再!謎のコスプレ集団!?3
「予言にある……闇の支配者とか、影の王って知ってるか?」
俺は改めて、レイとリオに向かって問いかけた。
「何それ?」
リオが首をかしげる。
「ルカは、予言書をめったに見せないからな。俺も中身までは知らない」
レイも真剣な顔で答えた。
やっぱりか――
俺は一度だけ深く息を吐いて、覚悟を決めた。
「……おい、ミリ。本体のこと、話していいか?」
「問題ない」
ミリは無表情で、こくりと頷く。
「え、本体って……?」
リオがきょとんと目を丸くする。
「驚くかもしれないけど――ここにいるミリは偵察用。感情を持たない、分身なんだ」
「……えぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
リオが盛大に叫んだ。
レイも一瞬、眉を動かす。
「じゃあ……本物は?」
「ちゃんといる。本物のミリは感情を持って、俺たちの味方として動いてる」
「……しかも、さっき、会ってきたばっか」
リオが驚愕した顔でミリを見る。
「ちょ、ちょっと待って!?ミリが二人いるってこと!?もう一人のミリはどんな子!?かわいい!?」
「リオ、お前なぁぁ……ま、全然別人だったけどな」
俺は苦笑いする。
「あー!ズルいよぉぉぉ!!俺も会いたいぃぃぃ!!」
リオはソファの上でバタバタ暴れた。
「ま、とにかく。説明するより、会えばすぐわかるタイプだよ。あの人は」
ミリも黙って頷く。
そして、俺は話を戻した。
「本物のミリから聞いた。予言書にはな……“女王の心が動いた時、森の奥で眠る闇の支配者の鼓動が動き出す”って記されてたんだ」
「……」
レイの目が鋭く細められる。
「つまり、女王の感情が揺れることで、何かが目覚めるってわけか」
「そういうことだ」
俺は静かにうなずいた。
「しかも、予言書は固定されてない。内容がどんどん変わっていく。ページも増えるし、文字が勝手に浮かび上がるって話だ」
「それ、完全に……世界の変化に合わせて書き換わってるな」
レイが低く呟く。
「確かに、もともとアルくんの名前はなかったしねぇ」
リオがふにゃっと笑いながら続ける。
「でも、ある日突然、予言書にアルトって名前が加わってたもんなぁ」
「やっぱり……俺が、予言を変えた?」
声に出してみたけど、自分でも信じられなかった。
「そうかもな」
レイは短く答えた。
「でも、本物のミリはこう言ってた。予言に名前が載ったからって、未来が決まったわけじゃないって」
「へぇ~」リオが口笛を吹く。
「いいねぇ、運命すら殴り飛ばす系主人公!」
「お前、茶化すな……」
俺はジト目で睨む。
でもリオは悪びれずに、にっこにこ。
「だって、アルくんが来てから女王さま、めっちゃかわいくなったしね~?そりゃ世界も変わるわけだぁ」
「うるせぇぇぇぇ!!」
俺が真っ赤になりながら吠えると、リオはますます楽しそうに笑った。
「――でも」
レイが改めて、真剣な声を落とす。
「問題は、その闇の支配者と影の王ってやつだな」
「……ああ」
俺も顔を引き締めた。
「予言書には、こう書かれてた。“その者、女王の痛みに呼応して目覚める。深き森の奥、眠りの檻の中。名を忘れられし影の王”――」
「痛みに……呼応……」
ユラが小さく繰り返す。
「そう。サラが怒ったり、悲しんだり、絶望したり……負の感情を強く抱いたときに、何かが起きる」
「……そいつが、目覚める」
レイが低くまとめる。
俺はさらに続けた。
「本物のミリの話だと、影の王はこの世界に眠ってる。もしかしたら、誰かの中に潜んでる可能性もあるって」
その瞬間――
部屋の空気が、ピンと張り詰めた。
誰もが、無言でサクラを、俺を、そして互いを見た。
「もちろん、確証はない。でも……」
俺は拳を握りしめた。
「もしそうなら、ルカはそれを目覚めさせるために、動いてる」
レイもリオも、そしてミリもユラも、無言で頷いた。
「でな、ここからが本題なんだけど――」
