再!謎のコスプレ集団!?4
俺の言葉に、一瞬の沈黙が落ちる。
でもそれはすぐに、レイの低い声で破られた。
「……アル」
「ん?」
「その集会。単なる情報共有じゃないよな?」
俺はゆっくりと頷いた。
「……ああ。ギルドに入るってことは、戦う覚悟を持つってことでもある」
リオが、表情を引き締める。
「戦うって……やっぱり、個体と?」
「それもある。けど、時にはこの世界のルールとすら戦うことになるかもしれない」
「ルール……」
ユラが小さくつぶやく。
「例えば、感情を抑えることが正義だとされてるこの世界で、泣くとか、怒るとか、それすら許されない空気に抗うことも、戦いなんだ」
俺は、サクラの手をそっと握る。
「サクラが感情を持ったことで、この世界は少しだけ変わり始めた。だけど、それに反発する力も、きっと動き出してる」
「ルカ……か」
レイがぽつりと呟く。
「そう。あいつが今どう動いてるかはわからないけど……ギルドにとって、最大の障壁になることは間違いない」
「……それでも、やるんだな」
「ああ」
俺ははっきりと言った。
「俺はもう、見てるだけじゃいられねぇ。サラがこの世界の希望で、サラの心がこの国の未来を決めるなら……その隣で、俺は戦う。どんな形でもいいから、支える。それが俺の役目だと思ってるから」
静かに、けれど確かな熱を込めて伝えた。
すると――
「……なら、私も」
ユラが立ち上がった。
「守るって決めたの。だから、もう迷わない。……この手で、戦いたい」
「もちろん、俺もだ」
レイが立ち上がる。
「女王さまを守るって決めた時点で、僕たちはもう、戦いに足を突っ込んでる。なら、やるべきことはひとつだけ」
「ふふふ……仕方ないなー」
リオが両手を挙げて伸びをしながら、にっこり笑った。
「アルくんの熱い告白、久々に鳥肌立ったよ。はいはい、僕も付き合うよ。戦闘はちょっと苦手だけど、サポートなら任せて」
「……お前が一番向いてなさそうで、案外頼りになりそうってのが腹立つ」
「お褒めにあずかり光栄です~!」
リオが軽口を叩く中で、俺は心の中で静かに誓った。
その時だった。
サクラが、そっと俺の耳元に顔を寄せて、こっそり囁いた。
「ねぇ……アル。ユラのギルドの紋章……どうにかカップル登録で回避できないかな?レイと」
「……はっ!?」
一瞬で脳内警報フル鳴り。まさかのとんでも提案に、俺の心臓が跳ね上がった。
「さすがにそれは難しくね?というか、当人の意思っ……」
「でも、ユラ……きっと本当は怖いと思うの」
そんな風に真面目な顔で言われると、反論できないじゃねぇか……!
「おい、何を耳打ちしてる」
――っと、そこへ。
レイのクールな視線が、ズバァンと俺に突き刺さった。
「うわっ……!い、いや、なんでもないっ!」
俺が慌てて肩をすくめると、サクラも気まずそうに俺の肘を小突いてくる。
「あの……」
サクラが、ぽつりと話し始めた。
「実は、私……ギルドの紋章、刻んでないの」
一同が一斉に「えっ?」とざわつく。
「でも、カップル登録って制度があって。それをすれば、どちらか一人が紋章を刻めばいいの」
「それがどうしたんだ?」
レイの返しが一秒も待たずに返ってくる。真顔。鋭利。察しゼロ!
「だ、だからね……その……ユラ、女の子だし……できたら、守ってあげて欲しいなって……」
「……誰が?」
冷静すぎる……!レイ!まじで冷徹すぎるぅぅぅぅぅ!!
「じょ、女王さま……私は、大丈夫ですっ!」
ユラが慌てて一歩前に出る。頬を赤らめながらも、きゅっと拳を握る。
「私、ちゃんと戦えますし、紋章も……怖くないですから……!」
お、おぉ……!?なんか健気すぎて涙出そう……
その時――
「ユラちゃんなら、僕が登録してあげようか?」
ドヤァッ!と現れるリオ。片手を胸に、もう片方を宙へかざすナルシストポーズ!
