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途絶えていた意識が戻り、彼女は我に返った。真っ白だった視界に、暗闇に立ち尽くす杖を持った男の姿が映り込む。
「そうか。私の名前は、アレクシア・バートリだった。孤児院で食屍鬼と吸血鬼と戦って……」
「思い出したか」
「私はリンカーネーションとして、何度も生まれ変わってきたのか?」
「その通りだ」
肩に届くほどの長さを持つ彼女の青髪。
杖を持った男は、彼女の毛先を指でなぞる。
「お前は選ばれし転生者だ。それは既に決まっていること。お前はそこらの"異世界転生者"とは違う器を持っている」
「……異世界転生」
「覚えていないか。お前の実力は"入学試験"で他の者より頭一つ抜けていたことを」
「……入学試験」
頭痛は収まらない。脳内に何かが引っ掛かるような感覚を覚えるほど、頭痛はより一層増していくばかりだった。
「お前が入学を望んだ先は"アカデミー"だ」
「……アカデミー」
「本試験を受けるための"仮試験"を受けただろう。これすらも覚えていないのか?」
「仮試験――ぐぅッ?!」
彼女は頭の痛みに耐えられず、額を地面に押し付ける。
「しかしまぁ、お前には"石の上にも三年"という言葉は似合わない。すぐ行動に移したな」
「……三年」
「"本試験"ではらしくないことをしたな」
「……本試験」
その言葉を耳にした瞬間、彼女の脳内に様々な光景が押し寄せ、視界が大きく揺らいだ。
「私は、私はっ――」
再び真っ白に染まる視界。
彼女の意識もまた、一瞬にして途絶えてしまった。