09. アリスタ伯爵邸(3)
フェアリー・ドラゴン。
現存する龍の個体の中で最も小さな体を持つ龍で、主に深い森の中で小さな実を主食として生きていく龍だった。
小さな体格と比較的好戦性が弱い性向を持っており、それによって他の龍と比較した時、比較的小さなドラゴンハートを持っている。
代わりにフェアリー・ドラゴンの額にはマナを集めて結晶化させた魔力石があった。
この魔力石によって龍狩人たちによく標的にされ、今に至っては多様な品種でブリーディングされ貴族たちのペット用として比較的よく接することができる龍だった。
そのため、現在、野生のフェアリードラゴンは絶滅の危機に直面していた。
(ピーィ)
小さなドラゴン、今はビビと呼ばれた幼い龍は長い眠りに落ちていた。
母親から生まれたばかりの龍は、他人の手に引かれて巣から離れ、長い旅に出なければならなかった。
周辺には不安定な魔力がいっぱいで、生まれる時期を逃した小さな龍は次第に焦っていった。
(ピーィィ)
そして長い旅の末、小さなドラゴンはとても暖かい魔力を持った小さな人間に出会った。
この小さな人間を逃してはいけないという強い一念で、すべてのマナを使ってこする卵から目覚めた。
魔力を持つポーションの助けを借りて、ようやく元気を取り戻した頃。
途中で弱い主人を攻撃する敵のため、小さな主人に自分の目を貸したりもした。
(ピーィ!)
しかし、力を入れすぎたのだろうか?
生まれたばかりのドラゴンはすぐに眠りに落ち、周りのマナを熱心に吸収しなければならなかった。
そのように何日が過ぎたのか、とても親しみやすく巨大な気運に出会った。
「ピーィィ!」
黄金に輝く巨大な魔力。
少年の魔力はなぜかこの世に存在するすべてのドラゴンの始祖が持つ力と似ていた。
普通のドラゴンなら、その気運に押されて警戒する力だったのに。
この臆病な小さな竜は、その華やかさに飛びかかってしまった。
◇◆◇
「えっと···」
廊下が静寂に包まれた。
ビビがくしゃみをした位置は、ライゼンの顔と非常に近かった。
本当にとても、とても近かった。
「ピーイーイッ」
-パタパタ
メリをはじめとする周辺の使用人たちの顔が思索になっているが、こすりはすっきりしたように翼をはためかせながら、メリの肩に戻った。
皆がライゼンの顔色をうかがっているが、長い静寂を破るライゼンの一言が聞こえてきた。
「おもしろいな」
メリはどうしてもライゼンに向かって頭を上げることができなかった。
(うああ、ビビ!)
いたずらにビビを恨んでそわそわしている状況が続いた。
「あなた、あの時列車でぶつかった不細工なそばかすね」
メリの顔を指す声にはっと顔を上げた。
「え?不細工なそばかす?」
神経を逆なでする言葉に一瞬表情が歪んでライゼンを睨みつけると、ライゼンが手を振った途端、周辺にマナの光の群れが現れた。
(何だ?魔法かな?)
あっという間にきれいになったライゼンが両手の皮手袋を優雅に脱いだ。
同時に皮手袋が燃え上がり、灰になってしまった。
まるで汚れを消毒したかのように。
唖然とするメリに向かって近づいてきたライゼンが、上体を半分近く下げたまま、金の中をひんやりと光りながら冷たい警告をした。
「お前のドラゴン、大事にしまっておいたほうがいいだろう」
そして、何気なくメリを通り過ぎてドアの中に入った。
ドアが閉まるやいなや、メリは座り込んでしまった。 その周辺にはやはりライゼンの殺気に怯えた使用人たちが緊張した様子で立っていた。
「お嬢さん!」
「ピーイ?!」
躊躇しなかったメリを見て驚いたビビが飛び上がり、ハンナの助けを受けながら辛うじて立ち上がった。
「うっ···」
涼しげに輝くライゼンの目を正面に合わせたメリが、驚いた心臓をつかんで息を整えた。
息が詰まるほど威嚇的な勢いだった。
死ぬのではないかと思えるほどの殺伐な殺気。
まるで列車で銃を狙った敵に会った時に感じた脅威だった。
(狂人)
ライゼンを一言で定義したメリは、ビビの心配そうな舐められ、二度と会わないことを決心した。
一方、ダイニングルームの中。
「外が騒がしいわね」
まず、食卓の上に到着したアリスタ伯爵が、視線は書類に置いたまま入ったばかりのライゼンに向かって話した。
「大したことはありませんでした」
淡々と答えたライゼンが終始案内を受けながら席に座った。
「そうか」
二人だけの空間にいつものように静寂だけが漂っていた。
周辺の使用人たちは慣れた状況であるかのように待機し、伯爵の客が入ってくるのを待った。
「遅いなあ」
しかし、かなり時間が経ってもメリが入ってくる気配が見えないと、伯爵が先に重い口を開いた。
一度深呼吸をしたライゼンがまれに感じる感情を抑えながら答えた。
「…僕が行ってみます。 おじさん」
そっと眉間を固めたライゼンがそのまま席に立ち上がり、再びドアの外に出ようとする瞬間だった。
ドアが開き、メリとビビが入ったばかりだ。
「こんにちは···」
ドアの前にいたライゼンに気づかなかったメリの顔がライゼンの胸に埋もれた。
「うん?」
