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07. アリスタ伯爵邸(1)

「小さい竜のことでしたら、伯爵邸内の竜舎の六室にございます」


ハンナは、メリ の意中を推し量るように丁寧に尋ねた。


「こっちに連れてきましょうか?」

「あ、はい!お願いします」

「分かりました。 ちょっと行ってきます。」

「はい!」


メリが返事を最後に訪問する侍女だった。 その姿を見守っていたメリは、ベッドのそばに寄りかかってため息をついた。


(バタバタしているね)


本当に慌ただしい一日、いや数日が過ぎたようだった。

一人で残った部屋を注意深く見ながら、夢ではないかと思って片手で頬をつねってみた。


「うっ···!」


夢じゃないんだ。

本当にあのハンサムな伯爵様の邸宅だな。 やっと実感がわいた。


(これからどうなるんだろう?)


確かに龍に関して問題が生じたようだが、このまま刑務所に行くべきなのか疑問に思い、今後の去就について悩んでいた頃。

ドアをノックする音が聞こえてきた。


「はい、どうぞ」


ドアが開くやいなや入ってきた人は見たことのある顔だった。


「お会いできて嬉しいです。 メリー、体調は大丈夫ですか?」


伯爵に劣らない緑眼の美男子だった。 補佐官のラウルだった。

メリ はしばらくぼんやりと男を眺めていたが、後になって質問をしたことが分かった。


「はい、結構です」


席を立って挨拶しようとしたが、ラウルが引き止めた。


「無理に起き上がる必要はありません」

「…ご配慮ありがとうございます」

「まあ、一番気になる事からお聞かせしようと思って伺いました」


(何だろう?この冷たい感じは?)


補佐官の無神経な態度がとても気になった。 良くない方にね。

それにしても気になるニュースだなんて。


「メリーさんがフェアリー・ドラゴンの卵を購入して所有した疑いについては、伯爵様の証言で嫌疑なしの処分が下されました。 ただ、やはりフェアリードラゴンは学術院の方に還元される予定です」

「…え⁉︎」


青天の霹靂のような知らせだった。

このままビビと別れるという話と変わらなかった。


「あ、だめです! このままビビと別れるわけにはいきません···」

「···やっぱり」

「え?今何を···」

「あ、違います。 しばらく独り言でした。 ただ、原則は原則なので難しい言葉ですね」


飾り気のない笑みを浮かべて見せるラウルだった。

仕事が煩わしくなることを好まない方ではあるが、意外にもこの少女が役に立つかもしれない。

かなり長い間、隣で伯爵を見守ってきたラウルの立場で、伯爵がこの小さな平民のお嬢さんを気にかけていることを知らないわけがなかった。


(本来ならそのまま騎士団に渡したはずなのにね···)


そもそも貴族が平民を顧みることがあるのか。

通りすがりの石ころだと思っているならともかくだ。


(面倒だけど、少しアドバイスをしないと)


最も重要なことは『面白さ』だったからだ。

計算的な本音を隠しながら、メリに向かって笑っているラウルは、メリに一つアドバイスを渡した。


「ただ方法がないわけではありません。 貴族になればいいのです」

「…え⁉︎」


別れない方法が貴族になれという話だなんて、でたらめな話に不信の目を向けた。


「簡単な方法ですね?」


ところが、気が楽に見えるあの補佐官という人は、目で笑ってばかりいるのではないか。


「事故ではありますが、メリーさんに刻印した龍ですから、貴族になれば一時的に龍に対する養育権を主張することができるでしょう。 所有権は別の問題ではありますが」


メリがあきれているのに、ワントーン低い声でメリに慎重に忠告し始めた。


「竜騎士になってください。 騎士爵位は準貴族として認められます」

「…竜騎士?」

「平民が騎士爵位を受ける方法は、普通、騎士の従者になることです。 騎士の従者は『スクワイア』といって身分を保証してもらえます。 もちろん、龍の所有も認められています」


