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女王さまと初外出!?6

しばらくすると、店員さんが再びテーブルにやってきた。


手には小皿と、ソース、マヨネーズ、それから魚節の入った容器がある。


「すごい。お上手ですね!きれいに焼けてますよ!」


「魚節もかけると香りが立って、もっと美味しくなりますよ」


にこやかにそう言って、店員さんはそっと調味料を置いていった。


「……ソース?マヨネーズ?」


サクラがボトルを手に取り、首をかしげる。


「これこれ!お好み焼きには欠かせない調味料!」


「見てて。俺がやるから、真似してみて」


俺はハケでソースを丁寧に表面に塗ったあと、マヨネーズのボトルを握りしめ、一筆一筆、日本語で書いた。


……“サクラ”


そして――


……“大好きだ”


わかるはずない。文字はオルヴェリテのものじゃないし。


でも……俺が今、サクラに一番伝えたい言葉だった。


「なんて書いたんだ?」


「ひ、秘密!!」


「……ハートは書かないのか?」


「っ……書くわ!!」


俺は慌てて、“大好きだ”の後に、大きなハートを描き足した。

ソースの湯気で、余計に顔が熱くなってる気がする。


「はい!じゃ、次はサクラの番!」


サクラは少し緊張した様子で、ハケを持ち、ぎこちない手つきでソースを塗り始めた。


「……むずかしいな」


「大丈夫、ゆっくりやればできるよ」


次に手にしたマヨネーズで、サクラは何かを描き始める。


出来上がったのは、耳が大きくて丸いフォルムの、動物っぽい何か。


「それ……う、うさぎ?」


「うさぎ……たぶん」


サクラは少しだけ頬を赤らめながら、頷いた。


「サクラは……ハートは描かないのかよ?」


「……え?」


「いや、その、俺だけハートって……なんか……恥ずかしいだろ?」


サクラは一瞬きょとんとして――そっと視線をそらした。


「……恥ずかしい」


「な、な、なんだよそれぇぇえええ!!!」


俺の顔は火が出そうなくらい熱かった。


もう……かわいすぎだろ、この女王……!!


ちょうどそのとき、後ろを通りかかった店員さんが、チラッと俺の描いたお好み焼きを見てふっと笑った。


「その気持ち、伝わるといいですね」


「……えっ、えっ!?文字、読めるんですか!?!?」


店員さんはコクンと大きく頷いた。


「……15時から準備時間で店が少し落ち着くので、よかったら、少しお話しませんか?」


「え……あ、はい、ぜひ……!」


すると、サクラが隣で小さく首をかしげた。


「アルト……?」


「サクラ、俺、ちょっとお店の人と話してみたいんだけど……いいか?」


サクラは少し驚いたように瞬きをして、すぐに、ふわっと笑った。


「もちろん。……アルトがしたいことなら、私は応援する」


……あぁもう!この優しさに、何回惚れさせられればいいんだよ……!


俺は胸が苦しくなるほどの甘酸っぱさを噛み締めながら、そっとサクラに言った。


「ありがとな、サクラ」


サクラはきょとんとしたまま、また笑った。


そして――


ふぅふぅ……パクリ!


「うんめぇぇぇぇぇ!!」


俺は思わず叫んだ。


まじソース!まじマヨ!魚節、まんまあのかつお節じゃねぇか!


これだよこれ……俺のふるさとの味!!


悶絶級のうまさに、思わず目を閉じて震える。


「サクラ、熱いから気をつけて食べろよ?」


「わかった、初めてのお好み焼きだ」


ふぅふぅ……


慎重に息を吹きかけるサクラ。


その口元が、近くて、柔らかそうで、かわいくて――


や、やべぇ……その仕草、気絶しそう……


ぱくっ。


サクラは小さくお好み焼きを口に運び、もぐもぐと噛んだ。


「……っ!」


目がぱっちりと開き、サクラの瞳がキラキラ輝きだした。


思わず見惚れるほど、純粋な表情。


「これ……すごく美味しい」


「サクラの口に合ってよかったぁ……!!」


「アルト……こんな美味しいものが存在してたなんてビックリだ……」


サクラは感動したように何度も小さく頷く。


「後で……お好み焼きの材料、買いに行こう」


「また……一緒に作って、食べたい」


その言葉に、俺の心臓がギュインと跳ねた。


「な、なんだか……不思議な気持ちがする」


「不思議?」


「うん……理由はないんだけど、どこか懐かしい感じがする……」


――懐かしい?


もしかして……サクラの記憶の中に、ほんの少しだけでも日本があるのか……?


