再!謎のコスプレ集団!?2
「みんな、本当に……ありがとう」
サクラが、かすかな声で、でも精一杯に言葉を紡ぐ。
その瞬間、レイも、リオも、ユラも、柔らかく頷いた。
「――さて、ここからはちょっと長い話になる」
俺は、軽く咳払いをしてから言った。
「みんな、ソファに座ってくれ。落ち着いて聞いてほしい」
「アル、話せ」
ぬるっとミリが顔を覗かせる。
「うわあああああっ!お前、いつの間にっ!」
「ずっといた」
「絶対バレない気配でいるなぁぁぁ!!!」
俺が半ば絶叫する中、みんなはそれぞれ大人数用ソファに腰を下ろしていく。
サクラも俺の隣にちょこんと座り、袖をぎゅっとつまんで俺を見上げた。
「……アル、頑張って」
その小さな声に、胸がぎゅっと熱くなる。
よし、やるしかねぇ。
みんなの視線が一斉に俺に集中する。
緊張で喉が乾く……でも、逃げるわけにはいかない。
「今日さ……サラと二人で、お好み焼き屋に行ってきたんだ」
リオがニヤニヤしながら手を振る。
「うんうん、デートだねぇ?」
「ち、違ぇよ!!そういうんじゃなくて!!」
俺は慌てて否定しながら、続けた。
「そこにいた店員のソウさんとリンさん……実は、二人とも俺と同じ日本からこの世界に来た人たちだったんだ」
「日本から……?」
レイの紫の瞳が、ふっと細まる。
「しかも、五年前からこのオルヴェリテにいるって聞いた」
一瞬、ソファの空気がピリッと緊張する。
「その二人から、色々な話を聞いたんだ。だから、みんなにも共有したくて……」
サクラが、そっと俺の手をぎゅっと握る。
その温もりに、俺は勇気をもらった。
「まず……この国、オルヴェリテは、最初から存在してたわけじゃないらしい」
「……存在してなかった?」
ユラが小さく声を漏らす。
俺は頷いた。
「もともとは、何もないただの大地だったらしい。人の姿も、建物も、自然も、空気すらも。全部、ゼロから作られたものなんだ」
「……そんな馬鹿な」
レイの低い声。
でも俺は、続けた。
「二人も最初は意味も分からず、建物を建てたり、土地を整えたり……国を作るためだけに動かされてたって聞いてる」
リオが口笛を吹く。
「すごい話だね。全く想像がつかないよ」
「それだけじゃない」
俺はぎゅっと拳を握る。
「ここに住んでる個体って呼ばれてる奴ら……本当は、感情を持たないように作られてる。心がない、命令だけを聞く存在だって」
「……個体」
レイが低く呟く。
「感情を持つ者……つまり、感情を表に出す者は、すぐに見つけられて……排除されるんだ。その追放先は、ミュノエーラって場所らしい」
「……!」
ミリの無表情が、かすかに動いた気がした。
「しかもな――」
俺は一瞬、言葉を飲み込む。
でも、逃げるわけにはいかない。
「この国の裏で動いてるのが、ルカだったんだ」
その名前を出した瞬間、部屋の空気がまたピリリと緊張した。
レイもリオもミリもユラも、無言で顔を引き締める。
「茶色いウェーブ髪に、黒いコート。……間違いない、あのルカだ」
サクラが小さく身を縮めるのを、俺はそっと支えた。
「ルカは、感情を持つ者たちに命じたんだ。『目立つな』『個体に合わせて生きろ』『従え』って」
「……つまり、感情を持った奴らは、ずっと縛られてきたってことか」
レイが低く言う。
「そうだ」
俺ははっきりと答えた。
俺は息を整えて、もう一度、みんなを見回した。
「それから――これも聞いたんだけどさ」
思い出しながら、慎重に言葉を選ぶ。
「オルヴェリテって国が完成したのは、たった二年前なんだ」
