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説明されました

落着きを取り戻した私は、カップの片付けをした秘書?さんが退出した後、何故だか銀縁眼鏡を外した闇己さんが話し始めるのを待った。


おお。眼鏡無しの闇己(くらき)さんもやっぱり綺麗だなあ。


「貴女のお父上は、さる地方の旧家の出身です。その家は、代々祭祀を担う者が継ぐ事になっております。

ご当主は直系ではなく、四つの一族から宣託を受けた方が継いでこられました。……清一様は、<東の一族>の本家である倉家のご長男様でした。」


と言う事は。父は跡継ぎには選ばれなかったと言う事なのね。


「清一様は、ご宣託を受けてはおりません。しかし、長く続く倉の家に血統を残す義務がございました。何故なら。―妹君がクインとなられたからです。」


美女。

クインと呼びなさい…


「……先程もあの、お、ば様の事をそう呼んでと言ってましたね」


「はい。……クイン…女王です。先程の方が後継者に選ばれたのです。その時には清一様は既に上京し、その責務を放棄しました。」

「どうして?」


……貴女ですよ。

「え?」


「倉の家には幼い弟君もいらっしゃいます。しかし。貴女の御祖母様、清一様の母君は清一様をご出産の後亡くなられました。…弟君と先程のあの方は、妾腹です。」

「それが?」

「御祖母様は、<北の一族>の本家から嫁がれました。一方後添えの方は、傍系。より濃い血筋は清一様だけなのです。」


ん、とおー。

父は、どこかの旧家の跡取りなのに、継ぐのが嫌で家を捨てたって事なのかな。後妻さんと腹違いの兄弟じゃ、居辛くもなるよね。


で?私?

「清一様の血を継ぐ方は、貴女お一人です。」

「でも、母は、一般人でしょ?それなら後妻様?の息子さんでも良いのでは。」

「いいえ。貴女のお母様はもっと濃い。……西の惣領の娘、私の姉上です。」


えっ?

では、闇己さんて、

「ええ。」

彼は初めてニッコリと笑顔を見せた。

「貴女は、私の姪です。」




日が落ちて、壁一面の窓は自動でカーテンが閉められた。

失礼します、と、秘書さんが扉のない隣室から入ってくる。


「所長。お嬢様の身支度を。当面必要なものはこちらに。」

「ああ、ありがとう。」


叔母さま、叔父様、ええっと、えっと、

母もなんちゃらって旧家の出で父と結婚したと。んで、2人して責任放棄してとんずらして、私に何にも言わずに死んじゃったと。

親戚呼ぼうにも、連絡出来なかった筈だわ。

でも。

よっぽど嫌だったんだろうなあ。

私今まで両親の故郷も生い立ちも家族も、聞いたことなかったもん。

それに疑問を持たない私も私だけど。両親共、天涯孤独と言われたら、アルバムの一冊も遺品に無かったら、そうなるよね。


そんな二親が継がせたくなかったおうちと、関わり持っていいのかなあ。





「あらお綺麗。バスは快適でしたか?それでは、整えさせて頂きますねー。」

いい香りのジェットバスで焦臭さを洗い流し、髪を洗ったら、本当に生き返った。

お風呂あがりに、秘書さんが持ち込んだランジェリー(いつもの下着ではなく)を身につけ、なんでジャストフィットなのかと思いつつ、ハンガーの漆黒のワンピースを着た。シルクだ。


ふおぉ。このワンピースで2ヶ月生活できる。多分。


ホテルのスイートのような部屋で、髪と顔をいじくられた。嬉々としてお仕着せのような制服の美人が三人がかりで構ってくれている。


闇己さんは、ニコニコとこねられる私の様子を眺めている。

所長室の隣の部屋がこんなバス付きのお部屋だなんて。そしてそこにこんな人たち呼んできて、

どんだけ金持ちなんだ、闇己さん。




真っ直ぐなお(ぐし)ですわねー、ちょっと編み込みましょう!はい動きませんよー、お嬢様スベスベなので、薄ーくC Cとチークだけいたしましょう。あ、眉は必須です。お嬢様の黒目がちな目にはライナーは要りませんねー、ティントはオレンジ?いいえ桜ですわね!


