表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

悪役ヒロインはハニートラップで王太子を篭絡し、婚約破棄させ、悪役令嬢を無実の罪で断罪させて、追放させる。それはなぜかというと?

作者: 実里

「あーあばかばかしい」


 愛してるよマリアンヌとか言われて、ありがとうございますとか笑って答えるあたしがバカとしか思えない。


 あたしはにっこりと王太子に笑いかけ、愛していますわと答えるんだ。


「……ああ、愛しているよ。僕の天使、僕のすべて!」


「私も愛しておりますわ」


 ああもう天使とか馬鹿だよほんと、あたしは天使じゃない、ったく。


 あたしはにっこりとまた笑い、あいつの手を取って愛し合う私たちの障害を取り払わなければぁというと、確かにあの邪魔な女と婚約破棄しないとと王太子が頷く。

 というかカフェテリアで最初にこんな会話をしようとするなんて真正のバカだよ。聞かれたらどうするんだ。

 私の部屋でとかなんとか言ったけど、手をだしたら殺すからね。


「……愛しておりますわ、婚姻したらね? だからそれまでは」


「ごめんよ、愛しい僕の天使!」


 あたしに抱き着いてきたあいつをなんとか宥める。ああもう鬱陶しい。

 あたしは計画をあいつに実行させるためになんとかたきつけた。


 あたしはあいつを部屋からそっと出して、はあとため息をついた。


「どうしてこうバカの相手をしないとダメなんだ!」


 ああもう鬱蒼しい、やっとでもあいつから解放される。機密は聞き出したし、あとは王宮に入ったらやることは決まってる……あはは。


 

「ロザリー・フェイナム。お前をマリアンヌをいじめた罪により婚約破棄をし、断罪する。辺境送りと!」


「私はそんなことはしてませんわ!」


「私をいじめて階段から突き落とそうとなさいましたわ、証人もいます!」


 あたしはぶりっこしながら、バカ王太子に寄り添う。しかしねえ、いい子ちゃんの令嬢ちゃん、あんたも甘いね。あたしはきちんと次期王太子妃としてのカードをぶら下げて、皆に口裏合わせはすんでるんだよ。

 王太子の愛とやらをバックにしてね。


 ああ、違うと首を振るだけってね、あんたはねえ、優しいお父様とやらに可愛がられ、いいものを食って、いい寝床にねて、なんでも使用人にやってもらってさ幸せいっぱいだった。

 でもそれがどうしてそんな生活ができるのか考えたことがあるのか? あたしたちみたいな庶民が税金を納めているからだよね? あんたはそんなことも知らなかった……。

 あたしはそれが許せなかったんだ。あはは泣いているいい気味だ。


「……連れていけ!」


「うふふ、ではさようなら」


 あたしはにっこりと笑う、でもねえ、あたしだって鬼じゃない。あんたは無実。それは知っている。だから適当なところでどろんして、あんたの無実を証明してあげるよ。

 あたしはにっこりと王太子に笑いかけて、愛していますわとしな垂れかかった。あいつは鼻を伸ばしてあたしを見てるけど、本当にバカだよねえ……。




「これとこれ、それからこれだね、どれくらいの価値がある?」


「そうだな、孤児院の皆が一年暮らせるだけの価値はある」


「それだけあれば十分だ、機密はたいしたことはなかったよ」


「そうか」


 あたしは机に出したお宝を前に、また出稼ぎに行かないとだめだねとため息をつく。ピンクのカツラは暑苦しかったよ。

 目の前にいる男は、当分は大丈夫だろうと笑う。


「組織の掟は絶対だ、あたしの取り分はほぼない、それはそれでいいんだけど、孤児院のあの子たちだけに良い暮らしをさせるだけではね。あたしはね他の皆にも……」


「では次はこの国だな、次の王太子の理想の女とやらはお前みたいな気の強い女らしいから素でいけるぞ、マリー」


「まあぶりっこよりはましか、あいつは参ったよ。しかしね、理想の女ってやつに王太子とやらは飢えてるのかい? ころっと騙されるバカばかりだよ」


「まあそうだな、だからこそお前たちみたいな女が組織には必要だ。若いうちにしかできないからな、まあ年が上になったら王相手もいけるが……」


 あたしは黒づくめの男相手にため息を返す。あたしはねえ、昔はやり病で両親が死んで、孤児院におくられた。そこはろくでもないところで、あたしはずっと寒いといってぼろを着て腹を空かせていた。

 そしてあたしは病気になって死ぬところを、なんだろうねえ、寄付とやらにきたお貴族様に助けられた、感謝したけどね、そこの旦那様とやらにあたしは……。ああもう思い出したくもない。

 あたしはそこから逃げ出して、流れ流れて、組織のこいつに声をかけられ、今みたいな稼業についたんだ。


「……あたしは貴族とやらが大嫌いだ。でもあのお嬢さんは助けてやってほしい」


「わかった、いつものように罪は間違いだったとして処理しておく」


「あたしはいつか罰が当たるだろうね」


「そうならないようにしろ」


「……」


 あたしは薄く笑う、あたしは流れ流れて、王国の中枢にいる男を誑し込み、そして機密や宝物を盗み出す女。あたしはいつか警吏に捕まるだろうね。

 でも後悔はしないよ。あの子たちが幸せになるためなんだ……。


 でもねえ、学食が不味いやら使用人を数人しかつれていけないやらチンタラ文句を言っているあの婚約者様のお嬢みたいなのではなく、いつか民衆のことも考えてくれている頭のいい婚約者様がいる王太子とやらにあたったらあたしは死罪だろうねえ。

 その日を待っているのかもしれないね。

お読みいただきありがとうございました!

よろしければ☆に色を塗って、ブクマなどで応援していただけたら今後の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 報われてほしい、と思える主人公だった
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