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異世界に来た途端まさかの展開なんだが!?2

「あ、そういえば……レイ、お前らの目的はそもそもなんだったんだ?お前とリオ、それにミリも……もともとはこの世界の住人じゃないんだろ?」


問いかけると、レイは少し黙って俺を見つめた。


紫の瞳に、何かを測るような光が浮かんでいる。


「……俺とリオは、お前と同じだ。別の世界から来た。だけど、何をしてもダメだった。今はこの街を巡回して、変質した個体――つまり変質個体を倒している。女王の命でな」


「……変質した人間って、モンスターとかそういうのか?」


そう言った瞬間、レイが静かに視線を向けた。


「人間じゃない。この世界では個体と呼ぶ」


「は?」


「この世界には人間という概念は存在しない。すべての存在は個体として定義されてる。名前も、立場も、すべてこの枠の中だ」


「なるほど……言葉まで違うのか」


「些細なことに聞こえるかもしれないが、言葉はこの世界のルールと深く関係してる。人間という単語を使うこと自体、この世界では浮く」


俺は一瞬戸惑いながらも、胸の奥がザワついた。


「……じゃあミリは?お前とリオとは違うんだよな?」


「ああ。ミリはこの世界で生まれた個体。俺たちよりずっと昔からこの世界にいて、女王に近い存在の一人だ。だが今は、俺たちと同じ側に立ってる」


「女王の近く……か。やっぱり、その女王ってのがカギなんだな」


レイは少しだけ目を細めた。


「すべては、女王の心次第だ。この世界は、女王の想いに支配されている。だからこそ、俺たちは女王を落とすっていう、前代未聞の目的に挑もうとしてる」


「……俺が、その役を?」


「そうだ、アル。お前にしかできない。だからこそ、ここに来てもらった」


俺の鼓動が、また少し速くなる。


世界の支配者を――落とす。


そんな物語、俺の人生にあるはずなかったのに。


「お前ら……そんな危険な中で、ずっと動いてたのかよ」


「女王を落とせる唯一の鍵が、お前だと知るまではな」


「……でも、なんでそんなに女王を落とすことにこだわってんだ?普通に女王を倒すとかじゃダメなのかよ」


レイはゆっくりと首を横に振った。


「彼女は、この世界の核だ。倒せば、この世界そのものが崩壊する。だけど、心を動かし、感情を与えることができれば、世界は変わる。命を繋いだまま、新しい形へと」


「……そんな大事な役目、いきなり渡されても困るっつーの……」


「それでも、俺たちは信じてる。お前なら、できるって」


「……信じてる、ね」


ドアの向こうから、小さく笑い声が聞こえた。振り向くと、廊下に立っていたリオが、優雅に笑いながら言った。


「いやぁ、青春してるねぇ。これが例のドキドキってやつかな?」


「うるせぇよ、リオ!」


「ま、レイにここまで言わせたアルくんはすごいよ。あのクール男が、ここまで熱くなるなんてね?」


「別に熱くなってはいない。事実を伝えただけだ」


「はいはい。そろそろ時間もいいし、次の行動に移ろっか?」


レイは俺を見たまま、最後にこう言った。


「……今のうちに、心を決めておけ。次に会うのは――ルカだからな」


「ルカ……?」


「女王の、直属の部下だ。容赦はしないぞ」


一気に鼓動が早まった。


「よし!アルくん。早いところ、ルカのところに行ってみようか」


リオが得意げに言った。


「そうだな。そろそろ会わせてもいい頃かもな」と、レイも同意する。


「ルカってどんな奴なんだ?」


俺は眉をひそめながら聞く。


レイは腕を組み、少し間を置いてから答えた。


「ルカは女王から絶対の信頼を得ている。どんな任務も完璧にこなす、感情を捨てたような存在だ」


「じゃあ、そのルカが女王を落とせばいいんじゃね?」


俺が突っ込むと、リオがブッ!と吹き出した。


「いやいや、アルくん。ルカは女性だし、そもそもそういう感情で動いてないんだよ。」


気づけば、リオに腕を引かれていた。


「行こう。ルカが待ってる」


レイも背後に立ち、無言でうなずく。俺は仕方なく足を進めた。


廊下を抜け、別室の前に立った。


扉は重厚な金属製で、まるで隔離されているかのような空気を纏っていた。


「……なあ、ほんとに俺、行く必要あるのか?」


「あるさ」とレイが即答した。「これは、お前のはじまりだから」


緊張で喉が渇く。心臓がやけにうるさい。


「ルカか……怖くないよな?」


「……それは会ってみないと分からないね」


リオが意味深に笑った。


レイが扉に手をかける。


「覚悟はいいか?」


「いや、まだできてねぇ……けど、行くしかないんだろ?」


「その通り」とレイが頷き、静かに扉を押し開けた——


「ルカ、イチノセ・アルトを連れてきた」


レイがいつもの無表情で淡々と告げた。


「そうか、見つかったか」


低く、感情の欠片もない声が返ってくる。


部屋の奥、背中を向けて一人座っていたその人物——ルカは、ゆっくりと立ち上がると、こちらに振り返った。


茶色の髪は肩の下あたりまで波打つようなウェーブがかかっていて、瞳の色は薄く透けるような灰。まるで感情を拒んでいるかのような目をしていた。


着ているのは、俺たちと同じグレーの制服に黒い長めのカーディガン、黒いロングブーツ。俺たちの雰囲気とは全く違い、背筋がピンと伸びていて、隙がない。動きの一つ一つに、無駄がなかった。


「おい、こっちに来い」


ルカが顎を少しだけしゃくって、俺を呼ぶ。


「は?なんでお前に指図されなきゃいけねぇんだよ」


俺は眉をひそめて睨み返す。心臓がバクバクと鳴る。


「用があるなら、お前がこっちに来いよ」


リオが「おっと」と笑いをかみ殺し、レイは少しだけ視線を横にずらした。


ルカは表情を変えないまま、一歩だけこちらへ足を踏み出した。


「お前はアルト。間違いないな」


「……ああ。正確には、イチノセ・アルト。だけど今はアルって呼ばれてる」


「くだらない名だな。記録に残しておく」


淡々と答えるルカ。まるで事務処理のような冷たさ。


「おい、失礼だろそれ……!」


俺がムッとして言い返すと、ルカの目がほんの一瞬だけ細くなったように見えた。


「感情を持ち込むな。それが、この場所の規律だ」


「だったら、なおさら俺は合わねぇな」


俺は睨み返す。


「ふむ。面白い」


ルカは一歩、また一歩と俺に近づく。気づけば、距離はほとんどない。睫毛の長さが分かるくらいだ。


「な、なんだよ……」


「この目。女王に似ている」


ぽつりと、ルカが言った。


「は?女王に?」


「感情を抱く個体は、最も危険で、最も変化を生む。君がどう作用するか……見てみたい」


息を呑んだ。なぜかこの瞬間、俺はこのルカって女が、ただの部下なんかじゃないことを直感的に悟った。


「ようこそ、オルヴェリテへ。アル」


その声だけが、妙に静かに響いた。

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