女王さまを落とすどころか落とされてる!?
部屋に戻る途中、ふと俺は思った。
ちょっと待てよ……
俺ですら、サラのことこんなに意識してるのに、レイやリオはどうだったんだ?
あいつら、マジで何とも思わなかったのか?
……いや、サラ、普通にかわいいだろ。無表情とのギャップとか、絶対反則だろ!
ま、まさか……!!
そもそも俺に女の子の免疫がないだけ!?
うわぁぁぁああ!!
頭を抱えそうになりながら、俺は口を開いた。
「な、なぁ、サラ。部屋にレイとリオを呼んでもいいか?」
サラは無表情で俺を見たまま、淡々と答える。
「理由は?」
……ぐはっ!!
即、理由聞いてきたぁぁああ!!
思わず立ち止まりそうになる。
「そ、相談……したいことがあるんだ」
「相談?」
サラは首を小さく傾けた。
「なんだ?」
言えるわけねぇだろぉぉぉぉぉ!!
心の中で叫びながら、必死に表情を取り繕う。
「え、えーっと……明日からの生活とか?買い物とか?そういうことだよ!」
「私では不十分か?」
ズバッと刺さるサラの言葉。
「ち、違う違う違う!サラがダメとかじゃなくて!ほら、情報は多いほうがいいっていうか!」
必死に手をぶんぶん振ってごまかす俺。
サラは少しだけ考えるように沈黙した後、静かに頷いた。
「わかった」
「ま、マジで!?」
意外とあっさり許可が出て、俺は逆にびっくりした。
「ただし、私の視界から外れるな」
「えぇぇえええ……」
視界、ってそこかよ……!
すると、サラは無言で再びポケットから小さなカードのような端末を取り出した。
そして何も言わず、ポチポチと淡々と操作を始める。
あれってスマホみたいなもんなのか?
俺がそんなことを考えているうちに、俺たちは部屋に着いた。
そしてちょうど、部屋の前で――
「おっ、来たな」
「アルくん、来たよ!」
レイとリオが立っていた。
「女王さま、お呼びですか?」
リオはにこにこと笑いながら、軽くお辞儀する。
レイも無言で頭を下げた。
うわ、ほんとに来た……サラ、すげぇ。
サラは二人に一言だけ、淡々と言い放った。
「こいつの話し相手になってやれ」
そう言って、すっとドアを開けた。
俺は思わずサラを二度見した。
言い方ぁぁああ!!!
「お、おう……よろしくな……」
ちょっと微妙な空気のまま、俺たちは部屋の中に入る。
サラは窓際に静かに立ったまま、こちらにはあまり興味を示さない。
まぁ……いいか。
俺はレイとリオを手招きして、部屋の隅っこに集めた。
小声で、必死に聞く。
「なぁ、お前ら……ちょっと正直に答えてくれ」
レイは無表情のまま、リオは興味津々な顔で身を乗り出してくる。
「女王のこと……女の子として意識しなかったのか?」
一瞬、レイとリオが顔を見合わせた。
「……意識、ね」
レイは腕を組んで静かに答えた。
「仕事だったからな」
「うわ、プロかよ……」
「でもまぁ、かわいいとは思ったよ?女王さまだし?」
リオがニヤリと笑う。
「思ったんかーい!!」
思わず全力でツッコミ入れた。
「だってアルくん、かわいいものはかわいいって思うのが当然でしょ?僕なんて鏡見て毎日思ってるし」
「……自分かよ!!」
リオはにこにこしながら自分の前髪をいじっていた。
俺はさらに聞いた。
「ギャップみたいなの、感じなかったか?」
レイは少しだけ考える素振りを見せたあと、首を横に振った。
「常に無表情だったからな。ギャップって言われても、分からない」
「僕も~。女王さまって、最初から最後まで女王さまだったしね?」
リオも軽く笑う。
う、嘘だろ……俺だけかよギャップにやられてんの……
俺はガックリ肩を落としつつ、さらに食い下がった。
……無理だろ俺には。
サラと一緒にいて意識しないとか絶対無理。
そんな俺たちを、窓際のサラが無表情でじっと見つめていた。
……ドキドキすんの、やめられねぇ。
俺は心の中で、そっとため息をついた。
「レイィィ!!リオォォ!!」
叫びながら、俺は二人に勢いよく抱きついた。
「俺はこの先どうしたらいいんだぁぁぁああああ!!」
レイは軽くため息をつきながらも、優しく俺の背中をぽんぽん叩いた。
「……アル、お前はお前の感情のまま動けばいいさ」
低く落ち着いた声。
その温かさに、思わずぐっときた。
リオも俺の頭をくしゃっと撫でながら、にこにこと言った。
「大丈夫だよ、アルくん!君は素直でまっすぐだもん!それって、女の子に一番響くからさ!」
「リオォォ……」
ナルシストなはずなのに、ちゃんと俺のことを気遣ってくれてる。
俺、マジでいいやつらに囲まれてるぅぅ……
そう感動しかけた、その時だった。
「…………」
ぬるり、とした気配。
気付けばすぐ隣に、ミリがちょこんと座っていた。
「うおああああっ!!」
またしても気配ゼロ!!
俺が驚きで飛び上がるのをよそに、ミリは淡々と呟いた。
「一人で悩むのは非効率」
それだけ言って、無表情のままポスンと膝を抱えて座る。
「ミ、ミリィィ……!驚かせないでくれよぉ……!」
俺が涙目で訴えても、ミリは瞬き一つせず、
「最適行動」
とだけ答えた。
……こいつ、マジでマイペースすぎる……
でも、不思議と嫌じゃなかった。
レイとリオとミリ―― それぞれバラバラな個性だけど、みんなちゃんと、俺を支えてくれてる。
その事実が、俺の胸の奥をじんわり温かくする。
「……ありがとな、みんな」
ぽつりと呟くと、レイが小さく頷き、リオは満面の笑みを浮かべ、ミリは静かに瞬きをした。
そんな俺たちを―― 窓際のサラが、やっぱり無表情で見つめ続けていた。
でも今ならわかる。
あの瞳の奥に、ほんの少しだけ、興味の色が混じっていることが。
ドキドキしながら、俺は改めて誓った。
よし、絶対サラの心、動かしてみせる……!!
そう思った瞬間だった――
ふと、俺は気になったことを口にした。
「そういえばさ、お前ら……どうやって女王と連絡取ってるんだ?」
レイとリオ、ミリは顔を見合わせると、無言でポケットに手を突っ込んだ。
そして、三人同時に――
「これだ」
「これだよ!」
「通信端末」
サラが使ってたのと同じ、カード型の小さな端末を取り出してきた。
「あっ、それ……!」
俺は思わず指を差した。
「あれ、俺持ってないんだけど!?」
びしっと指摘すると、レイが静かに眉を寄せた。
「……アル、持ってないのか?」
「いや、持ってねぇ!」
リオも目を丸くして言った。
「おかしいな~。僕たち、最初に女王さまから渡されたよ?」
「俺も」
レイが短く頷く。
ミリは無言で、ぴっと自分の端末を見せてきた。
「支給対象外?」
「何その扱いぃぃぃぃ!!」
俺は思わず叫んだ。




