再!謎のコスプレ集団!?
サクラの「信じたい」という言葉に、俺はぎゅっと胸を掴まれる思いだった。
そして――
「あ、アルト」
サクラがふと思い出したように顔を上げた。
「ん?」
「……ユラも、誘ったらダメかな?」
「……ユラ?」
俺は目をぱちくりさせた。
「うん。実はね……ユラ、レイのこと、ずっと気になってるの」
「は、はぁぁぁ!?」
思わず声が裏返る。
あのクールで恋愛興味なさそうなレイに!?
確かに顔はイケメンだけど……性格、全然甘くねぇぇぇ!!!
「……マジで?」
「うん……ずっと、レイのこと、目で追ってた」
「……えぇぇぇ……」
想像できねぇぇぇ!!!
だが、横からミリが無表情で補足する。
「ユラは、サクラの世話係だった」
「……世話係?」
「サクラの身の回りをずっと支えてきた存在だ」
「じゃあ、別に敵とかってわけじゃないんだな?」
「ない」
ミリは即答した。
そっか……なら、確かに……誘うのも、アリかもな。
サクラも不安そうに、俺の顔を見上げる。
「……ダメ、かな?」
「ダメなわけないだろ」
俺はすぐに微笑み返した。
「サクラがそうしたいなら、いいよ」
サクラはパァァッと顔を輝かせた。
……かわいすぎてまた心臓撃ち抜かれるとこだった。
「じゃあ、今からレイたち呼ぶぞ」
俺がそう言った時――
ミリが、ふと無表情で口を開いた。
「……アルト。かわいいうさぎを見られてもいいのか?」
「……え?」
何言ってんだ――って、一瞬思ったけど。
はっっっ!!!
俺の目がサクラに向かう。
そこには、ピンクのモコモコうさ耳ルームウェア姿で、ほわっと笑うサクラ。
……やべぇぇぇ!!!
「ダメだ!!絶対ダメだぁぁぁ!!!」
俺は即座に叫んだ。
「さ、サクラっ!!み、みみみ、みんな来る前に着替えろ!!!」
「う、うんっ!わ、私も、そう思ってた……!!」
サクラも顔を真っ赤にしてバタバタし始める。
「……でも」
サクラは、小さく立ち止まった。
「い、いきなり、この……普通の話し方の私を見たら……みんな、戸惑うよね……?」
サクラが、モジモジと指を絡めながら言う。
「うーん……俺から先に説明しようか?」
「……敬語とか、もういらねぇだろ?」
「う、うん……!」
「だから、俺がちゃんとみんなに話すから――」
「……ちがう」
サクラは、ぎゅっと拳を握った。
「わ、私、自分で説明する」
その声は、小さくても、ちゃんと震えずに届いた。
……サクラ……必死に、自分を変えようとしてるんだ。
そんなサクラを、俺は、ぎゅっと胸の中で抱きしめたくなるくらい、誇らしく思った。
「わかった」
俺はそっと微笑んで頷いた。
ミリも静かに言う。
「サクラに従う」
サクラは顔を少し赤くしながらも、きゅっと頷いた。
「と、とりあえず、着替えてくるね」
そう告げると、バタバタッと早足で奥の部屋へ駆け込んでいった。
そして数分後――
そっと扉が開き、サクラが一歩、二歩とゆっくり歩いてくる。
「……な、なんか……今着ると、慣れないな……」
小さな声でそう呟きながら……
俺は思わず、息を飲んだ。
薄いイエローのドレスに、白いハイヒール。
ふわっと軽い素材が、動くたびに柔らかく揺れる。
肩が少しだけ覗くデザインも、サクラの透明感を引き立てていた。
普段の「女王さま」の荘厳な装いとは違う、もっと優しくて、もっと彼女らしい、そんな姿だった。
「……めちゃくちゃ、似合ってる」
気づけば、自然に声が漏れていた。
「サクラ、合格だ」
ミリもコクコク頷いている。
「ほんと?……へ、変じゃない?」
サクラは恥ずかしそうに、指先でドレスの裾をつまみながら、小さくくるっと回ってみせる。