言葉にならない気持ちが胸を満たす。


「サクラの作ったやつ、一口食べていい?」


「うん。アルトのも食べたい」


俺は、自分のハートを描いた部分を切って、サクラの小皿にのせる。

サクラも、うさぎの耳の部分をそっと俺の皿にくれた。


ぱくっ。


「……!」


「悔しい。アルトの方が……美味しい」


サクラが、ほんの少しだけ唇を尖らせて、拗ねたような顔をする。


「えー?俺は、サクラの方が美味しいけど?」


「……本当?」


「うん、本当!」


「アルト、ハートの部分くれたんだな」


ふとサクラが、少し照れたような顔でつぶやいた。


「……っ!」


思わず目をそらしてしまった俺の顔は、たぶん真っ赤だ。


サクラはふにゃっと微笑んで、そのまま、また一口、俺が作ったお好み焼きを頬張った。


その横顔が、信じられないくらい愛おしくて――


もうダメだ俺……完全に落ちてる。


俺は、自分の胸の高鳴りをどうにか抑えながら、またひとくち、サクラのうさぎを食べた。


うん、やっぱサクラの方が、何倍も美味い。


「うわー……まじでうまかった……!」


「ごちそうさまでした!」


俺は満足げにお腹をさすりながら椅子から立ち上がった。


「うん。すごく美味しかった」


サクラも微笑みを浮かべて頷く。


「15時までまだ時間があるな。サクラ、行きたいとこある?」


「さっき通った服屋に、ちょっと行ってみたい」


「え!?……あんなに部屋に服あんのに!?」


その瞬間、サクラがぷいっと横を向いて


「……そういうことじゃない」


むすっと頬をふくらませた。


ちょ、待て……その反応、反則だろ……!


「ご、ごめんって!そういうつもりじゃなかった!行こ、な?」


そう言いながら、俺はサクラの手をそっと握りつつも少し強引に握った。


「ア、アルト……」


不意をつかれたような小さな声が、後ろから聞こえてくる。


や、やば……今の声……かわいすぎんだろ。


「はい、到着ー!」


たどり着いたのは、白と木のナチュラルな雰囲気の可愛い服屋だった。


中を覗き込むと、部屋にあった服とはまったく違うテイスト。


「……たしかに、ここ雰囲気いいな。サクラっぽい」


俺は店内を見渡しながら思わずそう呟いてた。


ふと、視界の先に――


うさ耳付きの、淡いピンクのモコモコルームウェア。


しかも、短パン。


うわ……ちょ、これ……超絶かわいい。


頭の中でサクラがそれを着た姿を想像してしまい、思考停止。


そのとき――


「アルト?」


「……」


「アールト」


「っ!!ご、ごめん、え!?なんだった?」


サクラが白いルームウェアと、薄いブルーのワンピースを両手に持ってこっちを見つめてた。


「どっちが似合うと思う?」


「え?あ……それ?え?」


頭の脳内はうさ耳ルームウェアのサクラで埋め尽くされていた。


俺のその様子を見ていたサクラは、すぐに察したのか


「……アルトは、あの壁にかかってるルームウェアが一番好きそうだな」


「なっ……な、何言ってんだよ!そ、そんなわけ――」


「目、逸らした」


「うぐっ……!」


「顔に出てる」


「で、出てないっ!」


「……じゃあ、あれ買う」


「え!?ちょ、ちょっと待て、それ俺が――!」


「買う?」


「買う!!!」


俺の即答に、サクラはふっと笑った。


「……ありがと、アルト」


その笑顔がやけに優しくて、思わずドキッとしてしまう。


……だめだ、まじでかわいすぎて心臓もたないって……


「サクラ、でも待て……あのルームウェア、短パンなんだぞ……いいのか?」


勇気を振り絞って言葉にした瞬間、俺の鼓動は跳ね上がった。


「……そんなこと気にしてたのか?」


サクラは不思議そうに首を傾げた後、ふわっと笑った。


「私はアルトにしか見せない」


「っ……!」


や、やべぇ……それ、破壊力やばすぎんだろ……!!


「いや、そ、そういうことじゃなくて……その……」


「……私のことを考えて聞いてくれてるんだろう?」


ふいにサクラが真っ直ぐ俺を見つめる。


その瞳に、嘘はなかった。


「私が、アルトのために着たい。それだけだ」


「……っっ!!!」


うわぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!


俺の頭の中が爆発しそうだった。


顔を熱くして俯く俺に、サクラは小さな声で囁いた。


「……買ってくれるんだろ?」


チラッとこちらを見上げたその顔は、ほんのり赤く染まっていた。


や、やばいって……その顔ずるいって……!!


「か、買う!!買うに決まってんだろ!!」


俺が叫ぶように言うと、


「やった」


小さな声でサクラが呟いて――


それから、ふわりと嬉しそうに微笑んだ。


その笑顔を見た瞬間、俺の中のテンションメーターが振り切れた。


「やったぁぁぁぁぁ!!!」


思わずその場で軽く跳ねる俺。


うおおおお!俺、今どんな顔してんだよ!?


けど、その俺を見てサクラが笑った。


くすくす、じゃない。 声を出して、小さく、でも確かに。


「……ふふっ。アルトって、変」


「え、なにその笑顔……ちょっ、かわいい……!」


完全にとどめを刺された俺は、 スキップする勢いでレジへ向かった。

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