第1話 異常枠3 頂き物の超大さ(キャラ名版)
デュリシラに諭されて独り言を止め、彼女の指示通りにヘッドセットの電源を入れる。接続先のコンピューターとアクセスされ、VRMMO・海王の艦隊が起動された。
真っ暗の画面から、突然大海原の描写に切り替わり驚愕する。大海が苦手な人なので、幾らVRMMOでも尻込みしてしまう。しかしそこはゲームの世界、溺れるといった概念は存在しない・・・らしい。
大海原から陸地へと移動する形になると、そこに1人の人物が立っていた。白いローブを身に纏った、所謂通例的な案内人だ。仙女のようである。
念話を通してデュリシラから補足が入り、その人物が海王の艦隊の案内人との事だ。美人である部分は伏せておく。どうせ俺が考える事は周囲に読まれているしな・・・。
白ローブの女性「ようこそ、海王の艦隊へ。私はテイア。新たな艦長をご案内する役目を担います。先ずは、初期設定を済ませて下さい。」
案内人の名前はテイア。名前の出所だが、もしかしたらだが、草創期の地球に激突したあの惑星の名前かも知れない。2つの惑星が融合し、飛び散った破片が今日の月も形成している。
と言うか、異世界惑星の様相を醸し出す彼女が、近代用語を語るのは違和感有り捲りだわ。ゲームの仕様と割り振れば済むのだが、凝り固まった考えが強い俺としてはどうも困る。
まあともあれ、今はゲームの方を楽しむとしよう。
初期設定は名前の命名から始まる。名前に関しては、マスターTとした。実に安直な感じだが、そこは考えない事にした・・・。
続いて、自分の分身たる艦長のエディットへと進んでいった。流石はゲームだ。どんなキャラクターでも創生できる。しかしここは、あえて今の自分と同じ姿を再現してみた。
物凄く有難いのが、どの様な容姿でも問題なく再現できる点だ。特に顔に装着する覆面や仮面、仕舞いには鉄仮面すらも存在した。ここは今の出で立ちと同じ覆面と仮面を装着し、その上から鉄仮面を装着した。
ゲームの設定だと、重複装備は不可能のようだが、そこはリアリティを追及するVRMMOだから罷り通ったようである。最初に覆面を、次に仮面を装着。そして最後に鉄仮面である。完全な変態チックである。
更には能力の設定などもある。これらは艦長自体の能力となり、手持ちの艦船を効率良く操艦できるようになるようである。最終的にはプレイヤー側の能力に依存するため、あくまで上辺の能力のみの感じだ。
この手の設定にはトコトン吟味するクチなので、非常に長い時間を費やして考え抜いた。俺の戦闘スタイルは継戦能力重視なので、それを反映させたら防御力重視のキャラクターとなってしまった。まあこれは警護者でも同様の様相なので問題はない。
完成したエディットキャラクターが目の前に現れると、その人物に自分の意識が落とされていく。当初の俺は言わば魂のような存在だったため、こうして人物として現れるのは有難い限りである。
しかしまあ、VRMMOのキャラクターはリアリティがあって驚きである。それでも先の異世界惑星事変を踏まえると、やはり見劣りしてしまうのは何とも言い難いが・・・。
最後は、各プレイヤーにプレゼントとして贈られる艦船を引く事になった。これは完全にランダムで選ばれるようで、何が当たるかは全く以て分からない。
更にこのゲームは容姿の再調整はできても、プレゼントは一度選ぶと二度と変更は不可能のようだ。やり直しなどはできず、頂いたプレゼントの艦船を永続して使う事になる。つまり、何の艦船を引くかによって、今後の流れの全てが変わってくると言える。
まあでも、通常の進行でも既存の艦船は購入できるようなので、このプレゼントに関しては完全に運任せと言うしかない。それに高レベルに位置付けられる艦船は、一定の修理費と弾薬などの補給費がベラボウに高額になるようだ。
仮に高レベルの艦船を頂けたとしても、それを序盤の序盤から使う事は絶対にできない。即座に大赤字確定であり、艦船自体の出撃もできなくなる。ゲームなのに借金地獄となるのは言うまでもない。
テイアが両手を広げると、目の前に大きな箱が現れた。それがゆっくりと回りだしていく。何だか福引のグルグル回すアレの取っ手が無いみたいである・・・。
一定数回った後、それが停止する。箱に開いている穴から、ポロッと小さな球状の物体が落ちてきた。それが空中を浮きつつ、俺の前へと進んでくる。実にファンタジー的な感じだ。
ボールとも言えるそれが俺の前に来ると、眩い光を発しだす。これも流石はVRMMOで、目を背けないと厳しいぐらいの発光だ。ここは眩い光が収まるのを待つしかない。
マスターT「・・・マジか・・・。」