その仕草が、もうかわいすぎて、俺の心臓はまたしても破裂寸前。
「……バカ、変なわけないだろ」
思わず、真っ赤な顔で言い返した。
サクラも、耳まで真っ赤に染めながら、はにかんだ笑顔を見せる。
――ドキドキドキドキ。
やばい……この空気、甘すぎる。
「じゃ、じゃあ……呼ぼうか、みんな」
なんとか気持ちを切り替えるために、俺はスマホを手に取った。
「うん!」
サクラも、緊張しながら頷く。
そして――
「アルくん、呼んだー?」
最初に聞こえたのは、やっぱりリオの軽い声だった。
「リオ、わざわざありがとな」
俺はドアを開けながら答えた。
そこに立っていたリオは、相変わらずにっこにこの笑顔で手をひらひら振っていた。
「なになに~?女王さまが急に呼び出しなんて、もしやご褒美タイム!?」
「違ぇよ!!!」
俺は即ツッコんだ。
そのすぐ後ろから、レイが顔を覗かせる。
「女王さま。何かご用でしょうか」
レイはいつものクールな顔のまま、静かに一礼した。
その態度に、サクラがちょっとだけ肩を震わせる。
そして最後に――
「女王さま……お呼びでしょうか。ユラでございます」
ユラが、緊張した面持ちできっちりと礼をした。
まっすぐな立ち姿。でも、ちらっとレイを見た瞬間、頬がほんのり赤く染まるのを俺は見逃さなかった。
……おいおい、わかりやすっ!
「よし、みんな揃ったな」
俺は軽く咳払いして、部屋の中へ手招きした。
リオはぴょんっと軽やかに、レイは静かに、ユラは背筋をぴんと伸ばしたまま、おずおずと入ってくる。
「サラ、準備はいいか?」
俺は、サクラに小声で確認した。
サクラは、緊張でぎゅっとドレスの裾を握りながらも、小さく頷いた。
顔は赤いけど、瞳だけは強く、真っ直ぐだった。
「みんな……」
サクラが、小さな声で口を開く。
一斉に、レイもリオもユラも、サクラに向き直った。
「私……今まで、女王としてしか、みんなに接してこなかった」
少し震えた声――
リオが軽く眉を上げる。
レイはじっとサクラを見つめる。
ユラは、緊張でぎゅっと手を握りしめている。
「でも……本当は、もっと……普通にみんなと話したいって思ってる」
サクラは、勇気を振り絞るように言った。
「だから……これからは、敬語じゃなくてもいい。少しずつ、もっと自然に接していきたい」
ぺこりと、小さく頭を下げた。
緊張で膝が震えそうになっているのが、俺にもわかる。
――沈黙。重たい空気が流れる。
やばい……!と俺が心臓バクバクしてたそのとき――
「……へぇー?」
最初に口火を切ったのはリオだった。
にやりと笑いながら、サクラの前にぴょんっと進み出る。
「女王さまが、そう仰るなら!」
「えっ……?」
サクラがびっくりして顔を上げる。
「俺はぜんっぜん大歓迎っ!いやむしろ女王さまが砕けた話し方してくれるとか、激レアすぎるから超楽しみなんだけど!!」
リオはにかっと笑った。
「……別に問題ない」
次にレイが静かに口を開いた。
「女王さまが選ばれる道なら、従うまでだ」
その言葉に、サクラの肩がふるふる震えた。
そして――
「……女王さまが、幸せそうなら……私はそれだけで……」
ユラが、泣きそうな顔で、震える声を絞り出した。
「……ユラ……」
サクラが小さく呟く。
その瞳は、今にも涙がこぼれそうだった。
俺は、そっとサクラの手を握った。
サクラが驚いたように俺を見る。
でも俺は、ただ微笑んだ。
『大丈夫。お前は、もうちゃんと受け入れられてる』
言葉にしなくても、きっと伝わった。
サクラは小さく、小さく、微笑み返してくれた。




