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第15話 まぶしいお二人


「それで、オフィエルの婚約者は?」


 そうおっしゃったアルベール様は、さりげなく私の真後ろに立たれると、そのまま後ろから私のことを抱きしめてこられる。……いや、すっごく恥ずかしいのですけれど!? そう思い、私は自分の身体に回されたアルベール様の手をはたいた。でも、アルベール様は放してくださらない。……周りの視線が痛いわ。突き刺さるような視線が強すぎて、的確に私にダメージを与えてくるわ。


「うん、少し準備に時間がかかっていて……あぁ、来た来た」


 オフィエル様はアルベール様の態度に対して何もおっしゃらず、何処かに向かって手招きをされていた。そして、それから数分後。私がよく知っているお方が、現れる。


「オフィエル様。お待たせいたしました」


 そうおっしゃって、茶色の綺麗な髪を揺らしながら一礼をする可愛らしい少女。彼女こそ……私の数少ない友人であるカトレイン・メレマ様である。茶色の長い髪を高い位置で二つにくくり、その桃色の目はくりくりとしておりとても愛らしい。ドレスのデザインもとても可愛らしいものであり、彼女の魅力を存分に引き立てていた。


「カトレイン。今日もとても可愛らしいね。キミの魅力が存分に引き出されていて、そのドレスを仕立ててよかったと思ったよ」

「ありがとうございます、オフィエル様。……ただ、少々子供っぽいかなぁと、思うのです」

「いいの、カトレイン。キミにはキミの魅力があるのだから、人と比べることなんて無意味だ」

「……はい!」


 少し照れながら笑みを浮かべるカトレイン様は、同性の私から見てもとても可愛らしかった。カトレイン様は私よりも背丈が低い。確か、百五十センチ後半ぐらいだったと思うから。そして、胸がないことをとても気にされている。本人曰く「幼児体型」だそうだ。でも、オフィエル様とは仲睦まじく過ごされているようで、純粋に羨ましい。……私の婚約者は、内面事故物件だから。


「カトレイン様」


 オフィエル様との会話が終わったようなので、私もカトレイン様に声をかける。そう言えば、昔は「身分が下の者は上の者に水から話しかけてはならない」という決まりがあったそうだ。今はその決まりは廃れてほとんど機能していないのだけれど。でも、少し年配の方になるとその決まりを気にする方もいらっしゃるのよね。


「まぁ、シュゼットさ……ま」


 カトレイン様が、私に笑顔を向けてくださる。でも、すぐに硬直されていた。……ですよね~。私のことを後ろから抱きしめる大男。普通に考えて、引くわよ。しかも多分だけれど、アルベール様周囲の男性を滅茶苦茶威嚇されている。


「……シュゼット、さま? えっと……後ろのお方は、婚約者であられるクールナン侯爵家の……お方?」

「えぇ、そうですわ。……訳がありまして、私にくっついていらっしゃるの」


 オブラートに包んだつもりだったけれど、後から考えれば大してオブラートに包んでいないわ。むしろ、ほぼ直球だわ。そう思い、後の私が頭を抱えることになるなど、今の私は知らない。


「えっと、その、オフィエル様やシュゼット様から聞いていたお方とは、随分と違うお方で……」


 カトレイン様が、戸惑っていらっしゃる。えぇ、そうでしょうね。中の上とか、そこら辺の容姿の女に抱き着いて周囲を威嚇する美形の男性。私が周囲の人間だったら、警戒して近づかないし話しかけもしない。それに、カトレイン様は私が常々アルベール様との関係に悩んでいたことを知っていらっしゃるから、余計にそう思われるのだろう。


「えぇ、そう思いますよね? この件についてはまた後程お話をさせていただきますわ……」


 遠い目をして、そう言うことしか私は出来ない。今話すことは、到底できないことだわ。だって、いろいろな人がいらっしゃるのだもの。今度、二人でお茶をしながらお話するに限る。


「わ、分かりましたわ。今度ぜひ、お茶をしましょう」


 カトレイン様と私は、苦笑を浮かべながらそんな会話をする。ちなみに、カトレイン様は普通にオフィエル様にくっついていらっしゃる。腕を絡めるといういたって普通の形なので、別におかしくはない。おかしいのは私とアルベール様だ。うん、おかしい。場違いグランプリ優勝だ。もういっそ、殿堂入りと言って過言ではない。


「カトレイン。そろそろあいさつ回りに行こうか。ごめんね、兄が主催のパーティーなのに、キミにも付き合ってもらっちゃって……」

「いいえ、お義兄様にもいろいろとお世話になっておりますもの。私で力になれるのならば、ぜひ」

「カトレインは本当に優しい子だね。じゃあ、アルベール。……二時間後に、いつもの場所に」

「はい」


 そうおっしゃったオフィエル様は、カトレイン様と腕を組んだまま歩き出される。まさに、美男美女。そこにいるだけでオーラが違う。しかも、事故物件の香りがしない。……いいなぁ。


「そう言えば、アルベール様。いつもの場所とは?」

「……いえ、大したことではありませんよ。俺とオフィエルと……あと、四人が度々会話をするために使っている場所です。いろいろと、話すことがあるので……」

「そうなのですか」


 きっと、お仕事のお話なのよね。殿方も大変だわ。そう思いながら、私はアルベール様の横腹を肘でつついた。お願いだから、この体勢はやめて。そう言う意味を込めていたkれ度、伝わっているかは定かではない。……いや、むしろ伝わっていないと思う。……悲しい。

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