「おおっと?まだあるの?」
リオが肩をすくめたが、俺は真剣な顔で続ける。
「ギルドって言葉、聞いたことあるか?」
レイが目を細めた。
「……感情を持つ者たちが、密かに集まってるっていう、噂程度の存在だな」
「そう。でも、それは事実だった」
俺はしっかりと頷いた。
「さっき本物のミリに会って、そのギルドに関する情報ももらった。彼女自身も、そのギルドの中で役職についてる」
「え……本物のミリが?」
ユラが小さく驚いた声を漏らす。
ミリは、無表情で頷く。
「私は偵察用。情報収集と観察が任務。本体がギルドの中核で活動している」
「つまり、ギルドには本物のミリがいるってことか」
レイが確認するように言った。
「そう。でも、彼女はギルドマスターじゃない。ギルマスは別にいて、その人物はミュノエーラにいる」
「ミュノエーラ……感情を持つ者が追放される場所……か」
「そう。その地下には、隠された街があるらしい。ギルドの本部はそこで動いてる」
「ほう……」
リオが興味深そうに唸る。
「ギルドはな、この世界に抗うためじゃない。真実を知って、未来を変えるために作られた組織だ。予言に縛られず、感情を抑圧せず、自由にこの世界で生きていくために」
そう言った時、隣にいたサクラが、そっと俺の袖を握った。
俺は続ける。
「俺たち……サラと俺は、もうギルドに加入してる」
「……!」
リオとユラが目を見開く。レイは静かに目を伏せたまま黙っている。
「だから……お前らにも聞きたい。もし、この世界の未来を変えたいって思うなら、俺たちと一緒に、ギルドに加わってくれ」
リオが一瞬だけ黙ったあと、にやっと笑って手を挙げた。
「アルくんが言うなら、もう断る理由ないよねー!OK!ラブと反逆のギルド、入隊希望です!」
「お前は軽すぎんだろ……」
俺は呆れながらも笑う。
「……俺もだ」
レイがぽつりと、静かに言った。
「このまま、予言の道をただ歩くだけなんて、もううんざりだ」
「ユラは……?」
「……私も」
ユラはぎゅっと拳を握って、頷いた。
「女王さまを守るためなら、どんな力でも使いたい。だから……一緒に、行かせてください」
その真っ直ぐな声に、俺はうなずいた。
「ありがとう。じゃあ――これで、全員だな」
「……ただ、ギルドに入るには――」
俺は言葉を区切って、目の前の仲間たちをゆっくりと見渡した。
「ギルドの紋章を、体のどこかに刻む必要がある」
ユラが小さく息をのむ。レイも微かに表情を引き締める。
「その紋章はな……ただの焼き印やタトゥーとは違う。青と黒が角度によって揺らぐような、不思議な輝きを放つんだ。まるで光を吸い込んでるような、静かな存在感がある」
「へぇ……かっこよさそう」リオが興味津々でつぶやく。
「けどそれ、どうやって刻むの?」
「街の『魔道書・タル』って店に行けば手続きできる。店主のオールって人が対応してくれる。見た目は物静かなんだけど……たまに悪ノリするタイプだから注意な」
「ふふっ、なんか嫌な予感しかしないけど」リオがにやつく。
「しかも、使うのは魔力に反応する特製インクだ。刻んだ後も、魔力が通るたびに紋章が淡く浮かび上がる。……ちょっと神秘的だぞ」
俺は、ふっと苦笑いを浮かべる。
「ちなみに「麻酔を忘れずに」って、絶っっ対伝えてくれ。俺はそれで、マジで地獄見たから」
「あ……さては、アルくん。お尻?」リオがニヤニヤしながら突っ込んでくる。
「図星なこと言うんじゃねぇぇぇ!!!」
「あ、図星だった?」
爆笑しながらリオがケラケラ笑う。
サクラとユラ、気まずそうに下を向いてるじゃねぇかぁぁぁ!
「でも……これはただ入るための儀式じゃなくて、この世界の真実に立ち向かう覚悟の証なんだ」
俺は真剣な眼差しで、一人一人に視線を向けた。
「明後日の夜、ギルドの集会がある。それまでに、できれば紋章を刻んできてくれ。あとは……自分の意志で決めてほしい」