「はい、出来ました」

ケープをささっと取られて立ち上がると、闇己さんが一瞬ポカンとした表情を見せて、

直ぐに目を細めて微笑んだ。


「……姉上」




その姿のまんま、闇己さんの車に乗った。

「…お、じさま、何処に」

「闇己で良いですよ。こんなに姉上に似た貴女に叔父様と呼ばれると、何だか。」

クスクス笑う闇己さんは、何だか機嫌が良い。叔母さん?っと、クインの前とは大違いだ。


首都高速に入る。何処に行くんだろう。


「今から向かうのは、貴女の仮のお住まいです。失礼ですが、焼け出されて手持ちの現金も僅かなのではないですか?」

「……ご親戚のお宅、とかですか?」


そう、とも、そうでないとも、言えますね……。


闇己さんは前方を見たまま。銀縁眼鏡は復活。横から見ると、睫毛長いんだなあ。


「さて、蜜葉さん」

「はい。」

「お父上と私の姉の素性はご理解されましたね。ここからは貴女の物語となります」

「……。」


「女王は節目の年に巫女による口寄せによって、再びの御宣託を受けなくてはなりません。その巫女もまた、四つの一族から選ばれることになっています。」

「物々しいんですね。」


……そうですね。

「私達のクインは、世界の闇の王です。この、日本という国に有りながら、国境を超えて君臨している。過去も未来も全て視る力を神から与えられた存在です。

 その存在は私達一族の他は、各国の影の要人達しかご存知ありません。」


車は首都高速を下りていた。

少し雨なのかな、ライトが滲む。


「未来を変える力を持つ女王には権力も栄誉も称賛も、そして財産も求めてはおりません。そんなものは初めから女王にはあるのですから。」


ただし。


「神が彼女を愛している限りは。巫女を通じて神は女王を確かめる。神の寵愛によって女王は女王となるのです。その巫女が今年顕われるのです。」


「……巫女?」

にこ、と闇己さんは此方を向く。

前方、前方。

「私は確信しています。

姉と清一氏が家を出たのは、貴女が20年に一度の巫女だと分かったからだと。」


ああ、そういう事か。

私を護りたかったのか、両親は。

ん?


「その、巫女って、そんな危険なものなんですか?両親が家を捨てるくらいに?」


「巫女は一族に繁栄をもたらしますからね。女王の御加護によって。…巫女誕生と同時に、巫女は一族によって守られ育てられます。時には刺客が出ることなど当たり前です。なにしろ一族に莫大な富と栄誉が女王から保証されるのですから。一族の庇護があれば、巫女への攻撃は封じられます。なのに何故姉は、清一氏は一族を離れたのか、それは未だ私には分からないのです。」


車は大きく曲がり、ビルの地下に入った。駐車場かな。


「ご誕生した貴女にはなんのオーラもありませんでした。貴女は一族では何かの間違いであったのだろうと結論づけられました。

……ところがお二人が御隠れになった途端、貴女の存在(オーラ)が東方から出現したのです。多分、姉と清一氏が貴女を隠していたのでしょう。


一族は慌てました。


そして今回の巫女は異質なご出現となりました。……4人の候補が現れたのです。東西南北、それぞれの一族から。

明らかに貴女が巫女ではないと思った三つの一族が声をあげていたのです。我が一族の娘こそこの(たび)の巫女である、と。無論東の一族は貴女を推しました。」


「三人。わ、たしと」

「ええ。三人の少女が、…ここです。」

駐車場からカードで開けたエレベーターに乗ると、すっと上がっていく。

扉が開くと、絨毯のフロアに重厚な扉が一つ。


「クインの館です。……巫女候補の方々にご紹介しましょう。」






次回イケメン勢揃い

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