5:10『動術』
~本名:偽名~
アレクシア・バートリ:Joker
キリサメ・カイト:Gloomy
イアン・アルフォード:Knight
クレア・レイヴィンズ:Virgin
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今、俺が立っている場所はクルースニク協会の空き部屋。向かい側にはアレクシアが無愛想な顔で立っている。こんな状況になっているのは俺がアレクシアを呼び出したからだ。
「用件は何だ?」
「そのさ、頼みがあるんだ」
「頼みだと?」
「俺に──戦うための武術を教えてくれ!」
呼び出した理由は戦い方を教えてもらうため。俺がそうやって頼み込めば、アレクシアは頬をピクリとも動かさず、俺のことを見つめてきた。
「……遅かったな」
「へっ?」
「私の経験上、お前のような男はいつか教えを乞う時が来る。だがあまりにも遅い。なぜ今になって教えろと?」
「それは……吸血鬼相手に戦うのは無理だけどさ。人間相手なら俺でもどうにか力になれると思って」
俺から理由を聞いたアレクシアは溜息をつく。その顔は「愚かな男だ」と言わんばかりに呆れていた。
「魔女の馬小屋を壊滅させるのは三日後。例え私がお前に戦う術を教えたとしても、一日や二日程度では何の意味もない」
「それでも教わるのと教わらないとでは違うだろ?」
アレクシアは了承も断りもしない。ただ俺の前まで近づくと、小さな右手で俺の胸元をノックする。
「私は甘えた指導をしないぞ」
「おう、俺も覚悟を決めてお前に頼んでるからな。それにお前が俺を甘やかしたことなんて一度もないだろ?」
「それもそうか。なら座学と実践を組み込んだ内容で進める。負傷しても文句を言わない事だ」
座学と実践を組み込んだ内容。
妙に慣れたような口ぶりでそう言いながら、アレクシアは右の手の平を閉じたり開いたりを繰り返す。
「お前はどこまで戦う術を知っている?」
「うーんっと……柔道に合気道にCQCみたいなのは知ってるぞ。襲ってきた犯罪者からナイフを奪ったり、試合形式で相手と手合わせしたりとかもな」
「まずはお前の世界に存在するそれらをすべて忘れろ。私が教えるのは吸血鬼にも人間にも通じる術だ」
忘れろと言われてもすぐに忘れられるものじゃない。指導中にそんなツッコミを入れられるわけもなく、黙って話の続きを聞くことにした。
「その術をこの世界では動術と呼んでいる。"動く術"と書いて動術」
「動術……」
「人間と吸血鬼とでは肉体の優劣が激しい。その優劣を埋めるためにアーネット家が生み出したもの、それが動術だ」
アレクシアは少しだけこちらの顔を見上げると俺の胸元をじっと見つめる。
「動術は名家ごとにいくつも派生した。その派生した術を今から一つずつお前に打ち込んでいく。受けて学んだ方が早いからな」
「ちょ、ちょっと待てって! それ受けたから死にます……なんてことはないよな!?」
「死なんよう加減はする。お前も抵抗してみろ」
「わ、分かったけどさ。ほんとに手加減してくれよ!?」
今更になって指導を受けることを後悔したが、ここで逃げるとアレクシアに呆れられる。俺は意を決してその場で態勢を整えた。
「行くぞ」
「こ、来い!」
アレクシアは加減をしながら俺へごく普通に殴り掛かる。この俺でも何とか拳を捉え切れられる。だけど何故か上手く防げない。妙に行動に違和感がある。
「何だよこれっ! 違和感があるっていうか、動きにくいっていうか……!」
「これは動術の一つ変動。"ニュートン家"が改良した動術だ。特徴は『決まった動きの中に不規則な自己流が加えられている』こと。お前が感じている違和感の正体は、確立された動きの中に異端な動きが混ざっているからだ」