ライゼンの胸に触れるほど背が低い方に属するメリが目の前に見える黒い視野に当惑した。
その間、メリ の頭の上に低い息遣いが感じられた。
「早くも来るね」
「…⁉︎」
真上から聞こえてくる声にためらいながら、メリが後ろに下がろうとした瞬間。
「うわっ!」
自分の足にかかって倒れそうなメリをライゼンが片手で彼女の腰を支えた。
「……」
「……」
お互いの目つきが合った。
少年の金眼と少女の緑眼がだ。
ライゼンの助けで辛うじて転ばなかったが、見慣れない状況に2人が何も言えずに固まっていた。
「なかなかいいね。 二人はいつまでそうしているつもりなの?」
伯爵の淡泊な指摘に、二人ともすぐに姿勢を正した。
「…ありがとう」
あっという間に顔が熱くなったメリが、ライゼンに感謝を伝え、固まってしまった歩き方で退いた。
「こっちに座ればいいんだ。 メアリーさん」
「は、はい!」
伯爵の案内に従って決められた座席に足を運んだ。
ハンナが教えてくれた挨拶の仕方はとっくに忘れていた。
メリが元の場所に戻る頃、ライゼンはその場でびくともしなかった。
「……」
しばらく固い顔で自分の素手を見つめながら、深い考えに陥ったようだった。
「ライゼン」
伯爵の呼びかけでやっと意識を目覚めさせたライゼンもやはり自分の席に戻った。
依然としてメリを握った手を眺めたままだ。
使用人の助けで席に座ったメリは、すぐ隣にビビを置いた。
「ピー」
全員が座ると伯爵が命令した。
「食事を出してこい」
伯爵の命令に待機していた使用人たちが忙しく動き出した。
ビビの席には貴重なマナの実が置かれ、メリの席にも食べ物が入った皿が置かれた。
ところがテーブルの上にスプーンが多すぎた。
(うわぁ、何を書けばいいんだろう?)
魔導工学が発展して以来、文明の発展で一般平民にも貴族の食事法がよく普及した方だったが、それは一部に過ぎなかった。
フォークとナイフが両側に置かれた状況で、何を使えばいいのか戸惑いながら、目玉だけを転がす渦中、頭の中で伯爵の親切な助言が付け加えられた。
『両端にあるスプーンから一つずつ使うように』
メリの視線が伯爵に向けられた。 伯爵は優雅な姿勢で食事をしているだけだった。
(間違いなく伯爵様の声だったのに?)
メリはよく知らなかったが、全音という高位魔法の一種だった。
伯爵が高位魔法まで使って、メリに食事のマナーを教えた。 伯爵を少しでも知っている人が聞いていたら、とても驚いたに違いない。
メリは心の中で伯爵に感謝の意を表し、最後にあったスプーンを持ち上げた。
(ありがとうございます、伯爵様)
伯爵の助言どおり、外にあるスプーンから持ち上げたメリがおいしそうなアペタイザーを味わった。
「わぁ、本当においしい」
こんな優雅な味は初めてだった。
普段接しにくい食べ物に感動しながら味を楽しむ中、伯爵の感謝の挨拶が聞こえてきた。
「この前、列車内で発生した事件に対して感謝の意を表する」
「…え?」
「おかげで簡単にテロ犯を捕まえることができた」
伯爵の感謝の表現に周辺の使用人はもちろん、ライゼンまで伯爵に視線が注がれた。
普段、伯爵と違う行動に皆がいぶかしがっていた。
この席でメアリーだけが胃もたれしたように胸をつかまりながら水をがぶ飲みする途中、伯爵の言葉が続いた。
「それで恩返しをしようかと思っているんだけど…何か欲しいものはあるか」
「…!」
ダイニングルームが静寂に包まれ、メリが水を飲み込む音だけが聞こえてきた。
叔父の珍しい姿にライゼンが目を細くしながら伯爵を推し量る間、メリの頭が休む間もなく回り始めた。
(言ってもいいのか…)
ここに来る前に聞いた補佐官の助言が思い浮かんだ。
(ドラゴン・ナイトになったら···ビビと別れないかもしれない)
平民が「竜騎士ードラゴン・ナイトー」になるということは、ほとんど不可能に近いことだということがよく分かった。
一般記事になるのも難しいのに、ましてや竜騎士だなんて。
不可能に近いということを知らなかった。
(お母さん、お父さん。 すみません···! 弟たち、ごめんね! お土産必ず買って行くよ!)
それでも素直にあきらめるにはこの機会があまりにも惜しかったから。
《スクワイア》
騎士の従者を指す職位。
見習い竜騎士ードラゴン・ナイトーになれるかもしれないと言ったラウルの甘い言葉が頭の中をいっぱいに埋めた。
(あ、分からない。これは裁判官のやり方だ!)
決心を固めたメリが伯爵に向かって首をかしげた。
(ほ?)
メリの固い目つきに興味を感じた伯爵が、なんとなく予想される言葉を待っていた。
「私をバック作家のスクワイアとして受け取ってください!」
やはり。
期待を裏切らない返事に、伯爵の口元に人知れず、にっこりと笑みがこぼれた。
(結局、言ってしまった)
心の中で半分自責しながら伯爵の返事を待っていると、伯爵より先にライゼンの嘲笑のような言葉が聞こえてきた。
「あきれた」
ライゼンの方に顔を向けたメリが出会った顔はまさに。
軽蔑したライゼンの顔だった。
月、水、金曜日の3回で連載される予定です。 今日も読んでいただき、ありがとうございました。




