表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ЯeinCarnation  作者: 小桜 丸
3章:アカデミー後期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/366

3:0 "————"

 フラッシュバックと共に、意識がハッキリとする。彼女の目の前には、先ほどと同じ位置に、杖を持った男が立っていた。


「そうか。私は原罪や眷属と出会って、血涙の力を……」

「その力はお前にとって必要不可欠だ。"派遣任務"でも大いに役立つことになる」

「派遣任務?」


 そう尋ねれば、杖を持つ男性の背後に古びた洋館が見えてくる。よく目を凝らしてみると、洋館の窓際に一人の少女が立っていた。


「人間が住む館で起こる"失踪事件"。銅階級の人間と共に、お前たちは館へ派遣されるだろう」

「失踪事件……」

「吸血鬼の仕業か。それとも"神隠し"か。お前たちは館で行方不明者の手がかりを探そうとする」

「神隠し……」


 窓際に立っていた少女が忽然と姿を消す。瞬間、彼女の身体に丈夫な蔦が絡みついた。解こうと試みるが、蔦を千切ることができない。


「そしてお前の異名を知る人間が現れる」

「異名だと……?」

「ヒュブリス。これがお前の異名だろう」


 蔦が身体の隅々まで這いずり回り、彼女の肌は植物に覆いつくされていく。その最中、先ほど窓際に立っていた少女の顔が、植物の葉に描かれた。


「一つ問わせてもらおう」

「……またか」


 身体を拘束する蔦の先端が、彼女の肌を貫き、内部で何かを求め始める。痛みはないが、体内が蠢く蔦に彼女は顔をしかめた。


「お前は孤立無援を好むはずだが……人を庇い、命を助けた。何故このような行動を?」

「……知らん」

「私はこう推察しているよ。お前がバートリ卿の血を継いだからだと。肉体にあの吸血鬼の"お人好し"が刻まれているのだろう」

「どうでもいい」

 

 身体を這いずり回る蔦の至る個所から、小さな白色の花が咲き誇る。彼女の肉体はあっという間に白色の花に囲まれた。


「お前は今まで多くのものを背負い続けてきたが……今回の人生では、仇である吸血鬼の想いまで背負うことになったな」

「……何が言いたい?」

「お前を待ち受けるのは苦しみ、不幸、災厄のみだ。楽には死ねないだろうな」


 杖を持つ男性の言葉に反応するように、白色の花は赤く赤く染まっていく。彼女の左目からは、自然と血の涙が一粒だけ頬を伝わった。


「しかし派遣任務の前に、お前が苦しむ"余興"もあったはずだ」

「余興……?」

「正しくは"お前だけが苦しむ余興"と言った方がいいな」

「私だけが……?」

「そう固くなるな。大したことではない」


 杖を何度か地面に打ち鳴らせば、その振動で頬を伝わる血の涙が落ち、


「よく思い出せ。お前が歩んできた――アカデミーでの生活を」

「っ……!」


 赤色の花びらが辺りに散らばると、彼女の視界は真っ赤に染まり果てた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