侍女の悲劇
さて、ナロー姫たちが城に戻って来た、その夜の事です。
ナロー姫の血の繋がらない兄であるダダ王子の自室に、宮殿で働く侍女の一人が呼び出されていました。
悪趣味な内装の施された、広い間取りの部屋に置かれている豪奢なベッド。
ベッドの端にはガウン姿の王子が座り、その前には呼び出された侍女が、不安げな様子で立っていました。
ベッドの端に座るダダ王子は、下卑た笑みを浮かべながら好色そうな視線で、目の前に立つ侍女の顔を見上げています。
そして、彼女に言いました。
「カトリーナ。何で、俺の部屋に呼び出されたかは、もちろん解っているだろうな?」
「はい、王子様」
ダダ王子は、ニタリと嬉しげに笑います。
「それじゃ、例の物を出してもらおうか」
「はい•・•」
カトリーナは蚊の鳴くような声で返事をすると、メイド服のポケットから布っぽい何かを取り出して、王子にそれを手渡しました。
ダダ王子は、その小さな布の様な物を受け取ると、両手でそっと大事そうに持ち、更にそれを自分の顔のすぐ前で広げます。
「グヘヘへッ!!これが、侍女の中でナンバー1のシルキーちゃんのおパンツか!予想通り、芳しき香りがするわいっ!」
カトリーナは王子のその言葉を聞くと、両手で顔を覆い、泣き出してしまいました。
「も、もう、許して下さい!王子様っ!同僚の下着を盗み出すなんて、これ以上は出来ません!!わ、わたしの下着で良ければ、いくらでも差し上げますからっ!」
しかしダダ王子は、カトリーナの言葉をバッサリと否定します。
「黙れっ!!ババアのパンツなんか、いらねーよっ!!」
ショックを受けたカトリーナが、涙目で王子に叫びます。
「ひ、ひどいっ!!わたしは、まだ23歳ですっ!!」
「フンッ!!匂いが違うんだよっ、匂いがっ!!お前には十分な礼金を渡してあるだろうがーっ!金に目がくらんだくせに、今更、善人ぶるんじゃねぇっ!!おっと、そうだーっ」
まるで、カトリーナを追い詰めるかの様に、ダダ王子は彼女に対して、更なる邪悪な要求をしてきました。
「そうそう、確か今、ナローが城に戻って来ているはずだな。おい、カトリーナ!お前、あの女が風呂に入っているところを見計らって、あいつのおパンツを着替え場から盗んで来いっ!」
その言葉に、再び衝撃を受けるカトリーナ。
とうとう彼女は顔を両手で覆い、シクシクと泣きながら、部屋の床に崩れ落ち、うずくまってしまいました。
「いくら、血が繋がっていないとは言え、妹君にまでーっ!獣っ!あなたは獣ですっ!どうしてっ!?昔はあんなに可愛い王子様だったのにっ!!」
さすがにやり過ぎたとでも、思ったのでしょうか?
ダダ王子は、ベッドに座ったままの状態で腕を伸ばすと、床にぺったりと座り込んでいるカトリーナの肩に、そっと手を置きました。
そして薄ら笑いを浮かべながら、猫撫で声で彼女に話し掛けます。
「今度だけ、これで終わりにしてやるから。それに、礼金も上積みしてやる。だから、な、いいだろ?」
「う、ううっ〜」
顔を両手で覆いながら涙を流し、呻き声を上げるカトリーナ。
そんな彼女の耳にダダ王子は、更に甘い言葉を囁きます。
「本当に、これっきりにするからさ。弟を大学に行かせる為に、金がいるんだろ?だから、な・・・」
もちろん彼は、これで終わりにする気など、毛頭ありませんでした。
[続く]