記事の種なら何度か見たことがある。 村を巡察する竜騎士の横で補佐する人々がいたことが思い出された。


(あの人たちをスクワイアって言うんだ)


初めて知った事実に心の中で驚きを飲み込む頃、ラウルの助言が続いた。


「近いうちに閣下がメリを呼んでくれるでしょう。 その時閣下に一度言ってみてください。 その後のことはメリ次第です。」


そして、ラウルは袖の内側から華やかで繊細に見える懐中時計を取り出し、時間を確認した。


「あら、もうずいぶん時間が経ったんですね。 伯爵邸にもうすぐお客さんが到着するので、騒がしいと思いますが、ゆっくり休んでください」

「お客様ですか?」

「はい、伯爵様の甥がいらっしゃる予定です。 気難しい坊ちゃんですよ」


(無駄に血統が良すぎて頭の痛い坊ちゃんですけどね)


「それではこれで失礼します」


懐中時計をもう一度まとめながら、ラウルは部屋を出た。

ラウルが部屋を出ると同時に、メリ がベッドの中に埋もれた。

そのまま華麗な天井を眺めながら、ラウルがしてくれた助言を思い出した。


(竜騎士)


夢にも思わなかった言葉だった。

本当に竜騎士 になったら、このままビビと別れなくてもいいのかな?

そもそも竜騎士はどうなるの?

種子、つまりスクワイアになることはできるのか。


(あ、分からない!」 とりあえずぶつかってみよう)


死ぬよりもっとひどいだろうか。

覚悟を固め、まだ疲れが取れない肉体が、だるいベッドの力の前で、すぐに眠りに落ち始めた。

涼しい日差しが差し込む部屋の中、メリは深い眠りに落ちた。


◇◆◇


「くだらない話をしたようだ。ラウル」


メリが泊まる部屋のドアの前に、邸宅の主人がラウルを迎えた。

部屋のドアの向かい側の壁に寄りかかっていた伯爵の姿は、一片の彫刻のようだった。

ほのかな日差しが照らす短い象牙色の髪をした美男子の姿に肩をすくめたラウルが答えた。


「こんな閣下がここまでどうしたんですか?」


メリが泊まる部屋は本館と距離がある別館にあった。

だから伯爵が直接動いてくるにはかなり距離があった。


「……」

「まあ、それは重要なことではありません。 ただおせっかいをしてみたんです。 夢を植え付けるのに問題になることはないじゃないですか?」


無責任な発言だった。

当初、スクワイアという爵位も大体貴族の子供たちが受ける場合が多かった。 大多数の爵位を継ぐことができない二番目以下の子供たちがだ。

ごくまれに平民をスクワイアとして受け取る一般騎士や貴族がいたことはあったが、珍しかった。

そのため、ラウルが平民少女にしてくれた助言は、荒唐無稽な言葉と変わらなかった。


「…無責任だね」

「無責任だなんて、あくまでも夢と希望を植え付ける人です~」


特有の偽善的な笑みを浮かべて見せていたラウルと伯爵の視線が出会った。


「ところで閣下はかなりあの少女のことを気にかけているようです」


そっと目を上げたラウルが伯爵の意中を推し量るように尋ねた。 補佐官と伯爵の関係は、一見しても一般的な主従関係には見えなかった。

まるで牽制する敵に対するような態度だった。

短い対峙に伯爵が選択したのは回避だった。


「…命令した仕事は終わったか」

(お~?)

