リオンとルシアの刻印準備?
「それでは、早速ギルドの紋章入れましょうか?どこか個別にお部屋あります?」
ライトが小首をかしげながら、丸っこい体をぽふっと揺らして尋ねる。その声色はあいかわらず丁寧で落ち着いていたが、姿とのギャップがすごい。
「あ、この部屋の中にあります。案内します」
サクラがスッと立ち上がると、部屋の奥にある扉を指差して先導した。
「ここ、好きに使ってください」
「ありがとうございます。さて、リオンさん、準備はよろしいですか?」
ライトがぴょこんと跳ねるようにして振り返りながら、リオンに優しく問いかける。
「もちろんだよ!僕のお尻も、いつでもオッケーって言ってるよ!」
「リオン……!」
ルシアが思わず立ち上がり、その隣に並ぶ。
「私も行きたい!」
「う、うん……行こう」
リオンは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに顔を赤くして、こくんと頷いた。
「ふふふ……いいですね。行きましょう、二人と一匹で」
ライトがくるりと回転しながら先導するように歩き出す。
「がんばってこいよ!」
俺が思わず声をかけると、リオンは振り返りながら親指を立ててウインク。
「もちろんさ!愛と信念とお尻に、すべてを刻んでくるよ!」
リオンが胸を張って叫ぶと、その隣でレイルが小さくため息をついた。
「……リオン、一応言っとくけど、麻酔しても普通に痛いぞ。俺は入れた時、足ガクガクだったからな」
「えぇっ!?麻酔しても!?」
「効いてたかどうか、正直微妙だった。まあ……俺はちゃんと処置してもらったけどな」
その言葉に、思い出したかのようにサクラがくすっと笑う。
「アルトの時、思い出すなぁ……」
「……確か、アルトさんは麻酔なしだったんですよね」
ユウラがぽつりと呟き、サクラも頷いた。
「ライトが麻酔するの忘れてたってやつな」
レイルがため息混じりに苦笑いを浮かべる。
「……ああ」
俺は軽く頭をかきながら答える。
「終わった後に“あっ”って言いやがって。あれが一番怖かったわ」
「忘れてたって……」
リオンが完全に青ざめた顔で俺を見る。
ライトはぴくっと耳を動かしながら、申し訳なさそうに前足を揃えてお辞儀をした。
「アルトさん、あの日は大変失礼しました。今はきちんと手順通りに進めておりますので、ご安心ください……多分……ふふふ」
「おい!ライトォォォ!!」
「だ、大丈夫かなぁぁ!?ぼ、僕……お尻に一生モノを刻むのにぃぃ!」
「リオン、怖いなら……今からでも場所、変える?」
ルシアが優しく声をかけると、リオンはきゅっと唇を引き結んで、真剣な顔になった。
「だ、ダメだ……決めたんだ。ルシアの前で誓ったんだから……お尻に刻んで、堂々と愛を語る!」
「リオン……うん、わかった。そばにいるから」
「僕は負けない!ルシアと一緒ならなんだって乗り越えられるんだ!」
リオンの声が部屋に響く。自分の頬をパンッと軽く叩いて、決意を固めるように目をぎゅっと閉じた。
「よし!行ってくるよ。行こう、ルシア」
リオンは振り返り、緊張気味に微笑みながら、ルシアにそっと手を差し出した。
ルシアは一瞬、戸惑うようにその手を見つめる――けど、すぐにふわっと笑って、迷いなくその手を取った。
「……うん。行こう、リオン」
その声には、しっかりとした強さがあった。
「では、お二人、行きましょうか」
ライトがくるりと振り返り、ふわふわと前を歩き出す。
「き、緊張してきた……でも、でも、ルシアが手を握ってくれてる……!これはもう勝ったようなもんだね……!」
「リオン、手……汗、すごいけど?」
「えっ!?あ、ご、ごめん!ちょっと今、愛と覚悟が手のひらから溢れてるだけだから!」
「ふふ、もう……変なこと言ってないで、ちゃんと歩いて」
ルシアがくすっと笑いながら肩を並べると、リオンはさらに顔を真っ赤に染めた。
「ぼ、僕、がんばる……!全力で刻印受けてくるよ!」
「その意気です、リオンさん。では……こちらへどうぞ」
ライトが扉の先に進むと、リオンとルシアもそのあとに続いていった。
――パタン。
扉が静かに閉まると、部屋に少しの静寂が戻った。
「……なんか、リオンって……」
サクラがぽつりとつぶやく。
「……想像以上に、真面目だよな」
レイルが珍しく真顔で言い、俺も思わず頷く。
「緊張とギャグのバランス、ギリギリで成立してるのがすごいです……」
ユウラも呆れたように笑って、肩をすくめた。
「でも、ルシアさんがいると、リオンさんがちょっとだけカッコよく見えるのは……気のせいでしょうか?」
「うん……それは否定できないかも」
サクラが静かに笑いながら、そっと俺の手を取った。
そのあたたかさに、俺は小さく息を吐いた。
「リオンならやり遂げるよ。だってあいつ、誰よりも一途だからさ」




