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閑話1 アルベール・クールナンの考えるシュゼット・カイレについて

閑話はほかのキャラクター視点になります(o*。_。)oペコッ


 ☆★☆


「……何故、あんなにも可愛らしいんでしょうか」


 シュゼット嬢と二人きりのお茶会を終え、俺は自室に戻ってきていた。そして、いつものようにシュゼット嬢の衣装ノートを取り出し、本日の日付と衣装を書き込んでいく。初めは拙かった絵も、ほぼ毎週のように描いていれば自然と上手くなるというもので。最近では満足出来るものが描けている自信がある。まぁ、誰にも見せないので所詮自己満足でしかないのだけれど。


 しかし、本日は悲しいことに俺の寿命が縮まるような出来事がありまして。なんといっても、愛しの婚約者であるシュゼット嬢が俺に婚約の解消を求めてきたのです。……正直、寿命が二十年ぐらい縮んだのではないかと思った。だけど、シュゼット嬢と同じだけ生きるために寿命を気合で呼び戻す。だから、大丈夫。俺はずっとシュゼット嬢と一緒に、いられる。


「今日の装いも女神様の様でしたね……。ほかの女性など足元にも及ばない……」


 そんなことをつぶやきながら、俺は衣装ノートを閉じて元の場所に戻した。やはり、シュゼット嬢は何を身に纏っても似合いますが、一番は淡いブルー系統でしょうか。ドレスであろうがワンピースであろうが、シュゼット嬢の魅力をうまく引き立ててくれる。カイレ子爵家はあまり裕福ではないからか、シュゼット嬢はよく衣装をリメイクして着ている。あぁ、それでも似合う。似合いすぎる。早く、俺の元に来てくれたらいいのに。そうすれば……もっと、綺麗に着飾れる自信があるのに。


「あぁ、しかし。まさかシュゼット嬢に苦手意識を持たれていたなんて……。想定外すぎますね。通りで、ほかの女性と目の色が違うわけですか……」


 ほかの女性は、俺のことをぎらぎらとした目で見つめてくる。幼少期はそれが怖く、一時期は女性不信に陥っていたぐらいだ。だが、そんな俺の前にシュゼット嬢は現れた。一目で恋に落ちた。そして、分かった。


 ――シュゼット嬢だけは違う、と。


 シュゼット嬢は清らかで美しくて可愛らしい。さらに、なんといってもその笑顔が魅力的だった。生憎、俺に向けられることは少ないものの、家族と談笑しているときの笑みは最高だった。あれを思い出すだけで百年は生きていけそうだった。あぁ、最高。


 しかし、どうやら俺のその気持ちは全くと言っていいほど伝わっていなかったらしくて。まぁ、元より俺は不器用だと言われてきた。元より、口下手だと言われてきた。元より、目つきが悪いと言われてきた。しかも、そのすべてがシュゼット嬢からの評価をマイナスにしてしまっていた。後悔が強すぎる。あぁ、もっと早くこのことに気が付いていれば……! そうすれば、こんなことにはならなかっただろうに……!


「とりあえず、シュゼット嬢とまともにお話をする練習から、始めましょうか。視線を合わせて会話をする。睨みつけないように愛情をこめて見つめる。それから、きちんと会話をする。……出来るのでしょうか」


 自分で口に出して分かったが、それはかなりきついことだ。俺はシュゼット嬢を前にすると、すべての言葉が脳内から消えていく性質だ。あれはまるで浄化の力のよう。下心しかない俺が汚らわしく思えるぐらい。


 視線を合わせるのも酷だ。あの美しい目を見つめながら、美しい声を聞けば尊すぎて死ぬ。だが、シュゼット嬢と生きて夫婦になるためには、死ねない。……なんという、酷な現実。


 それから、睨みつけないように愛情をこめて見つめる。……これも難しい。もっと穏やかに見える顔立ちに生まれていれば、こんな悩みはなかったはず。正直、顔を変えたくて仕方がない。


「ですが、シュゼット嬢はこんな俺を男らしくてかっこいいと言ってくれた。顔を変えるのにはデメリットも大きいだろうし……」


 シュゼット嬢は、俺のことを「男らしくてかっこいい」と言ってくれた。たとえその中に込められた感情が「励まし」だけだったとしても、あの言葉だけで生きていける。脳内にしっかりと焼き付けた。いつでも脳内でリピート出来る。あぁ、でも切実に声を録音できる魔道具が欲しい。……作りましょうか。


「とりあえず、俺には財力があります。顔もまぁまぁいいでしょう。あとは、シュゼット嬢にこの気持ちが伝われば……無事夫婦になれるはず。そうだ、そうに決まっている」


 シュゼット嬢にこの気持ちが伝われば、間違いなく夫婦になれる。俺が侯爵家の生まれということもあり、挙式は国一の由緒正しい教会で行うことになるでしょうが、絶対にシュゼット嬢のウエディングドレスは俺が一番最初に見る。どんなウエディングドレスが良いだろうか。美しい系統でも、可愛らしい系統でも。どちらでも似合う。……いっそ、何回でも着てほしいぐらい。


 と言いますか、こんなことを考えている場合じゃない。シュゼット嬢との挙式の妄想などもう何千回もしていますし。今更か。あと、夢でも百回以上挙式を行っている。だから、今はそれよりも本当にシュゼット嬢との挙式が夢になりかねないことの方が重要。……しかし、どうしたものか。


「……仕方がない。不本意ですが、背に腹は代えられない。……あの父に、教えを乞おう」


 正直、あの父親は苦手だ。だが、気難しいことで有名だった勝気美人である俺の母親を口説き落とした経歴だけは、認めている。しかし、あの父親はほとんど顔だけの男ではあるため、あの人に教えを乞うのは本当に不本意だ。……というか、あの父親は俺の母親以外の人間を必要としていない。だから、俺に対しても他人と接するような態度で接してくる。……ですが、それはよくよく考えれば俺と一緒なのでは……?


「俺もシュゼット嬢しか必要としていない。まさか、この執着心と愛情の重さは遺伝……!」


 その結論にたどり着いた時、なんだか悟りのようなものが開けた気がした。よし、もうどうでもいい。プライドなんて捨てるに限る。あの顔だけの父親に教えを乞おう。……と言いますか、そうしないとほかの男の隣でシュゼット嬢が笑うことになってしまう。そんなの、耐えられない。そんなことになればシュゼット嬢を殺して俺も死ぬ。


「……今の時間ならば、暇そうですね」


 俺はそうつぶやいて、自室を出ていく。どうにかして、愛しの婚約者の苦手意識を取り除かなくては。


 それが俺、アルベール・クールナンの今の目標なのだ――……。

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