再!謎のコスプレ集団!?5
「レイとユラは、同じ日、同じ時刻にこの世界に来た。同じ世界から来た可能性は高い」
ぬるっと、ミリがソファの横から顔を出した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
俺が反射的に跳び上がる。
「ミリ、お前いつまでその空気キャラやってんだよぉぉぉ!!!いつも思うけど、それマジ心臓に悪いって!!!」
ミリは無言で、まばたき一つせず見つめてくる。ほんと、これがデフォかよ……
でもミリの一言に、場の空気が一変した。
ユラはぽかんと口を開けたまま、言葉が出てこない。
そして、レイも……沈黙。
な、なんだよ、この間は!
俺が目を泳がせていると――
「……僕だけ、ぼっちじゃ〜ん……」
リオの情けない声が、少し遠くから聞こえた。
「みんなカップルになっちゃってさぁ……いいなぁ……いいなぁ……」
ちょ、拗ねてるっっ!!!
ソファの影で膝抱えて、めっちゃしょんぼりしてるぅぅぅ!!!
俺は、このなんとも言えない空気を変えようと声を上げた。
「あ、ユラ。えっと……ユラはどこからこの世界に来たんだ?あと、できれば本名も教えてほしい」
ユラはぴくっと顔を上げて、ちょっと戸惑ったように笑った。
「私は……スレイズという場所から来ました。本名は……ユウラ・ヒューズです」
その瞬間。
「……スレイズ?」
レイが初めて、はっきりと顔をユラに向けた。
「うん……スレイズ」
ユラは少し驚いたように目を丸くしたが、すぐに小さく頷いた。
「……ちなみに、歳は?」
「え……?……誰の?」
「ユラ……いや、ユウラの年齢、いくつなのか聞いてるんだけど」
レイはそっぽを向いたままだったが、どこか落ち着かない様子で言葉を繋いだ。
耳……赤い。ばっちり見えてんぞ。
ユラはと言えば、完全にテンパってる。
「えっと……あの……18……」
「……なんだよ、タメかよ」
レイが、ふっと小さく息を漏らした。けど、それだけでまた無言。
お、おいおい……なんだよこの雰囲気!!
「レ、レイは……?」
「俺も、スレイズ。……本名は、レイル・シャーリア、18歳」
「レ、レイル……同い歳……」
ユラは顔を真っ赤にして、声を震わせながら、その名前を呟いた。
「日本年齢で約20歳といったところだな」
ぬるっと、また俺とサクラの間からミリが顔を出した。
「ぅわあああっ!!!おまっ……どっから出てきた!?」
「ずっとここにいた」
「いやそうだけどさ!?今そのタイミングじゃないだろ!?」
サクラがくすくす笑っている。
一方で、ユラはもう顔どころか耳まで真っ赤。チラッ、チラッとレイの方を見てはすぐ視線を逸らしてる。
レイはレイで、完全にそっぽ向いたまま。
なんなんだよこの2人……!
この空気にサクラが小声で俺に囁いた。
「……ねぇ、アルト。あの二人、きっと両想いだよね?」
「だよな!?あれでまだ本人たち、気づいてない感じがヤバい」
「ふふっ、青春って感じ」
「甘酸っぱさで俺の胃、もたねぇぇぇ!」
そしてそのとき、ぼそりと――
「……ユウラ」
レイがぽつりと呟いた。
「え……?」
ユラがゆっくり視線をレイに向ける。
「ずっとユラって呼んでたけど……ちゃんと、名前で呼んだ方がいいだろ」
「っ……」
その瞬間、ユラの瞳がきらきらと潤んだように輝いた。
「……レイル、ありがとう……」
「ふん……別に」
と、レイはつぶやいたまま視線を逸らす。
でも!その耳、真っ赤だからなレイ!!
俺は心の中で大声で叫んだ。
頼むから早く気づいてくれよ、お前ら似合いすぎんだよぉぉぉ!!!