「僕なら美と勇気と華を備えてるから、ギルド的にもバランス良さそうだし?」
「お前じゃねぇんだよ!!!」
即ツッコミが飛び出した俺。
「えー!?なになに、僕なら華やかでしょ?一緒に紋章を刻むなら、記念におしゃれなポーズで写真でも撮っ……」
「お前との写真なんて誰がいるんだぁぁぁ!!」
「……リオ、黙ってて」
サクラが小さくピシャリと言った。リオが「ふぇっ!?」と情けない声を出してしぼむ。
「……ま、まぁ、でも……」
再び沈黙が落ちる中、レイが小さく目を伏せた。
「そのカップル登録ってのは……別に、表面上だけでいいのか?」
ふいに、レイがぼそっと呟いた。
「え……?」
その一言に、場の空気が一瞬ぴたりと止まる。ユラが息をのんで、ゆっくりとレイの方を見る。
「……詳しくは分からないけど、手続きとしての登録だから、本気の恋人じゃなくても成立はするんじゃね?」
俺がそっとフォローを入れると、レイはほんのわずかだけ視線を横にそらしながら、低く言った。
「……まぁ、リオよりは、俺の方がユラには合ってると思うしな」
「……えっ……」
ユラの瞳が一気に揺れた。頬にみるみる赤みが差していく。
「レ、レイさま……それって、どういう……」
「そのレイさまって呼び方、やめろ」
レイの声は静かで淡々としているのに、どこか断ち切るような鋭さがあった。
「え……でも……その……では、なんと……?」
ユラが戸惑いながら小さな声で問い返す。
「レイでいい。それと、敬語もいらない」
「……!」
ユラが、息を飲むように一瞬止まり――それから、ゆっくりと小さく頷いた。
「……レ、レイ……わかった……です」
その名前を呼んだあと、すぐにユラは自分の膝の上でぎゅっと両手を握りしめた。耳まで真っ赤に染まっている。
一方、レイはと言えば、完全にそっぽを向いたままだが、首元までうっすらと赤い。
「……ふん」
それだけ言って、レイは黙り込んだ。
……いやいや、お前ら、初々しすぎるだろ!
なんだこの空気!こっちまで顔が熱くなってきたじゃねぇかぁぁぁ!!
サクラがこっそり俺の肘を突いてきた。
「……ねぇ、なんか、いいね。あのふたり」
「だな……思ってたよりピュアな展開すぎて、逆に動揺するわ」
俺がそうボソッと返すと、サクラもふっと笑って頷いた。
「一緒に俺も行って、オールにカップル登録も同時にできるか聞いてみるか」
俺がそう言うと、ユラが少し戸惑いながら口を開いた。
「ア……アルさま、登録って……ど、どうやってすれば……?」
「ああ、お互いの手と手を重ねて、端末の上に置くだけだと思うよ」
「え……?て、手と手……ですか?」
ユラが一気に顔を真っ赤にして固まる。目は泳ぎ、頬はどんどん火照っていく。
「……」
レイはというと、そっぽを向いたまま黙ってる。
おいおい、なんだこの温度差。
「なぁ、レイ?聞いてるよな?」
俺がツッコミを入れると――
「……聞いてる」
ぽつりと、そっけない返事だけ返ってきた。
「あの……レイさま、もし無理だったら……わ、私ひとりで紋章、刻みますので……」
ユラが小さく声を震わせながら言うと、その瞬間、レイがぴしゃりと返す。
「だから、その呼び方やめろって」
「えっ……す、すみません!」
「敬語も禁止」
「は、はい!」
「……ほら、また言った」
「……あっ……ご、ごめ……っ、ううん。……わかった、レイ……」
ユラが口を押さえて照れ笑いを浮かべる。
レイは無表情のまま、しかしほんの一瞬だけ視線を逸らした。……耳が赤い。
「手、重ねるだけだろ?別に……問題ない」
「えっ……っ、う、うん……!」
ユラは目を輝かせながらも、両手をぎゅっと自分の胸元に引き寄せて、顔を伏せる。
「ふん……」
レイはそれだけ言って、ソファに肘をついて再びそっぽを向いた。
でも……俺には見えたぞ。耳の赤み、増してる。
「……なんか、青春してるな……」俺が思わず呟くと、
「ア、アルさま!!」ユラが焦って振り返り、「……別に。どうでもいい」レイがつんと鼻を鳴らした。
その言い方、明らかに照れ隠しだろうが!!
「な、なんか……かわいい……」
サクラが隣で微笑みながら呟いた。
そして俺は、そっと心の中で思った。
……レイ、お前、そういうツンツン系なのか。
……いいぞ、もっとやれ。