「な、なるほどなっ!」
変動。
違和感の正体を説明されて納得がいった。分かりやすい例を上げるなら『一撃目、二撃目とリズムよく動き、三撃目だけ予備動作が長くする』ような難易度の高い死にゲーでよくある感じだ。
「次はこの動術だ」
「……? 急に何で立ち止ま──えっ?」
アレクシアが急に立ち止まったかと思えば瞬きをした瞬間、物音一つ立てず俺の真横に立っていた。
「この動術は静動。"プレンダー家"が改良した動術。特徴は『自身のあらゆる動きの音を消す』こと。現に今の私が刃物や杭を持っていれば、お前でなくとも吸血鬼共を始末できている」
「た、確かに。これは気が付かないうちに死んでるな」
静動。
足音も呼吸音も聞こえないし気配も感じさせなかった。例えるなら流行りのバトルロワイアルというジャンルのゲームで『敵の足音や銃声が聞こえずいつの間にか後ろに立って撃たれていた』という感覚に近い。
「次だ」
アレクシアはそう言って向かい側に移動すると、右腕を振り払う動作をして俺の目の前まで迫ってくる。咄嗟に右腕で受け止める構えを取ったが、
「……あれ?」
気が付けばアレクシアの左腕が俺の左脇腹へと触れていた。
「これが作動だ。"アーヴィン家"が改良した動術。特徴は『相手の次の行動を意図的に引き起こす』こと。ただし力で制圧可能な素人相手にはあまり活かせない」
「そうなのか?」
「あぁ、自身の型や実力を備え持った吸血鬼共や人間に対しては活かせるだろうが……"相手を見極める観察眼"と"型に対する知識"が必要になる」
作動。
一種のフェイントのようなものじゃなくて事前の知識も必要とする動術らしい。想像つかないけど達人同士の攻防で最大に活かせるみたいだ。多分『漫画やアニメでよくあるお互いの隙を窺う戦い』が繰り広げられるんだろう。
「次の動術は煽動。"パーキンス家"が改良した動術だ。この場での実演はやめておく」
「なんかよくないことでもあるのか?」
「煽動の特徴は『言葉で相手を感情を動かす』こと。感情というのは判断と意思を鈍らせ、致命的な隙を生む欠点だ。実演してもいいが今は指導中。お前を感情的にするのは時間を無駄にする」
「言葉で感情を動かすって、ラミアと戦った時にクライドが煽動を使ってたような……?」
「あぁ、隙を作るために使っていたな」
ラミアと地下の空洞で対面した時。
サラが負傷してクライドと交代した後にミアに関係する話題を持ち掛け、ラミアの感情を揺さぶっていた。
「次の動術だ。指導の為につまらん遊びをする」
「つまらん遊び?」
「一分間、お前は私に触れることだけを考えろ。私はただお前に触れられないよう動き続ける」
「んー……触れるだけなら流石に俺でもいけると思うけどなぁ」
アレクシアが一度だけ指を鳴らし、鬼ごっこのようなゲームが始まる。俺はすぐさまアレクシアに触ろうと手を伸ばしたが、
「うん、えっ、あれっ?」
「どうした?」
「このッ、うおらッ、これでどうだッ!」
まったく触れられない。
近くの壁を蹴って俺の背後へ回ったり、低い態勢を保ち続けながらあちらこちらを飛び回る。まるで猫のような動きに翻弄され、
「終わりだ」
「はぁっ、はぁっ……! 何だよその動き……?!」
一分間が経過。
俺は息を切らしてその場に座り込んだ。自分の手が衣服に触れることすらなかった事実に驚きの声を上げる。
「これは機動だ。"トレヴァー家"が改良した動術。特徴は『回避と機動力で相手を蹂躙する』こと。吸血鬼は数秒で再生するが、人間にとって僅かな傷も治癒するのに時間がかかる。"常に無傷で戦い続ける"ための動術だ」
