謎のコスプレ集団?!2
「俺にしか使えない力ってなんだよ!?しかも目覚めさせるって……意味わかんねぇし!今んとこ分かったのは、お前らがマジでヤベェ奴らってことだけだ!」
怒鳴りながら立ち上がった俺の声に、部屋の空気がピリついた――その時。
ピピピピピッ……!
無慈悲な電子音が響く。
「……」
「……」
「……え、今の音、まさか」
リオが優雅に指を鳴らした。
「ちょっと待ってくれアルトくん。ラーメンが完成したようだ」
「ちょっと待てだとぉ!?真面目な話の最中だろ!?今それかよ!?」
ミリがすっと立ち上がり、静かに呟く。
「とんこつ醤油×1、ピリ辛味噌×1、追加だ」
「え、うそだろぉ!?それ俺の最後のカップ麺のストックなんだけど!?月末まで生き延びる命綱なんだけどおおお!!」
レイは電子ケトルを片手に、無表情で言う。
「お前の生活水準、危険だな」
「お前が言うなよ!!誰のせいで今、食料危機になってると思ってんだよ!!」
リオがフタを外しながら、優雅に笑う。
「安心してくれアルトくん。君の人生は、今日から劇的に変わる。ラーメンのことは忘れるんだ」
「はぁ?今はラーメンが一番重要なんだよおおおお!!!」
部屋にラーメンの香りと、俺の怒声が入り混じる中――
「ん〜、やっぱり僕が選んだカップ麺は、格が違うな……!」
リオがナルシストオーラ全開で、まるで高級フレンチでも食ってるかのような顔で、ズルズルズルゥゥッ!!と、盛大に音を立てながらラーメンをすすっていた。
「……なぁ、リオ」
俺がジト目で見つめながらツッコむ。
「お前、その見た目としゃべり方でその食い方……キャラに合ってねぇし。」
「美しい僕が食べれば、どんな食べ方もアートになるのさ」
キラッと笑顔をかましてきたその時――
「……いや、お前の食い方はきたない」
ぼそっとレイがクールに突っ込んだ。
「うっ……!」
リオの動きが一瞬止まる。
その横で、ピピピッと鳴ったタイマーにミリが手を伸ばし、カチッと停止ボタンを押す。
「……3分ジャスト。完璧」
「さて、俺たちも2杯目食うか」
レイがとんこつ醤油に手をかける。
「ああ」
「ズルズル……」
「ズルズル……」
「……俺の部屋で、俺のラーメン食って、よくそんな悠長にしてられるな!!」
思わず叫ぶ俺。
リオがラーメンをズルズルとすすりながら、優雅に髪をかきあげ、ちらっと俺の方を見た。
「みんなが食べ終わったら…アルトくんを目覚めさせるとしようか」
「……は?」
ラーメンの湯気が部屋中に漂う中、俺だけが取り残されたような気分になる。
「ちょっと待て、今なんつった?目覚めさせる?さっきから何なんだよ?」
「ふふ…その答えは、もう少し後で」
リオは再び麺を持ち上げ、ズルズルと音を立てる。
「ふざけんな!意味わかんねーよ!!てか、なんでそんな大事な話の前にラーメンなんだよ!?お前らさっきから話す順番おかしいだろ!」
「腹が減っては戦もできない、ってやつだよ」
「俺は戦う気ねーよ!!」
ミリが無言でピリ辛味噌のカップを口に運びつつ、冷静に一言。
「空腹は集中力を鈍らせる。栄養補給は理にかなっている」
「そういう問題じゃねー!!」
レイはレイで、空のカップを机に置きながら淡々とつぶやく。
「……カップ麺の優先度は、俺も否定しない」
「全員ラーメン脳かよ!!!」
そして――
食べ終わったカップ麺の空き容器が、テーブルにずらりと5個。
ピリ辛味噌×3、とんこつ醤油×2、
「あああぁぁ!!俺の非常食がぁぁああ!!!」
叫んでももう遅い。食い尽くされたあとだ。
俺が部屋の隅でシクシクしていると、
「……そろそろ、始めるか」
レイが立ち上がりながら、深い紫の瞳で俺を見下ろす。
「ルカがまた遅いって喚くだろうしね」
ミリも静かに立ち上がり、黒いマントがひらりと揺れた。
「ちょ、待て!なんだよ、始めるって……囲むな!近寄んなって!」
ジリジリと俺を中心に三人が円を描き始める。背筋が一気に冷たくなる。
「安心するんだアルトくん!」
リオが謎に爽やかスマイルを決めながら言った。
「君は今から、僕たちの仲間になるんだよ!」
「はあああ!?いや、仲間入りとか希望してねぇから!!」
「大丈夫。希望は問わない」
ミリが無表情で補足。
「それもう拉致だろ!!?」
「イメージするんだ、アルトくん」
リオが右手を差し出す。
「なりたい自分を。君の力は、そこから目覚める」
「意味わかんねぇ!てかお前ら、さっきまでラーメン食ってただけだろ!急に目覚めさせるとか言われても困るって!」
レイがスッと手をポケットに突っ込みながら、低い声で言う。
「……俺たちも最初は、わけがわからなかった。でも目覚めた時、全てが変わった」
「歩音、逃げるなら今だ」
ミリが唐突に言い出す。
「えっ、いいの!?」
「無理だけど」
即答。
「なんなんだよこの流れぇぇぇ!!」
レイが一歩前へ出た。
「感じろ、歩音。内なる衝動を」
「厨二病かよお前らああああ!!」
叫んでも、逃げ場はどこにもなかった――。
いつしか俺は、意識が飛んでいた。
そして――目が覚めた。
ぼんやりと天井を見上げて、俺は頭を振った。
「……どこだここ?」
見慣れた天井じゃない。家具の配置も、壁紙も、匂いすら違う。完全に俺の部屋じゃなかった。
「まさか……夢か?」
起き上がった俺は、ぼうっとしたまま辺りを見渡した。
けど、どこを見ても知らない部屋。
しかも――あのコスプレ侵入者トリオの姿も、どこにもない。
「……いない、アイツら。レイ、ミリ、リオ……どこ行ったんだよ……」
胸の奥に、何かが引っかかる。
不安というより、違和感。
体が軽いような、でも地面の感触が妙に遠いような――
「なんだこれ……いつもの俺と、感覚が違う……?」
そのとき、ふと壁に目がいった。
そこにかかっていたのは、見覚えのあるグレーの制服。
「……あれ、レイたちが着てたやつ……?」
なんだこれ。なにがどうなってる。
呆然としながら、俺は立ち上がり、近くの姿見の前に立った。
「………………っ!」
言葉が、出なかった。
鏡の中には――
銀髪に、グレーの瞳を持つ俺がいた。
「これ……俺なのか……?」
声まで少し低く、澄んでいる。
触れた頬の感触も、見慣れない肌の色も、全部……違う。
なりたい自分をイメージしてみて――
リオのあの言葉が、脳内にこだました。
「……まさか、これが……」
ここから、俺の目覚めは始まっていたのかもしれない――。