「……二年前?」
レイが眉をひそめる。
リオも少しだけ、からかい顔をひっこめて真剣な表情になった。
「この国、もっと昔からあったみたいな顔してるけど……全部、五年前から作られてきたもんなんだってさ。で、二年前――俺らが今いるこの城に、サラ、つまり女王が即位した……」
「その日が、この国の建国記念日にあたる」
「……そんな短期間で、ここまで発展するか?」
レイが、腕を組んで鋭い目で言う。
「だから、無理やり作らされたんだよ。人間じゃねぇ、感情を持たない個体たちを使って。感情を持つ者は監視されながら、命令だけ聞いて働かされて……」
「……」
サクラが、俺の袖をぎゅっと握る。
その小さな力が、俺に続きを促した。
「でな……街が完成しても、歪みはずっと残ってたらしい。自然も、個体たちも、何もかも、優しさがないまま。殺伐とした、モノクロの世界だったって……」
「……モノクロ、か」
リオが珍しく真剣な顔で呟く。
「建物があっても、人がいても……空っぽだったんだろうな」
「……ああ」
俺はうなずく。
「でも、それが変わったんだ。昨日から」
「昨日?」
レイが鋭く食いついた。
「そう。昨日から急に、街の空気が柔らかくなった。個体たちの暴走も止まった。まるで嵐が一晩で静まったみたいに、世界が穏やかになったって……ソウさんもリンさんも言ってた」
俺は、そっとサクラの方を見る。
サクラは、俯きながら、じっと聞いている。
「それってつまり……」
リオが口を開きかけた時――
「……女王さまの心が、変わったんだな」
レイが静かに言った。
全員が、息を飲んだ。
「……ああ」
俺は、小さく答える。
「この国は、女王の感情に支配されてる。だから、サラが、ほんの少しでも心を開いた瞬間――」
「世界が、優しくなった」
ユラが、ぽつりと呟いた。
「俺とリオでは、女王さまの心を開けなかったけどな」
レイが静かに呟いた。
するとすぐに――
「で!?アルくん、どんな甘いセリフや行動で女王さま落としたのっ?」
リオがキラッキラした顔でぐいっと前のめりになってきた。
「…………ぶほっ!!!」
あまりの勢いに、吹き出しそうになる俺。
サクラも顔を真っ赤にして、下を向いて目を逸らしてる。
そこへ――
「さっき、合体してた」
ミリがぽそりと無表情で爆弾投下。
「はぁぁぁぁぁぁ!?してねぇぇぇぇぇぇ!!」
俺は全力否定!!マジで声裏返った。
リオはニヤニヤしながら、さらに畳み掛けてくる。
「えー?違うのぉ?てっきり愛のハグハグタイムだったかとー!」
「誰がハグハグだぁぁぁ!!」
俺はソファをバンバン叩きながら叫ぶ。
リオは悪びれもせず、笑い転げながら続けた。
「じゃあ、ほら、今ここで実演してよ~!女王さま抱きしめるとこ見せて見せて~!」
「絶対やらねぇぇぇぇぇ!!!」
「ちぇー」
リオがむくれた顔をして、わざと大げさにため息をつく。
横でサクラが耳まで真っ赤にして、首を小さくすくめてた。
……リオの野郎、覚えてろよぉぉぉ!!
でも、レイがそんな俺を見ながら、ふっと優しく笑った。
「俺は、アルならできるって信じてた。予言にもあったしな」
その言葉に、リオも「うんうん」とやたら大きく頷き、
「さっすがアルくん!ラブパワー最強!」
と、また茶化してくる
「リオ、うっせぇよ」
俺は真っ赤な顔でボソッと返した。
それでもリオは、にっこにこで続ける。
「いやー、女王さま攻略成功とか、マジで歴史に名を刻むレベルだよね!」
「……マジ、うるせぇ」
心臓バクバクで、俺はもうそれしか言えなかった。