「確かにシメナ海峡であれだけ色々とあったのに……ティアさんは無傷だったよな」
機動。
とにかく無傷の状態を維持しながら戦う動術みたいだ。さっきは猫のように動き回ってると感じたけど、今思い返してみれば『川で泳ぐ魚を手づかみしようとする』感覚に近いかもしれない。
「確かにあの女は機動を使いこなしている、が……」
「ん? どうしたんだよ?」
「シメナで伯爵を始末する時、あの女は静動を見せた。つまり二つの動術を学んでいるということだ」
アレクシアたちがあれだけ苦戦していた伯爵をあの人はほんの数秒で倒していた。静動を上手く使えた場合のいい例なのかもしれない。
「二つ使えることがおかしいのか?」
「トレヴァー家として生まれていたとすればな」
「それってどういう……?」
「前提として動術を一種類に統一せず、それぞれの名家が手を加えた真意は『継いだ体質と天性を活かす』ため。だからこそ他の名家の動術を学ぶことは逆効果となる」
「んー……そう、なのか?」
話を聞いたが、あまりピンと来なかった。サッカーの才能があったとして、野球にそれを活かせないわけじゃない。鍛えられた脚力で一塁、二塁へ素早く走ったりができるはずだ。
「……例えばお前が犬を飼うとしてだ。芸の一つとして人の言葉を真似させようとするか?」
「いや、犬は喋れないからそんなことしないな。お手とか伏せとか、後はボールを取ってきてとか……そういう芸を覚えさせるよ」
「だろうな。人の言葉を真似できるのはオウムのように"調音する舌"や"発声を学習する特殊な脳"を持っていないと不可能だ。名家がそれぞれの動術を考案したのはこの理屈に似ている」
その説明を受けて思い出したのはナタリア。
ナタリアは歩いたり走ったりするときは、必ずドタドタという大きな足音を立てていた。体質上の理由なら物音を立てない静動は学べない。こんな感じで他の動術を習得できない理由があるんだろうな。
「次だ。ここを殴れ」
何となく納得できた俺の前にアレクシアは立つと、そう言いながら左の手の平を見せてくる。
「殴ればいいのか?」
「あぁ、全力で構わん」
「分かった。よし、行くぞ!」
俺は言われた通りに右拳に力を込めてアレクシアの左の手の平を殴り、
「ぐへぇッ?!」
いつの間にか左頬が手の甲で叩かれていた。俺は突然の痛みに情けない呻き声を上げてしまう。
「これは反動。"オリヴァー家"が改良した動術だ。特徴は『外部の力を自身の動作に加える』こと。今のは簡単な再現に過ぎないが、実際はオリヴァー家が得意とする銃の反動をそのまま近接での戦闘に利用する」
反動。
話を聞く限りは俺の世界にあった"ガンカタ"という創作武術に近いのかもしれない。アレクシアの反動による平手を食らった感想としては『自分の拳がそのまま返ってきた』という感覚。
「今度は私の腹部を全力で殴ってみろ」
「は、はぁ!? そんなことできるわけ……」
「私はお前より柔い肉体じゃない。さっさとやれ」
「わ、分かったよ! どうなっても知らねぇぞ!」
気は進まないが力を込めて全力でアレクシアの腹を右拳で殴る。まさか男としての禁忌をここで破ることになるとは思わなかった。
「だ、大丈夫だよな……?」
「何の支障もない」
「あ、そうですか……」
「それよりもだ。私の右腕を触ってみろ」
本気で殴ったのに効いていない。俺は自分の貧弱さにショックを受けながらもアレクシアの右腕を触ってみる。
「えっ、な、なんだこれ? なんか硬くなってないか?」
「これは受動。"レインズ家"が改良した動術だ。特徴は『肉体で受け止めた力を自身の筋力の原動にする』こと。無傷を貫くトレヴァー家の機動とは逆。すべてを受け止めてこそ真価がある動術だ」