「ギルド内ではお互い本名で呼ぶことになる。紛らわしいと思うけど、普段も少しずつ慣れていこう。できれば……みんな、本名で呼びあおう」
俺は静かに告げてから、ちらりとソファの隅に視線をやった。
そこには、まだ膝を抱えてしょんぼりしてる、ひとりの男――いや、拗ねリオがいた。
「おい、リオ」
「……ぐすん……僕には何もない……」
「お前、拗ねるのやめろ。ほら、こっち来いって」
俺はぐいっとリオの襟を掴んで引きずってきた。
「リオ。改めてだけどさ、本名と年齢、聞いてもいいか?」
「……言ってもいいけど、その代わり……」
「は?」
「ぼくのカップル登録の相手、アルくん一緒に探してくれる?」
「は?……今からぁ!?」
「だって、だってぇぇぇぇ!!僕だってぇぇぇぇ!!アルくぅぅぅん!!!」
「ぎゃああああっ!?やめろぉぉぉぉぉ!!!」
リオが俺の足に思いっきりしがみついて、全力で泣きついてくる。うわ、涙と鼻水がリアル……!
「リオ、出身地を言え」
ミリの冷静すぎる声が、部屋の空気をスパッと切った。
「マ、マットリーシュってとこだよ、アルくぅぅぅぅぅん!!!」
俺の足にしがみついたまま、泣き声で叫ぶリオ。
その瞬間――
「……!」
隣にいたサクラが、ぴくっと顔を上げる。
そして、すぐにミリと目を合わせた。
「ねぇ……マットリーシュって、リオと一緒に来てたあの子?」
こくり。
ミリは、何の感情も見せずに頷いた。
「え、え?あの子って誰の話……?」
リオがようやく顔を上げる。
「でも……あの子って、ここに来てすぐ、脱走しちゃったって……」
サクラの言葉に、ミリは淡々と続ける。
「私は、彼女の居場所を知っている」
「えっ……ほんとに!?」
リオが思わず叫ぶ。
「彼女は今、この街の花屋『ロマッシュ・ガーデン』の裏方として働いている。店主は特殊個体で構成されており、感情はない。その影響か、彼女自身の感情も日々、失われつつある」
「そ、そんな……!」
「……でも、リオなら。彼女を取り戻せる可能性があると、私は考えている」
その言葉に、リオの目が見開かれた。
「ただ、彼女とリオは面識がない」
「えっ……会ったことないのに?」
「それでも、彼女の心を引き戻せるかどうか――それは、リオ次第だ」
ミリはいつも通り無表情のまま、だが言葉に確かな重みを込めて続けた。
「同じ場所から来た者同士だからこそ、分かち合えることは多い。今、彼女にとってそれが大きな希望や救いになる可能性がある」
リオは少し俯き、唇を噛んだ。
「……そんな大事なこと……僕にできるかな……」
「大事なことだからこそ、お前に託したい」
「…………」
しばらく沈黙が続いた。
「……うん。会ってみたい。会って、話してみたい」
リオが、決意を込めた目で言った。
「だって……知らないからこそ、知りたいって思うじゃん。同じ場所から来た誰かが、ひとりきりで苦しんでるのに……見て見ぬふりなんて、僕にはできないよ」
「……ふふっ」サクラが思わず微笑んだ。
「それでこそリオだな」
俺もリオの肩を軽く叩いた。
「リオ、名前は?」
「……リオン・アミュラス。マットリーシュから来た、19歳」
その言葉に、ミリが小さく頷いた。
「……彼女の名は、ルア。花屋の裏手にある倉庫にいるはず。時間帯は早朝がいい。彼女一人で花の手入れをしている」
「……ルア、か。うん。わかった。行ってくる。ちゃんと、言葉で伝えるよ」
リオは、少し照れたように鼻をこすったあと、勢いよく拳を握った。
「恋になるかは……わかんないけどさ!でも!今の僕にできることなら、全部やってみる!!」
その言葉に、誰もが自然と微笑んだ。
たとえ初対面でも、知らない者同士でも、想いが届くなら、それはもう、立派な始まりだ。
出会いはどこからだって始まる。