「もちろん」


ラウルは片手を大きく胸にのせて丁寧にあいさつする動作をした。 まるで怒らせるようにだ。


「まったく不可能なことではないでしょう? 誰かの助けがちょっと必要でしょうが」


その誰かをじっと見つめながら、ラウルは悠々と伯爵を通り過ぎた。


「……」


ラウルが過ぎてからかなり時間が経ったにもかかわらず、伯爵は門の前で苦心に陥ったようにしばらく立っていた。

その間、片方の廊下の端からある侍女が歩いてくる音が聞こえてきた。

メリに割り当てられた女中のハンナだった。 彼女はメリ の頼み通り、竜の飼育室で眠っていた小さな竜のビービーを持ってくる途中だった。


「はっ、伯爵様!」


部屋のドアの前に到達したハンナが伯爵を見るやいなやそわそわしながら立っていたが、伯爵がビビに向かって視線を置きながら侍女に尋ねた。


「龍を連れてくる道か?」

「…はい!」


邸宅で働きながら珍しい伯爵を見たという事実に、ハンナは心臓の鼓動を止める間もなく、伯爵の言葉に素直にうなずいた。


「入ってみよう」


緊張したように挨拶をしたハンナが急いでドアを開けた。

そのまま小さな龍を持って行くハンナの姿がドア越しに消えた。

意中が分からない伯爵の視線、メリと小さな龍が留まる部屋に向かった。


「……」


しばらくして、部屋から目を離した伯爵は、そのまま振り返った。


◇◆◇


「はあ~」


退屈さにあくびをしていた警備兵は、見知らぬ人の接近にすぐに姿勢を正しながら警戒した。


「だれだ!」


しかし、ローブをかぶった男性は何も言わず、懐の中からお金の入った袋を警備兵に投げた。


-ターッ!


「···何!」


一目で見ても尋常でない重さに警備兵は戸惑う暇もなく、そのまま監獄の入口を避けた。

警備兵の緊張した気配を何気なく通り過ぎ、謎の男性は地下監獄に降りていった。

地下の一番端にある収監室に到着した男性は、格子越しの隅にいた男性に向かって口を開いた。


「マルトン男爵」


刑務所に収監されているのはマルトン男爵だった。


「…誰…誰?」


数日間、ご飯も食べずに続いた尋問に、監獄の中で力なく倒れていた男爵が、ざらざらした声で反問した。

これを見守っていた男が顔を隠したローブを取り除きながら再び尋ねた。


『小さなドラゴンの卵』はどうなった?」


男爵がいなかった力を引き上げながら、相手を見るために頭を上げた。


「はっ!」


その男は左の顔にひどい傷跡があった。 左目と頬を一直線に横切る巨大な傷跡のことだ。


「きあんけい!」


慣れ親しんだ顔だった。 龍の卵を密搬出する時の協力者だったからだ。


「しっ、そのまま死にたいのか?」


キアン卿と呼ばれた男は、その特有の濁った敵案を持ち上げて男爵を脅かした。


「わ、わかりますよ!」

「もう一度聞いてみよう。『小さなドラゴンの卵』はどうなったのか?」

「…その卵は平民の少女が持っていた!」


すでに渡さなければならなかった「小さなドラゴンの卵」に対する便りがないと、直接動いた男だった。

意外な話に騎士は男爵を脅迫するように荒い口調で尋ねた。


「…どういうこと? 詳しく言え」

「途中で盗んだやつが卵を売ったもっと!列車で見つけて取り戻そうとしたら、アリスタ伯爵が介入した!」

「…アリスタ伯爵のことか?」

「そこに部屋を襲った時は、その卵からフェアリードラゴンが生まれていたんだ」

「……!」

「私、私が言いたいことはこれで全部だよ、どうか私を出してくれ!」


すでに卵が目覚めたという話にしばらく沈黙していた男キアンがそのまま席に立ち上がり男爵に向かって話した。


「それは難しいだろう。 しかし、もっと簡単な方法がある」

キアンの手は左腰を向いた」

「そ、それは何か」


音もなくあっという間に男爵の首を切られた。

桟は揺れもなくそのままで、男爵の首だけがぽつんと落ちた。


たった一度の発検。

帝国十大騎士の一人、キアン·ド·ヴァロッセニア。


(皇子殿下に報告しなければならない)


第1皇子 レイヤードオーフェンテルセニアの護衛騎士の男だった。

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