眩い光が落ち着いた頃、ゆっくりと両眼を開く。すると、眼前に現れたシルエットに驚愕してしまう。プレゼントとして現れた俺専用の艦船は、何とあの戦艦大和だったのだ・・・。
今はホログラム的に現れているが、警護者界でも大変お世話になったレプリカ大和の艦体と全く同じである。ただ、目の前の大和はオリジナルを基準としているため、レプリカ大和とはかなり違っている点が多い。
これから推測できるのは、海王の艦隊の開発陣は相当調べ抜いて創生したようだ。マジマジと見て回るが、細部に渡ってしっかりと具現化されている。となると、戦術はかなり様変わりしてくるだろう。
そもそも、レプリカ大和の推進機構は近代化している。艦尾の4基のスクリューは独立式となっており、360度どの方向にも向く事ができる。前進も後進も無論、左側や右側にも移動が可能だ。
更には艦首に4基のスラスターが搭載されており、艦首を左側や右側に動かす事が可能だ。艦尾の独立式スクリューと組み合わせれば、海上で静止した状態で艦体を360度旋回させる事も可能である。ともあれ、レプリカ大和は異常過ぎる行動が可能となっている。
しかし、目の前の具現化大和はオリジナルと全く同じ推進機構を再現されている。前進と後進しかできず、左側や右側に旋回するのは相当な時間が掛かってくる。先のマニュアルでもあったが、魚雷などの回避には先読みをして動くしかない。
テイア「最後に、貴方専用の特殊スキルを選んで下さい。」
ホログラムの具現化大和が消えていき、それが小さなペンダントへと化ける。錨型の可愛いものだ。それが俺の手元へと来たのでソッと掴む。5大宇宙種族の各ペンダントに近い様相である。直ぐに受け取ったペンダントを首にぶら下げた。頂いたものだ、大切にせねばな。
すると、再びテイアが語り掛けてくる。ホログラムの具現化大和を吟味している最中、彼女が居る事を忘れて没頭していた。これが生身の人間だったら、呆れ顔で見られていただろう。
その彼女が今度は両手を前に掲げ、タロットの様なカードを複数出現させていく。これに関してもマニュアルに記載されていた。そのカードには特殊スキルが記載されている。
特殊スキルとは、艦長専用の固定スキルとの事だ。艦隊を鼓舞するスキルや、自前の艦体を一時的に強化するスキル、一定時間自分や周囲の艦隊の耐久力を回復させていくスキル、などなど。
ちなみに、このスキル自体は任意で選ぶ事が可能のようだ。更に同スキルは、後の購入して習得するスキルとは別の艦長独自の固定スキルらしい。つまり、ここで何を選ぶかで今後の戦術が大きく変わってくると思われる。
俺の戦闘スキルとしては継戦能力重視の後手側戦法となるため、長く戦えるようなのが無難な所か。となれば、一定時間自分や周囲の艦隊の耐久力を回復させていくスキル、だろうな。
スキルに関しては、該当スキルを使用すると一定時間は再使用ができない。だが、使用回数自体は無制限のようだ。使用回数を設けられた方が緊張感が出てくるが、漠然と海戦を楽しむだけなら問題ないだろう。
それに、この手の艦船の操艦は、即座に動かせるものではない。幾ら万能的なスキルを所持していたとしても、多段の魚雷を喰らえば絶対に撃沈は免れない。
ともあれ、最後は操艦による取り回し次第だろうな。一応、レプリカながらも実物大の大和で艦体自体の特性は掴んでいる。動きだけは本家本元を参考にした方が良いだろうな。
テイア「これで全ての初期設定は終わりました。良き艦長ライフを過ごして下さい。貴方にとって、大海原が癒しの存在になりますように。」
全ての設定を終えると、テイアが終わりを告げてくる。その言葉は恒例的な文句だが、最後の一言がどうしても違和感を覚える・・・。今だに大海が苦手な自分としては、大海原は恐怖の対象でしかない・・・。
幾らゲームの世界であっても、VRMMOとなれば再現度は現実に近しい様相であろう。つまり、それだけ恐怖度が強く現れる裏返しそのものだ。何ともまあな感じである・・・。
最後の言葉を告げると、眩い光を放ちつつテイアが消えていく。僅か短期間ではあったが、色々とお世話になった感じだ。後はゲームへと降り立ち、その世界観を満喫するのみだ。
第1話・4へ続く。
先週に引き続き、大艦長側の更新をば。ミスターT君が頂けた特殊艦船に関してはまあ、警護者と探索者をお読みになられていれば薄々何なのかはお分かり頂けていたかも知れません@@; 何とも(-∞-) ただ、同作に超強いインスピレーションを受けたワールドシップと同様に、資金面の問題で扱えない属性は健在です@@; “実戦”で直ぐに使えては超チートとなりますので><;
ともあれ、第1話までは毎週アップさせて頂きますm(_ _)m よろしくお願い致します><;