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謎のコスプレ集団!?

大学の授業を終え、疲労困憊の体を引きずりながら、俺、一ノいちのせ 歩音あるとは、くたびれたアパートのドアを開けた。


「……ただいま」


自分でも聞き取れないほどの声が、室内にこもった熱気へと吸い込まれていく。


――ん?なんだ、この匂い。


鼻を突く、焦げたような香りと、スパイスの入り混じった謎の匂い。


「は……?」


嫌な予感がした。足元のフローリングがきしむたびに、鼓動が早まる。部屋の奥へ目を向けた瞬間――


「……うわあああああっ!?」


絶叫した。悲鳴なんて、久しぶりに出た。


俺の目の前には、愛用の使い古されたローテーブル。


その上には、湯気をもうもうと立ちのぼらせるお気に入りのピリ辛味噌ラーメン。


そして、その横で、まるで二次元から飛び出してきたようなイケメンが、学ラン姿でリモコンをいじっていた。


「な、なんだお前……!」


紫色の少し長めの髪。


そして、どこか気だるげなクールな口調で、男は呟いた。


「この世界の食べ物は……案外悪くないな」


ズルズルと麺をすする音が、異様に部屋に響く。


「は?キャラになりきりすぎだろ! つーか、どうやって入ったんだよ!鍵は閉めた、窓もロックしたはず……!」


「お前に、用があって来た」


「はぁあ!?」


頭が追いつかない。


怒鳴る俺をよそに、紫髪のイケメンは、まるで他人事のようにラーメンを見つめた。


その時だった。


ベランダの向こうに、人影。


「えっ……」


ガラララッと窓が開く音が部屋に響くと、今度はピンク色の髪の女が、土足でずかずかと部屋に入ってきた。


「ちょ、ちょっと!誰だよ、お前!」


肩のラインで切りそろえられたボブヘア。


真っ青な瞳。制服は見慣れないグレーのセーラー服に、黒いマント。そして、黒のロングブーツが床に音を立てる。


「また奇抜な格好してんな!コスプレかよ!てか、靴脱げ!ここ、日本な!?」


「コスプレ……とは?」


無感情な声が、俺の神経を逆撫でする。


まるでAIがしゃべっているみたいな冷たい口調。


「なんだよ、会話すら成立しねぇし!てか、お前ら揃いも揃って何なんだよ!侵入者か!? 」


「おい、ミリ」


紫髪の男が、その名を呼ぶ。


「ルカの話では、この世界のイチノセ・アルトという個体が必要らしい。こいつが、その個体で間違いない」


「……確認完了。命令に従う」


「いやいやいや、なんの確認だよ!なんの命令? 個体?俺の生活に、RPGのクエストみたいなイベントぶち込むなよ!」


ミリは無言でキッチンに向かい、俺のカップ麺ストックを堂々と物色しはじめた。


「ちょ、やめろ!それ俺の非常用なんだぞ!ああぁ!とんこつ醤油を選びやがったな!」


「とんこつ?湯の注ぎ方は、こうか」


何も気にせず、電気ケトルから湯を注ぎ始めるミリ。


「……俺のとんこつ醤油が。はぁぁ……」


「おい……お前ら、本当に何者なんだ?」


「さっきも言ったはずだ。お前に用がある。だが、今はまずこの世界の食を味わいたい」


「おいおい……この状況で何を優先してんだよ!」


紫髪のイケメン男――レイは、微動だにしないまま、淡々と麺をすする。


ミリは、無表情に湯気を見つめる。


部屋にはラーメンの香りと、得体の知れない緊張感が充満していた。


その時だった――


「お前にだけある、特別な力がある」


ラーメンの汁を最後まで飲みほしながら、レイがぽつりと言った。


「……は?」


唐突すぎて、思考停止。


「何だよそれ。特殊能力って。そもそもなんで俺?」


レイは深い紫の瞳を細めて、冷静に答えた。


「それは俺にも分からない」


「分からないんかい!話ふっといといて分かんないってどういうことだよ!!」


ミリは冷たい目で湯気の立つカップ麺を見つめながら言った。


「我々にも、詳細なデータは存在しない。ただ、ルカがそう言った」


「誰だよそのルカって!せめてそいつを連れてこいよ!」


俺が声を荒げたその瞬間――


「……ふっ、ついに僕の出番のようだね」


……どこからともなく響くナルシスティックな声。


「えっ……え?」


次の瞬間、バタンッとトイレのドアが開いて、スローモーションの如く金髪の学ラン男が登場した。


光を浴びてキラキラしてる。


なんで!?トイレから出てきたのに!?しかもポーズとってるし!


「僕の名はリオ。麗しき天才ナビゲーターさ。安心してくれ、アルトくん。僕が君に、すべてを分かりやすく教えてあげよう」


「つーか、お前、なんでトイレにいた!?」


「ふっ、それはまた別の物語さ……」


「いや、今教えろよ!!なんで!どうして!っていうか、まずパンツ履いてるか確認させろおぉぉ!!」


レイはソファに座って腕を組み、「俺も気になっていた」とつぶやき、ミリは湯気をたてるカップ麺をかき混ぜながら「非効率」とだけ言った。


そして俺は悟った。


――この状況、もう俺一人じゃツッコみきれねぇ。


「ってかお前、手、洗ったか!?」


思わず叫ぶ俺。冷静になって考えたら、こいつトイレから出てきたじゃん。


「おい、ちゃんと洗えよ!?なに優雅に登場してんだよ!」


すると、リオは涼しい顔でウインクを飛ばしながら言った。


「ふふん、僕はすべてがもともとキレイだから大丈夫なのさ」


「なに言ってんだこのナルシスト!!意味わかんねぇ!!」


しかし次の瞬間。


「……リオ、手を洗え。衛生管理がなってない」


ミリがすっと立ち上がり、冷たい目でリオの手をじっと見つめた。


「ミ、ミリちゃん……!?その目怖い……!」


「今すぐ洗浄しろ。でないと、消毒対象になる」


「わ、わかったよ!すぐ洗うから、僕を消毒対象にしないでぇぇぇ!」


慌てて洗面所に向かうリオ。ジャーッと水を出す音と、なぜか鼻歌が聞こえてきた。あいつ絶対反省してねぇ。


そして数分後――


「よし、ピカピカだ!さぁ、気を取り直して……カップ麺、いただきます!」


「え、お前も食うの!?げっ!お前もピリ辛味噌かよ!」


「もちろんさ、君の文化に触れることは、理解の第一歩だからね」


優雅にポーズを決めながら、カップ麺にフォークを突き立てるリオ。


背中に謎のキラキラエフェクトが見えた気がした。


「では、本題に入ろうか。イチノセ・アルトくん。君には、君にしか使えない力がある。僕たちは、それを目覚めさせるためにここへ来た」


「……いや、話が急すぎるだろ!?ていうか俺のラーメン返せぇぇぇ!!」


レイはソファで肘をつきながら、「騒がしい奴だ」とつぶやき、ミリは冷静にラーメンのタイマーを確認していた。


そして俺の頭の中では、ひとつの言葉がぐるぐると回り続けていた。


――こいつら、全員ぶっ飛んでる。


でも、もう逃げられない。


俺の運命は、すでにこのヤバい3人によって、勝手に回り始めていた――!

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