしいな〜、女王と過ごすあの時間」


「思ってねぇだろぉぉお!!」


即ツッコミを入れる俺。


リオはウインクまで決めて涼しい顔。


「バレた?まぁ、アルくんにはいい経験になるって!」


「経験ってレベルじゃねぇんだよ……!」


俺は頭を抱えながら、さらに気になっていたことをぶつけた。


「……着替えとか、風呂の時はどうすんだよ!?」


さすがに、そこは気になる。男として当然だろ!


リオがニヤニヤしながら答えようとしたその時――


「監視は続行する」


突然、すぐ背後から無機質な声が降ってきた。


「うわぁっ!!」


またしても、気配ゼロでミリがすぐそばに立っていた。


「なんでお前、毎回幽霊みたいに現れるんだよぉぉ!!」


俺がビビりまくるのをよそに、ミリは一切表情を変えずに言葉を続ける。


「プライバシーは一時的に制限される。だが、一定の領域には侵入しない」


「せ、制限……?」


「着替えと風呂は、距離を置いて監視する」


「お、おお……そ、そっか……!」


よかった……!マジで助かった……!


「でも、物理的に離れてるだけで、女王の美しい瞳は君を逃さないよ」


リオが得意げに追い打ちをかけてきた。


「やめろぉぉぉお!!!想像するだろぉぉぉお!!」


必死に頭を抱える俺を、ふとよぎったさらなる恐怖。


「……な、なあ、トイレの時は……?」


「監視は継続する」


ミリが即答した。


「や、やめろぉぉぉお!!!」


「最低限の距離は保つ」


レイが静かに補足した。


「そういう問題じゃねぇぇぇええ!!」


俺はもはや頭を抱えながらその場に崩れ落ちた。


ミリは無表情のまま、さらに淡々と告げる。


「異世界適応率、現時点でさらに低下傾向」


「いちいち分析すんなぁあああああ!!!」


リオはそんな俺を見下ろしながら、自分の髪をふわっと整えた。


「アルくん、焦りすぎ。もっと余裕持とう?僕みたいにね」


「誰が持てるかぁぁあああ!!」


サラはそんな俺たちのやり取りを、遠くからじっと見つめていた。


無表情のその茶色の瞳は――


ほんの、ほんの少しだけ、興味を持ったように揺れていた。


俺はぐしゃぐしゃに頭をかきむしりながら、叫んだ。


「……女王が俺のことを、常に監視してるっつーのは、わかったよ!」


サラは無表情でじっと俺を見ている。


レイは腕を組んで静かに見守り、ミリは……気配ゼロでいつの間にか近くに立っていた。


ミリのやつ、怖すぎる……


そんな中、リオはどこか余裕のある笑みを浮かべて、髪をふわっとかき上げていた。


「じゃあ――その逆は、どうなるんだよ……」


「逆って?」


答えるリオの前を通り過ぎ、俺はおそるおそる、サラの目の前まで歩いてきた。


「だから……!サラの着替えとか、風呂とか、ト……トイレとか……!」


口にした瞬間、自分で青ざめた。


「見れるわけねぇだろぉぉおおお!!」


自爆する俺を見て、リオがキラキラと自分を指さしながら口を開く。


「ちなみに僕だったら、全然オッケーだけどね?むしろご褒美!」


「黙れぇぇぇえええ!!」


思わず全力でツッコんだ。


「だってこの完璧な僕を見て、心が動かないなんて、あり得ないでしょ?女王様もさぞ目の保養だったはずだよ」


「実際、微塵も動かなかったじゃねぇかぁぁあ!!!」


俺が顔を抱えて絶叫する横で、レイは冷静に呟いた。


「不可侵領域だ。女王が許可しない限り、接近も禁止」


「そりゃそうだろ……!!よかったぁ……!」


俺は心底ホッとした。


だが――


「存在確認は必要だ」


ミリがさらりと追い打ちをかけてきた。


「な、なんだよ、存在確認って……」


「姿が見えない場合、異常と判断して、即時接近する」


「待て待て待て待て!!!」


「女王に異変が起きれば、即対応が必要。命令体系に基づく」


「だからってトイレとか風呂とかはダメだろぉぉぉおおお!!」


必死に叫ぶ俺を横目に、リオが涼しい顔で言った。


「まぁ、アルくんみたいな平凡な個体なら気にするかもだけど、僕レベルになるとね?逆に「むしろ見て」って感じ?」


「お前マジで黙ってろぉぉおお!!」


リオはナルシスト全開で、自分の横顔を指でなぞりながらうっとりしていた。


こいつ……本気で自分に酔ってやがる……!


「アル、受け入れるしかない」


レイが静かに言う。


「いやだぁぁあああ!!!」


俺は地面に突っ伏してジタバタ暴れた。


その時、サラがじっとこちらを見ていた。


表情は変わらない――でも、茶色の瞳の奥が、ほんの少しだけ、また揺れた気がした。


やっぱ……サラ、ちょっと楽しんでないか?


ドクン、と心臓が跳ねる。


あああ!!やっぱこの世界、心臓に悪ぃぃぃ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