数秒ほどでアレクシアの細い右腕は鋼鉄のような硬さへと変わっていく。この状態で殴られれば、間違いなく骨が折れる。
「あぁ! だからナタリアはあんなに傷だらけでも伯爵やスキュラと戦えたのか!」
「ただこの動術を扱えるのはレインズ家の人間のみだろう。お前が扱えば、真価を発揮する前に間違いなく死ぬ」
「だ、だよなぁ……」
受動。
攻撃を受ける前提の動術、俺には絶対に扱えない。アレクシアの言う通り、馬鹿みたいに大怪我を負って死ぬだけだ。
「次の動術は律動。"アークライト家"が改良した動術だ。実践は省いた方がいい」
「省くってことは、また指導に悪影響でも?」
「あぁ、これを実践すれば二時間はかかる」
「に、二時間ッ?!! 何でそんな時間かかるんだよ!?」
「この動術は所謂『長期戦に向けて最低限の動きに抑える』ことが利点だ。実践するのは構わんが、先にお前の体力が尽きるだけだろう」
アレクシアはそう説明すると俺の右肩を何度か叩く。
「なぁ、何で俺の肩を叩いてるんだ?」
「次の動術は波動。"アベル家"が改良した動術。特徴は『波のような緩急を様々な動作に浸透させる』ことだ」
「あのー、俺の話を聞いてますか?」
「体験させてやる」
「うおぉッ!?!」
次にアレクシアが右肩へ手を振り下ろした瞬間、思わずその場に尻餅をついてしまった。突然押し寄せてきたのは『荒波に足元をすくわれる』ような感覚。
「こ、これが波動か……」
「あの"箱入り娘"の剣技はこの動術を応用している。お前の友人だった"イブキ"とやらも波動を利用した剣技を仮試験で見せていたな」
「えっ、圭太も波動を使えたのか?」
「扱えていたのは二割程度だが……カカシを斬り捨てるだけなら事足りる。恐らくあの箱入り娘から教わっていたのだろうな」
俺の知らないところで圭太は、ジェイニーさんに手を貸してもらい強くなろうと努力していた。裏での努力に気が付かなかった自分に対してちょっとだけ嫌気が差し、俺はゆっくりと俯いてしまう。
「その情けない顔を二度と見せるな。私は前にそう言ったはずだが」
「あ、あぁ、悪い!」
「……立て」
「えっ?」
「何をしている? さっさと立て」
アレクシアは俺を立ち上がらせようと手を差し出してきた。珍しい行動に俺は一瞬だけ戸惑いながらも、力強く握り返してその場に立つ。
「次は逆動。ブレイン家が改良した動術だ。特徴は『力を込めにくい動作を可能にする』こと」
「もしかして、それって"逆手持ち"の……?」
「あぁ、あの剣技はこの逆動を扱えなければ何の有利性もない」
「じゃあさ、アレクシアがあれだけ逆手持ちで戦えるのは……逆動っていう動術を極めているからか?」
「……そうだな」
返答が遅れたアレクシアはどこか遠い眼差しを空き部屋の窓へ向けていた。俺は追及するべきじゃないと「こ、これで全部?」と話の流れを変える。
「まだだ。"イザード家"が改良した異動という動術を説明していない。だがこの場で実践するのは不可能だろう」
「あー、アリスの家系だよな。今度は何が原因で実践できないんだ?」
「異動の特徴は『自分の骨格や関節を外す』ことだ」
「……は?」
「右腕の肘の関節を外せば想定外の角度から一撃叩き込める。首を捻れば後方を確認できる。それが異動と呼ばれる動術」
今までのも異常だったが、異動と呼ばれる動術はあまりにも異常。関節や骨格を外せるなんて人間じゃない。
「じゃ、じゃあ、アリスも異動って動術を使えるのか?」
「どうだろうな。私が考えるにイザード家出身のあの女はそもそも……いや、今は確証がないか」
「……?」
アレクシアはアリスに関連する憶測を言葉として出そうとしたがすぐに口を閉ざす。そして俺の胸元に手の平を付けた。
「……次で最後になる」
「あ、あぁ! 次はどんな動術なんだ?」
「今まで説明してきた動術の原点でもあり、"アーネット家"の人間のみが扱える──鼓動だ」
「鼓動って、心臓の?」
俺の顔を見上げながら頷き、"鼓動"という動術について淡々と説明を始める。
「吸血鬼と人間の違い。それは心臓が動いているかどうか。アーネット家はそこに目に付け、心臓の鼓動を動術という戦う術まで昇華させた」
「へぇー、鼓動の実践はできるのか?」
「可能だが加減はできない。それでも受けると?」
「おう。折角ここまで教えてもらったし、動術の原点も受けてみたいよ」
「……分かった」
アレクシアはあまり気分が乗らないみたいで、表情を曇らせながら俺の胸元に付けていた手の甲を見つめた。
「後悔するな」
「あぁ、遠慮せずにどうぞ──がッはッ!?!」
そう言いかけたところで俺は全身に衝撃を感じ、宙を切りながら背中を壁に打ち付ける。
「けほッ、ごほッ……!!」
苦痛に顔を歪めながらゆっくりと床に這いつくばり、酸素を取り込もうと必死に呼吸をしようとした。アレクシアは倒れている俺の側まで歩み寄る。
「こ、こんなッ……げほッ、強いのかよッ……!?」
「鼓動は『心臓の鼓動を原動力』にする動術。私はお前の身体に心臓の鼓動を伝わせた。一回分の鼓動をな」
「い、一回で今の威力なのか!?」
「あぁ、私がもし殴打でもしながらこの鼓動を扱えば、お前は二度と立てなかっただろう」
確かに触れるだけであの威力なら、蹴りや殴りが加わった時点で俺の身体は重傷どころの騒ぎではない。
「心臓は一分間に六十回から百回ほど鼓動を打ち鳴らす。つまり一秒に一回か二回はあの馬鹿げた力が出せるというわけだ」
「マ、マジかよ……?」
「あの皇女が伯爵共を葬れたのはこの鼓動という動術を扱えることも一つの要因だろう。他の動術とは比べ物にならん」
俺は何とか呼吸を落ち着かせ、制服の砂埃を払いながら立ち上がる。もう二度とあんなのは食らいたくない。
「なぁ、アレクシアって、その、どうして……」
「何だ?」
「あ、いや悪い! やっぱ何でもな──」
「なぜアーネット家しか扱えない"鼓動"を扱えるのか。お前が聞きたいのはこれか?」
「……まぁな、多分だけど今まで鼓動っていう動術は使ってこなかっただろ? お前がそんな強い技を隠してたのも不思議だし、何か事情があったのかなってさ」
険しい顔で右下に視線を逸らすアレクシア。俺は返答があるのを少しだけ待ってみる。
「扱える理由は答えられん。ただ私はこの動術を隠していたわけではない。私に扱う資格がないからこそ、今まで見せてこなかっただけだ」
「資格がない?」
「……お前にはこの動術を見せた。だが資格がない以上、私は何があろうとこの鼓動だけは決して使わない。今も、これからもな」
アレクシアの過去が関係している。
俺はすぐにそう悟ったが、こっちから追及できるような軽い過去ではない。多分、俺が思っているよりも重くて、暗い過去。
「それでだ、お前はどの動術を選ぶ?」
「え、えーっと、そうだなぁ。オススメの動術ー……とかあるか?」
「私はお前の親じゃない」
「ですよねー! うーん、自分に合う動術かぁ……」
表面上では迷っているが実は心に残った動術が一つだけあった。すぐに決めなかったのは考えているうちに決断が揺らぐと思ったからだ。
「決めた!」
「言ってみろ」
それでも揺らがない。
だったら選ぶのはそれ一つだけ。この自分の判断は正しいと思う。
「俺が選ぶのは──」
動術の名称。
俺は選び抜いた動術を高らかにそう宣言した。




