表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/47

第40話 これから、二人で


 ☆★☆


 教会の控室から見える空はとても青くて、雲一つなかった。目の前にある鏡を見れば、そこにはいつも以上におしゃれをした私がいる。真っ白な穢れのないウェディングドレスは、綺麗系のデザインを採用し装飾は必要最低限のみ。それでもすごく綺麗に見えるのだから、ドレスのデザインもメイクの腕も素晴らしいと思った。


 本日は私とアルベール様の挙式の日。私が十八歳を迎えて丁度一ヶ月が経った本日。私とアルベール様は夫婦になる。


「お嬢様、暑くはないですか?」

「えぇ、大丈夫よ、エスメー。しかし、何回目かしら、その質問」


 私がそう言えば、エスメーは「九回目くらいですかね」とはにかみながら答えてくれた。確かに外は夏ということもあり暑い。でも、教会の中は冷却魔法で適温が保たれているし、控室もそう。それに、何よりもこのウェディングドレスが快適なのだ。


「シュゼット様。アルベール様がいらっしゃいましたよ」


 そんなことをエスメーと話していると、ふと警備の人が扉越しにそう声をかけてくれた。なので、私は「着替えは終わっているので、どうぞ」とだけ声をかける。すると、煌びやかな衣装に身を包んだアルベール様が入ってこられる。そして、私のことを見てぱぁっと表情を明るくされた。


「シュゼット! 今日はいつも以上に綺麗ですね!」


 その後、アルベール様はそんなことを叫ばれる。よくよく見れば、アルベール様の衣装の胸元にはクールナン侯爵家の家紋があしらわれており、その衣装が特注品だということは容易に想像が出来た。


「お褒めいただき、ありがとうございます。アルベール様もよくお似合いですよ」

「シュゼットに褒めてもらえると、嬉しいですね! これ、今度の新事業の試作品みたいなものですよ!」


 そうおっしゃったアルベール様は、私のすぐそばに寄ってこられる。そう言えば、新事業はウェディング関連なのだっけ。アルベール様とオフィエル様、ほか四人の貴族のご令息の共同事業ということもあり、貴族界隈では注目の的。しかも、その六人全員が見た目麗しいとなれば、令嬢たちが騒ぐのだ。ま、全員に婚約者がいるのだけれど。あ、アルベール様と私は今日から夫婦か。


「しかしまぁ、試作品とは思えないくらいの出来ですね」

「そうですね。今回は張り切って仕立ててもらいましたし。シュゼットのウェディングドレスも、同じなんですよ」

「そうなのですか。涼しくて快適ですね、これ」


 正直感想がそれでいいのかと思ったけれど、アルベール様は嬉しそうに「よかった」とおっしゃってくださる。……うん、普通の令嬢だったらもっと気の利いたことが言えるわよね。まぁ、私じゃ無理なのだけれど。


「広告になるので、挙式のプランはすべてあいつらと練ったものになります。……すみませんね、広告になってもらって」

「いえいえ、別にお構いなく」


 はっきりと言って、私は別にそう言うことを気にしちゃいない。そう思いながら私がアルベール様に微笑みかければ、アルベール様は「でも、正直シュゼットを独り占めしたかったですけれどね」なんて、少し困ったようにおっしゃる。だから、私はその額を突いた。


「これから飽きるほどいっ所にいるのですから、たまにはいいじゃないですか。事業の成功も、大切でしょう?」

「まぁ、そうですが……。シュゼットに苦労を掛けないように、俺頑張ります」

「その調子です」


 アルベール様のお言葉にそう返事をすると、エスメーが「そろそろ時間ですよ」と声をかけてくれた。あぁ、もうそんな時間か。


「じゃあ、シュゼット。行きましょうか」


 そうおっしゃったアルベール様が手を差し出してくださるので、私は静かにその手に自分の手を重ねた。その後、ゆっくりと歩きだす。


「アルベール様。……いえ、もう、旦那様ですかね」


 私が小さくそう呟けば、アルベール様はふんわりと笑ってくださり、「どっちでもいいですよ」と告げてこられた。う~ん、どっちでもいいって言われたら、慣れるまではアルベール様って呼んじゃいそう。だけど、いずれは変えないといけないのだから、旦那様って呼んだ方が良い気もするのよね。


「一応旦那様って呼びますが、気楽な場所ではアルベール様って呼びますね。そっちの方が、なんだか仲睦まじく見えませんか?」


 貴族の妻は夫のことを「旦那様」と呼ぶ方が多い。だけど、二人きりの時は名前で呼ぶ方もいらっしゃるのだ。私も、あんな感じが良い。


「そうですね。じゃあ、それで行きましょうか。シュゼット――大好きです」


 不意にそう声を掛けられて、私は小さく「私も、ですかね」とだけ返した。


 これからは始まるのは、私たちの新しい日々。


 一度は婚約の解消を望んだ私。だけど、結局アルベール様とともに歩いていく道を選んだ。正直、都合がよすぎるかなって思う時もあるけれど、婚約の解消をお願いしたのは間違いじゃなかったって、今ならば思う。


 だって――心の底から、気持ちが通じたから。


(大好きですよ)


 心の中でそう呟いて、私はアルベール様に微笑みかける。すると、アルベール様も微笑み返してくださった。


【第一部・完】

とりあえずこれにて完結です。第二部は時間があれば書く予定ですが……実際は不明ですね。

ここまでお付き合いいただき、誠にありがとうございました。リメイク作品だったのに、お待たせしてしまって申し訳ございません……。

もっとサクサク書けたらいいのですけれどね……。

では、

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